うつ病当事者として想いを発信する ゆまさん
ありのままの自分で生きていける社会へのきっかけをつくりたい
掲載日:2017年11月29日
2017年10月号 くらし今ひと

    ゆまさん

 

あらまし

  • うつ病の当事者として、同じ症状に向き合う女性が集まる場や想いを発信する機会づくりをしている、ゆまさんにお話をお伺いしました。

 

良くなる想像ができなかった

社会人になって少し経ったころ、うつ病の診断を受けました。もともと感受性や義務感が強かったところ、仕事で過度なプレッシャーを自分にかけ、どんどん疲弊していきました。

自分の状態がおかしいと感じながらも「まだ頑張れる」と無理を続け、とうとうベッドから起き上がれなくなったときに、ようやく観念しました。

「“うつ”かもしれない」と思っていたので、診断時は「やっぱり…」という感じでした。仕事を辞め、ベッドに横になるだけの中、今までできていたことができなくなっていく恐怖や、社会から取り残される感覚が本当に辛かったです。

知識としてのうつ病と実際の経験はまったくの別物で、不安という言葉だけでは言い表せないさまざまな感覚にかられ、良くなることが想像できませんでした。

 

「居場所」と「つながり」の大切さ

その後、「当事者会」というものがあることをネットで知りました。しばらく悩んだ末、思い切って行ってみると、そこには同じ苦しみや悩みを抱える方がたくさんいて、「私だけじゃない」「弱いって言っていいんだ」と気持ちが楽になりました。

仲間とつながり、「ここにいていい」と思える居場所をもっとつくりたいと、「東京うつ病友の会」を立ち上げました。

 

気づきや力をもらえる女子会

会の集まりを重ねるうちに、女性の参加者が少ないことに気づきました。私もそうでしたが、知らない場に女性1人で参加するのは勇気がいることです。

また男性がいる中では話しづらい、女性ならではの悩みもあるのではと思い、女性当事者だけの「女子会」を始めることにしました。

居心地の良い空間にしようと、おしゃれなカフェを会場に、お茶をいただきながら想いを分かち合っています。「安心して参加できた。来て良かった!」との声は大きな励みになります。

けれども、主催の私が何かをしたのではなく、女性の高い共感力で感じる「一人じゃない」という強い一体感が、ご本人の回復に結びついているのだと思います。

ただおしゃべりしたり、場の雰囲気だけで癒されるという方も多いです。世間のいわゆる“女子会”は決められた女性像を求められるようで苦手ですが、この会に参加する個々の魅力に溢れた女性たちからは気づきや力をもらっていて、「私の方が助けられている!」と、いつも感謝しています。

 

ありのままの自分を受入れて

女子会でお会いする方は皆それぞれに魅力的なので、「こんな素敵な方たちが、どうして自信を失くして表に出ることを諦めてしまったのだろう」と感じています。

女性の生き方について考え、その悩みや本当の魅力を広く知ってほしいと、「女性とうつ」をテーマにした分科会(※)を開催しました。

「女性同士の付き合いが苦手で男性に依存し、その中で自分を押し殺していた」、「女性は『家庭に入る』という形で社会から隠されやすい」などの女性当事者の話は、男性の参加者には衝撃的だったようです。また、「調子が悪いとき用に『家事の非常時オペレーション』をつくる」、「自分の強みを見つけ、そこを伸ばす」など、生活での独自の工夫も出演者に話していただき、

それぞれ個性を活かして一歩ずつすすんでいる様子が伝わる時間だったと思います。分科会の参加者に感想やご自身の想いを書いていただいた付箋(「希望の種」)も、一つひとつからたくさんの力を感じました。

「希望」としたのは無理に希望を持ってということではなく、希望なんか持てなくても「そんな自分でいいんだ」と受入れてあげることから何かを掴むきっかけの種になれば、という願いを込めています。

 

(※)「リカバリー全国フォーラム2017」(認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)主催)にて開催

 

どんな生き方でもいきいきと

「女性」というテーマは、皆が生きやすい社会をつくる切り口の一つだと考えています。

女性が生きやすい社会をつくっていくことは、男性やLGBTの方、障害のある方など、どんな人でも生きやすい社会につながるはずです。

ありのままの自分を肯定でき、どんな生き方でもいきいきと生きていける社会へのきっかけをつくりたく、今後も一人ひとりの想いを乗せた「希望の種」をまく活動をしていきたいと思っています。

取材先
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うつ病当事者として想いを発信する ゆまさん
概要

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