(社福)狛江市社会福祉協議会
3つのエリアに配置するCSWがアウトリーチを通じた支援事業を担うとともに、相談支援包括化推進員を兼務。市の相談支援包括化推進員とお互いの強みを活かして、支援・つなぎ・出会いを重層化する。  ―狛江市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2023年4月21日

左から 狛江市社会福祉協議会 地域福祉課 CSW 野木遼太さん、

CSW 大澤遥香さん、CSW 岸真さん、事務局長 小楠寿和さん

 

あらまし

  1. 狛江市は、令和4年度から重層的支援体制整備事業を実施しています。狛江市社協では『第3次地域福祉活動計画』に基づき、平成30年度からコミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)を配置し始め、令和5年度には市内3つのエリアに3人のCSWを配置するに至っています。重層的支援体制整備事業では「アウトリーチ等事業」をこの3人のCSWが担い、複合的な課題を抱える市民や世帯を訪問して支援につなげる取組みを始めました。また、CSWは「地域づくり事業」として、市民が主体的に地域課題の解決に向けた取組みをすすめていけるよう「福祉カレッジ」「福祉のまちづくり委員会」の事業にも取り組んでいます。
  2. 市では市役所に「福祉総合相談窓口」を開設している福祉相談課に平成31年から「相談支援包括化推進員」を配置。狛江市社協の3人のCSWも「相談支援包括化推進員」を兼務しています。市と狛江市社協の双方に「相談支援包括化推進員」を配置することで、ケースに応じてお互いに役割分担しながら多機関協働に取り組みます。例えば、多問題を抱える世帯で緊急も要するケースは行政の相談支援包括化推進員の関わりが必要と考えられ、地域とのつながりを時間をかけて作っていくことが必要なケースはCSWによる取組みが有効と考えられます。
  3. そして、狛江市では、CSWによるアウトリーチに加えて、幅広い相談機関等からの情報を市の相談支援包括化推進員へ集約するため、「つなぐシート」という仕組みを導入しました。これは、市内の相談窓口、公共施設や店舗の店員などが困りごとを抱える方を見かけた際、必要な支援へとつなげるため、簡単なシートで聴きとった内容を市の相談支援包括化推進員に送ってもらう仕組みです。さらに、令和5年3月からは空き家を活用した「多世代・多機能型交流拠点」を開設し、拠点にはCSWの一人が福祉専門職や子育て支援団体とともに常駐する予定です。

 

Ⅰ 市の地域福祉計画と狛江市社協の地域福祉活動計画が連携

日本で二番目に面積が小さい市である狛江市は、6.39平方キロメートルに8万人が暮らすコンパクトな街です。狛江市社協は、平成2年度にはじめての地域福祉活動計画である「あいとぴあ推進計画」を策定しました。同計画に基づき、当時、狛江市社協では10年間、「あいとぴあカレッジ」「あいとぴあ会議」などの事業を推進し、住民主体と住民参加によるまちづくりに取り組んできました。その後、介護保険事業等の事業を狛江市社協でも展開する事業体としての側面が拡大した時期を経て、今、改めて地域住民が主体的に課題を持ち寄り課題解決の取組みをすすめることが大切な時代を迎えています。

 

狛江市社協では長年にわたり「小地域福祉活動」に取り組んできました。平成5年度から岩戸地域、平成8年度からは猪方・駒井地域、平成14年度からは野川地域で活動が始まり、和泉地域では丁目単位での活動に取り組み、それぞれの地域の実情に応じて「地域福祉推進委員会」を設置しています。各委員会では地縁組織の町会等と協力しながら主に地域の高齢者を対象としたサロン活動に取り組んでいます。一方、サロンそのものは地域の重要な社会資源の一つではあるものの、地域住民が主体的に地域福祉課題を検討する協議体へと地域福祉推進委員会が発展できなかったことが課題となっています。

 

平成30年度~令和5年度を計画期間とする『第3次地域福祉活動計画』は、市の『あいとぴあレインボープラン 狛江市第4次地域福祉計画』と同じ計画期間となっています。活動計画では、新たに3つの重点目標として、①地域を支える福祉人材の育成、②アウトリーチによる問題発見・解決への取組み、③住民が地域課題を共有し共にその課題を解決していく仕組みづくりを掲げました。そして、その目標を実現するため、「福祉カレッジの開催」「コミュニティソーシャルワーカーの配置」「福祉のまちづくり委員会の設置」の3つの事業を位置付けました。活動計画の重点目標は、市の地域福祉計画にもその実施への後押しが位置付けられ、3つの事業は「地域共生社会推進事業」として平成30年4月から狛江市社協が受託しています。

 

Ⅱ 地域を支える福祉人材の育成 ⇒福祉カレッジ

平成30年度から開始した「福祉カレッジ」は毎年その内容を見直しながらコロナ禍も継続し、5年目を迎えます。福祉に関心のある市民が障がい当事者や福祉施設の職員、地域で活躍されている方からリアルな話を聞ける講義は好評で、さらに「聞く」だけでなく、個人ワーク、またはグループワークを通して「考える」そして「対話する」という学びも大切にしてきました。コロナ禍での生活困窮者支援の実情を話してもらったり、具体的な地域に今ある課題も講座に採り入れています。さまざまな層の方が参加できるよう、9~12月の期間に全10回、土曜日の10~12時に開講しています。

 

カレッジでは、各受講生が『地域で解決に向けた取組みを実践してみたい』と思う課題をグループワークで出し合い、最後に一人ひとりが自分が選んだ分野の狛江市における現状と課題、その課題に対してどのような地域活動やサービスが必要か、また、今後、自分自身でできることを発表し合います。それは、こんなことが実現すれば「住みやすくなる」という住民主体の企画案であり、学びを活かし、具体的な地域活動へと一歩をふみだすことをめざした取組みといえます。

 

令和3年度の受講生13名が発表したテーマをみてみると、①子どもの貧困について、②情報提供と地域連携、③外国人世帯への支援、④多文化・多国籍の小中学生の学習支援、⑤福祉に関する情報提供、⑥空き家を活用した高齢者支援、⑦子育てしやすい地域をつくる、⑧スマホデビュー高齢者交流支援、⑨高齢者福祉について、⑩保育支援ボランティア、⑪障がいを持つ子の病院探しのお助けプロジェクト、⑫狛江ふくしスタンプラリー、⑬コマラジで福祉カレッジの番組を企画、といったように、コロナ禍に顕在化している地域課題の数々が並びます。受講者からは「知ることができたのは本当によかった。自分は地域の中でどのような役割ができるだろうかと考えるようになった」といった感想が聞かれます。

 

 

Ⅲ 住民が地域課題を共有し、共にその課題を解決していく仕組みづくり

⇒3つのエリアに「福祉のまちづくり委員会」

令和3年4月から福祉カレッジの修了生を中心とした「福祉のまちづくり委員会」の活動が市内3つのエリアで始まりました。そのエリアを担当するコミュニティソーシャルワーカー(以下、「CSW」)が委員会の活動を支援します。現在、市内の3つのエリアで地域アセスメントのワークなど、まずはその地域を知る取組みを始めています。地域課題について話し合う協議体の要素と、その課題解決のための取組みとしてできることはやってみようという活動体としての要素を併せ持った委員会であり、地域住民が主体的にすすめています。

 

一方、3つのエリアで活動に取り組みつつ、各エリアだけでは解決が難しい課題については市域に協議題に合わせた福祉サービス事業者、地域活動者等と相談支援包括化推進員(後述)が集まり、市等に課題解決のための提案を行う「協議体」としての「福祉のまちづくり協議委員会」を合わせて設置することにしました。

 

取材先
名称
(社福)狛江市社会福祉協議会
概要
(社福)狛江市社会福祉協議会
https://welfare.komae.org/
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