Ⅶ 第1次狛江市重層的支援体制整備事業実施計画
狛江市では、令和3年度に重層的支援体制整備事業への移行準備事業を実施し、令和4年度から重層的支援体制整備事業を実施しています。
社会福祉法第106条の5では、市町村は重層的支援体制整備事業を適切かつ効果的に実施するため、「重層的支援体制整備事業実施計画」を策定するよう努めるとされています。狛江市では令和4~5年度の2年間を計画期間とする「第1次重層的支援体制整備事業実施計画」を策定しています。令和6年度からの第2次の実施計画は、狛江市第5次地域福祉計画と計画期間を合わせて一体的に策定することを予定しています。
この第1次実施計画では、重層的支援体制整備事業の実施体制を整備するため、①支援、②つなぎ、③出会い、の3つの重層化を図るための仕組みづくりを進めるため、各事業を以下のような実施体制で取り組むことが盛り込まれています。
1 包括的相談支援事業
包括的相談支援事業は既存の相談支援体制の継続が基本となっていますが、既存の機関同士をつなぐため、各相談支援機関の管理者を「相談支援推進員」として任命するとともに、「包括的相談支援事業用シート登録システム」を活用した情報共有の制度を構築していく予定です。また、前述のように市役所内に「福祉総合相談窓口」を設置する取組みも既に始めています。
狛江市社協では地域包括支援センターの一つを運営していることから包括的相談支援の一翼を担いますが、担当エリアにアウトリーチするCSWも様々な機会に相談ごとを受けとめてきています。そこで受けとめた課題をCSWで抱え込むことなく、地域の関係機関とともに解決を進めることが大切になります。また、前述のように、狛江市社会福祉法人連絡会も「福祉なんでも相談」に取り組んでいます。各法人の専門性を活かした相談支援の取組みが期待されます。
2 多機関協働事業
狛江市では対象者ごとに既に設置されている会議体を「支援会議」「重層的支援会議」に位置付けます。ただし、対象者ごとの会議体の構成員だけでは世帯全体の状況を把握するために必要な情報が得られない場合には、必要な支援者や支援関係機関の構成員を加えて情報共有することを想定しています。
さらに、市の福祉相談課に配置している「相談支援包括化推進員」を中心とした情報の共有化をすすめるため、各相談支援機関の管理者などを「相談支援推進員」に任命するとともに、「ちょっと気になる」「支援が必要そうだな」というケースの情報が市の「相談支援包括化推進員」に集まるよう、狛江市では「つなぐシート」という仕組みを導入しました。「つなぐシート」は、困りごとに気づいた機関が「他の相談支援機関につなぐ必要があると思われるが誰に伝えて良いかわからない」といった場合、関係機関に共有することの同意を本人から得たうえで、福祉相談課の相談支援包括化推進員に情報を提供するためのシートです。
情報共有を円滑に行うため、自治体向けのプラットフォーム「LoGoフォーム」を用いており、パソコンやスマートフォンの端末で入力することもできます。ただし、必ずしもシートを用いる必要はなく任意の様式で伝えたり、直接、相談することでも構いません。まずは庁内向けの関係部署への案内から取り組まれていますが、将来的には、相談窓口に限らず、「つなぐシート連絡員」を市内に広げ公共機関や店舗の店員などからの気づきが寄せられることも目指しています。
相談支援機関等は「つなぐシート」などの仕組みを用いて困難事例を福祉相談課に寄せるだけが役割ではありません。「相談支援包括化推進員」は複雑化、複合化した課題を調整してできるだけ通常の支援へと戻していくことをめざしています。
次のような事例について、「つなぐシート」の活用が庁内に呼びかけられています。
3 アウトリーチ等事業
狛江市社協はCSWの配置にあたって、地域福祉活動計画の重点目標に掲げたのは「アウトリーチによる問題発見・解決への取組み」でした。重層的支援体制整備事業では狛江市社協のCSWが「アウトリーチ等事業」を受託しています。令和4年度には3人のCSWがそれぞれの担当エリアで複合的な課題を抱える世帯などにアウトリーチする取組みをすすめ、5件の支援実績がありました。
4 参加支援事業
参加支援事業は、生活困窮者自立支援事業を実施する「こまYELL」が受託しており、生活困窮者以外を対象とした就労準備支援事業として、地域の様々な関係機関の協力を得て取り組むことを目指しています。連携先や協力機関の一つには狛江市社協も位置づけられています。
5 地域づくり事業
各分野における既存の地域づくりに関する事業をすすめることに加えて、前述の福祉カレッジ、福祉のまちづくり委員会が地域づくり事業に位置付けられています。
「福祉のまちづくり委員会」は3つのエリアとも立ち上げがすすんでおり、定期的に委員会が開催されています。福祉カレッジの修了生を中心とし、地域包括支援センター職員、民生・児童委員、教育関係者、地域活動者などさまざまな方が構成員となり、CSWが提起する地域課題、あるいは地域住民や委員自身が感じている課題を検討する場として取組みが始まっています。
◆グループワークの様子 |
◆災害時に役立つスマホ教室の様子 |
◆街歩きの様子 |
さらには、新たに多世代・多機能型交流拠点「ふらっとなんぶ」が令和5年3月20日に開設されました。これは地域の多世代が交流したりさまざまな地域活動団体が集うとともに、CSWが担当エリアにアウトリーチする拠点です。あいとぴあエリアには「よしこさん家」、こまえ正吉苑エリアには「野川のえんがわ こまち」がそれぞれあり、いずれも空き家を活用した拠点です。新たな「ふらっとなんぶ」は、もう一つのこまえ苑エリアに市として新しく整備する拠点です。
「ふらっとなんぶ」には、狛江市社協のこまえ苑エリア担当のCSWとともに、地域包括支援センターである「こまえ苑」の専門職、子育て支援団体の「子育ての輪」の職員が常駐します。そこでは、居場所・集いの場の運営、相談支援、地域見守り事業、イベント等の企画・運営を市民と協働して取り組んでいくことを目指しています。「福祉のまちづくり委員会」も「ふらっとなんぶ」を拠点に地域課題の解決に向けた取組みをすすめていく予定です。
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狛江市社協では、ふくしえほん「あいとぴあ」を市内在住の就学前の子どもたちに配布するなど、これまで福祉教育にも力を入れてきました。子ども・若者支援への狛江市社協としての関わりが今後、重要となっています。CSWには地域の多世代交流の輪を広げながら、地域住民による主体的な地域活動を推進していくことが求められています。狛江市社協らしい、重層的支援体制整備事業を活用した地域共生社会の実現に向けた取組みが期待されます。
https://welfare.komae.org/