民宿のお父さん樋口さん、松崎さん、阿部さん
約30年間受入れ続けて
掲載日:2017年11月29日
2016年9月号 くらし今ひと

 

あらまし

  • 「母と子の自然教室」でひとり親家庭の母子を約30年にわたり受入れ続けてきた民宿のお父さん樋口さん、松崎さん、阿部さんにお話をうかがいました。

 

家族総出で迎える

樋口さん

自然教室に合わせて普段は東京で働く息子も手伝いに来ていて、家族総出で迎えています。

昔のひとり親家庭は、一つひとつの情報を得ることが今より大変だった印象があります。今は、携帯電話やパソコンがあるので、自分で情報が得られるお母さんが増えたと思います。普段の民宿ではスキー客やスポーツをする小学生などの団体が多いのですが、自然教室の受入れは、それとは全然違います。一般のお客さんは、夕方到着して、夕食、お風呂。そしてその後、部屋に入ってしまいます。朝も8時頃には目的の場所へでかけて行きます。それに比べて、自然教室では一日中一緒という感じ。到着した日は緊張した様子の参加者も、次の朝からはリラックスして過ごし、2泊して帰る日には「来てよかった」と、本当の自分の故郷みたいに感じてくれます。

 

出会ってきた子どもはいろんな子がいます。中には、障子をすべて破いた子、トイレの便器にスリッパを詰まらせた子、水漏れをおこし非常ベルを鳴らした子……。ただ、ただ困った経験もあります。そんな時は、本部の人も真剣に子どもを叱りました。

 

人と触れ合える貴重な機会

松崎さん

毎回参加者が変わりながらも、社員が汗を流しこの自然教室を継続していく、その想いを私たちも感じながらやっています。初めての社員ボランティアへの作業の指導や段取りや片づけなど、フォロー役みたいな感じかな。今回の自然教室では3軒の民宿に、民宿ボランティアとして社員やOB社員が来て食事の配膳などを手伝っています。

 

この場所で自然教室を行って32年。1回目の開催時には生まれていなかったボランティアもいるのが感慨深いです。32年間なんて一昔前。生活も変わる中、夏の暑さの中で熱中症になるなど、汗をかいての体温調整が難しい子も増えた印象があります。

 

昔、子どもが夜中に宿を抜け出し、みんなで探したことがあります。子ども達は、生活や食事に恵まれないのではなく、人との触れ合いに恵まれていないのではないかと思います。いろんな人に叱られたり、褒められたりしながら、落ち着きがなかった子が、帰るころには落ち着いていることもよくあります。

 

受入れ民宿のチームワーク

阿部さん

昭和60年に自然教室の場所として声をかけていただきました。取組んでみないとわからないが、なんとかやれるのではないかと受入れをはじめました。12軒の民宿で受入れをスタートしましたが、代替わりなどで今は8軒です。”夏になれば自然教室“と恒例行事になっています。元々は商売敵でもあり、民宿同士のチームワークも、最初はなかなかうまくいきませんでした。村の中には約35軒民宿がある中、どのように受入れ先を決めるか迷いましたが、山に近い立地の12軒ではじめることにしました。村の中の活動単位とは違いますが、隣同士で連携できて結果的によい決断になりました。チームワークのコツは「公平」。食事のメニューを統一したり、一緒にできることは協力したり、差がないようにしています。自然教室の時期にちょうど、ひまわりの花が咲くように種をまいたり、子どもが歩きやすいように山道の草を刈って、今年もまたみなさんを迎えています。

取材先
名称
民宿のお父さん樋口さん、松崎さん、阿部さん
概要
「母と子の自然教室」
三菱商事(株)の社会貢献事業の一つとして実施するひとり親家庭むけのキャンププログラム。
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