自宅に戻った後の生活も考える
もう一つの避難所。つくばみらい市社協が指定管理を受けて運営している「きらくやまふれあいの丘すこやか福祉館」には、0歳から92歳まで幅広い世代が避難していました。避難者は発災してすぐに自力でつくばみらい市まで自主避難してきた人が主です。「80代の高齢者が多くほとんど自立していた。洗濯機が届く前は、洗濯板と桶を使って自分で洗濯できるくらいADLがしっかりしていた」とつくばみらい市社協ボランティア市民活動センター長の松尾好明さんは話します。続けて、「避難所で職員が全て手を差し伸べることが良いわけではない。避難所でも普段の生活ができるようなしくみを考えることが大切」と指摘します。
同社協総務係兼事業係の坂本清貴さんは「避難者の誰がどのような困りごとを抱えているのかという情報の引き継ぎがうまくいかず、避難者に同じ質問を何度も受けさせてしまった」と関係機関における横のつながりの重要性を話します。
当時、手配した段ボールが届かなかったため、すぐに仕切りを作ることができませんでした。数日経って、仕切り用の段ボールが届いたため、「きらくやまふれあいの丘すこやか福祉館」でも、避難者に段ボールで仕切りを作るようにすすめました。しかし、避難者からは避難者同士で仲良くなったので仕切りは必要ないという声がありました。「避難所が和室だったということや地域性やコミュニティの強さが関係あるのかもしれない。仕切りがない分、避難者同士の会話をする機会もあったし、お互い支えあっていたのだと思う」と松尾さんは言います。
避難者間のトラブルが起こらなかったのは職員が見守りを大切にしていたからかもしれません。避難者の中には家族と離れて避難所生活を送っている避難者もいましたが、「『家族の安否が分かれば良い。一緒の避難所へは移動せずここにいたい」と話す人もいました。それは避難所の居心地が良いという理由ではなく、別の避難所でのルールや新たなお付き合いなどコミュニティが変わることに不安があったからではないかと考えられます。「避難所生活が苦しいものではなかったように見受けられる」と豊嶋さんは指摘します。
経験を通して今活かしていること
つくばみらい市では「平成27年9月関東・東北豪雨」災害で経験したことを、30年3月に改正した地域防災計画に反映しています。現在、避難所の運営をつくばみらい市、避難者、自主防災組織、ボランティア等と共同で運営していく「避難所開設運営マニュアル」を作成中です。これは避難所運営以外にも、応急対策、復旧対策、通常業務など同時にこなす必要があると経験したことがきっかけです。
被害が広域にわたる災害では、市内の避難所だけでは避難者を収容できず、市外への避難を行う必要があります。しかし、当時は市町村間で決めごとがなかったため、初動対応に時間を要したというのが教訓です。そこで、鬼怒川とその隣接する小貝川の下流域の10町(つくば市、常総市、つくばみらい市、筑西市、八千代町、下妻市、龍ヶ崎市、守谷市、取手市、結城市)や茨城県、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所等で構成する「鬼怒川・小貝川下流域大規模氾濫に関する減災対策協議会」を28年2月17日に発足し、減災に取組んでいく方針を決めました。協議会では、市町村間の広域避難について検討し、各市町で調整を行っています。これにより避難予定者数の把握や受入れる避難所の開設準備などを事前に行うことができます。
つくばみらい市では当市の被災者と他市から受入れる避難者のすみ分けをどのように調整するか、早期のBCP策定を行い、職員の配置などを明確にすることが今後の課題としてあがっています。
(右から)
つくばみらい市保健福祉部社会福祉課 課長補佐 成嶋均さん
市民経済部市民サポート課 課長 豊嶋千恵子さん
総務部安心安全課 係長 大久保正道さん
つくばみらい市社会福祉協議会 事務局長 浅川昭一さん
ボランティア市民活動センター センター長 松尾好明さん
総務係兼事業係 坂本清貴さん
http://www.city.tsukubamirai.lg.jp/
つくばみらい市社会福祉協議会
https://www2.tm-shakyo.jp/