茨城県つくばみらい市は人口約5万人、2万世帯が暮らしています(平成30年11月1日時点)。
平成27年9月10日午後12時50分に鬼怒川の堤防が決壊し甚大な被害をもたらした「平成27年9月関東・東北豪雨」災害では、つくばみらい市において、人的被害はなかったものの建物等被害は57件、農作物も被害を受けました。
つくばみらい市は、隣接する常総市から「避難所が不足しているから避難者を受け入れてほしい」と要請を受け、最長1か月間避難所を開設しました。つくばみらい市民の受入れを想定して開設した避難所は3か所、常総市民の受け入れを想定して開設したのは、「つくばみらい市総合運動公園」と「きらくやまふれあいの丘すこやか福祉館」の2か所です。DMAT(災害派遣医療チーム)の医師や保健師のアドバイスから特別なサポートが必要だと判断した避難者は、各避難所で特別な対応をすることになりました。避難者数は9月11日のピーク時で5か所合計つくばみらい市民207名、常総市民604名に達しました。災害対策本部は20日間設置していました。保健師の業務負担を考慮し、約2週間近隣市から保健師を派遣してもらうこともありました。
避難者の状況は直前までわからなかった
医療体制の確保についてはDMATなどの医療支援チームが、ほぼ毎日避難所を訪問し、医療的なケアが必要な人への対応を行っていました。
精神的なケアを要する避難者については、保健師がサポートする体制がありましたが、なかには本人の意思で大勢の人がいる場所を避け、車内で過ごす人もいました。
子どもたちの精神的ケアは、つくばみらい市内のサッカークラブチームが、避難生活をしている子どもたちとサッカーを通じて交流してもらったことがつながりました。
避難所の一つとなったつくばみらい市総合運動公園には柔道場があります。つくばみらい市市民経済部市民サポート課課長の豊嶋千恵子さんは「総合運動公園に避難した乳児を抱えるお母さんは、子どもが動けるように畳敷きの柔道場に案内したり個人の希望や事情に応じて個別の部屋に案内するように工夫した」と振り返ります。また同市総務部安心安全課係長の大久保正道さんは乳幼児対策について、「保護者が自宅の片付けなどで外出する際に子どもを預かるなどの対応を取ることが必要だった」と3年経った今だから気づいた課題を指摘します。なかにはつくばみらい市社協が呼びかけて集まったボランティアが避難者の話に対し傾聴してくれる場面もありました。
避難所運営にかかわる職員体制については昼間に多く職員を配置するしくみをとっていました。昼間は避難所運営のほか、全国から届いた支援物資の仕分け業務もありました。多くの避難者が日中は自宅の片付けなどで外出していたため、避難所内に残っている人は少なく、日が暮れると一気に戻ってくる生活でした。「夜間は職員2~3名配置だったが、夜間に体調を崩す方や車上荒らし防止のために見回りを行うなどの対応を要したため、夜間に配置する職員の人数も増やした方が良いという意見もあった」と大久保さんは振り返ります。同市保健福祉部社会福祉課課長補佐の成嶋均さんは「避難者同士が声を掛け合う雰囲気だったので、職員が気付かない避難者の変化を避難者に教えてもらうことがあった。座位が保持できない人には、背もたれのあるいすを使ってもらったり、広いスペースに案内するなど特別な配慮をするようにしていた」と言います。
要配慮者の対応で工夫したことの一つは口腔ケアです。災害時において、①いつも自宅で行っているような口腔ケアができない②義歯をはずして洗浄することが恥ずかしいため、義歯を入れっぱなしにする③避難するのが精一杯で義歯を自宅においてきた④避難所の食事が合わず痩せてきたため義歯が合わなくなるという問題が生じると考えられます。困難な状況が継続することで、①「誤嚥性肺炎」など呼吸器感染症に感染する恐れ②歯周病悪化に伴う糖尿病の悪化③ケア不足による口腔内の炎症による食欲低下などが起こり得ると判断しました。そのため、つくばみらい市歯科医師会、茨城県歯科医師会、茨城県歯科衛生士会に協力を要請し、避難所の巡回も行いました。
http://www.city.tsukubamirai.lg.jp/
つくばみらい市社会福祉協議会
https://www2.tm-shakyo.jp/