児童養護施設で働く 高木 千乃さん
たくさん人と出会い、話を聞くことが原動力になる
掲載日:2017年11月29日
2016年5月号 福祉のおしごと通信

(社福)恩賜財団東京都同胞援護会 児童養護施設「双葉園」

 自立支援コーディネーター 高木 千乃さん

 

あらまし

  • 子育てと仕事を両立しながら、児童養護施設で働く高木千乃さんのおしごとの魅力をお伝えします。

 

子どもは環境や施設を選べない

支援には「ここで終わり」というものがありません。「自分がどこまでできるかやってみたい」という想いでここまできました。児童養護施設に入職したての頃は、勤務形態の面から「5年続くかな…」と不安でした。自分の未熟さや人間関係、また、現場の意見がつながらないと感じて悩んだ経験もあります。でも、職員は働く施設を選ぶことができるけれど、ここにいる子どもたちは自分で選んで施設に来たわけではありません。そう思うと、自分はまだ甘いのではないかと思い、踏みとどまりました。

 

子育てと仕事の両立と罪悪感

一人目の子を出産した時は、4か月で職場復帰しました。子どもが体調を崩した時も「仕事を続けるからには休んではいけない」と思い、病気の子を実家に預け、母親としての罪悪感を抱えることもありました。二人目の子を出産して職場復帰した時に、同僚が「長い目で見れば子育ての期間は一時なのだから、みんなで協力していけばいいことだよ」と声をかけてくれました。私は、そのように思ってくれる人がいることで励まされ、子どもが大きくなったら還元していきたいと思えるようになり、引け目に感じていた気持ちが軽くなりました。

 

外に出て視野を広げて

子どもたちとのかかわりに悩み、行きづまったときは、外に出て人の話を聞くようにしています。研修への参加、資格取得のために通った通信制大学で異業種の方と出会ったこと、部会活動で他の施設の方とのつながりができたことは、私にとって仕事を続けるうえでの勇気やパワーになりました。自分たちの感覚では支援の限界と感じていることも、色々な立場の人から話を聞いてみると、自分や施設にできることが発見でき、時には笑わせてもらい、気持ちをリフレッシュできます。そこで聞いた話を施設に持ち帰って試し、知識として得たことが実践と一致したときや、別の気づきが生まれると、新しい引き出しが増えたように思えてとてもやりがいを感じます。また、卒園生に「知ってる人がいないと遊びに来れないよ」と言われ、同じ場所に居続けることに意味があると思いました。子どもたちにとっても「昔こんなことがあったね」と自分の過去を確かめたり思い出して話せる場所があることは大切だと考えています。

 

やりがいと誇りを持てる仕事

私が仕事で大切にしていることは「想像力」と、「子どもや保護者のニーズと支援者側が考えるニーズが合致するようにすること」です。以前「働く」と言う子に対し、情報収集をしたり一緒にハローワークに通ったことがあります。その子がある日、ハローワークで「トイレに行く」と言い残しいなくなりました。その子の中で働くことへの心の準備ができていなくて、本人の心はそこにはありませんでした。その時に、支援者側の想いが一方的になっていたと気づかされました。

児童養護施設での仕事は、体力勝負の部分もありますが、やりがいがあり、誇りを持てる仕事です。もちろん疲れることも、くじけそうになることもありますが、視野を広げると、新しい発見や気づきがあります。

児童養護施設の子どもたちを取り巻く環境は、以前よりかかわる人や目を向ける人が増え、当事者の声が国に届きやすくなってきていると感じています。

自立支援コーディネーターの仕事は、より住みやすく、生きやすい社会に変わっていくように、社会と当事者をつなぎ、働きかける仕事だと思っています。

 

プロフィール

  • 高木 千乃さん
    (社福)恩賜財団東京都同胞援護会「双葉園」自立支援コーディネーター。平成7年2月より双葉園にケアワーカーとして入職。平成25年4月から自立支援コーディネーター。
取材先
名称
児童養護施設で働く 高木 千乃さん
概要
(社福)恩賜財団東京都同胞援護会 児童養護施設「双葉園」http://www.doen.jp/introduction/child/futaba
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