特別養護老人ホームで働く 伊藤 敏さん
利用者、家族、共に働く仲間、地域…大切に想う輪が広がっていく
掲載日:2017年11月29日
2016年7月号 福祉のおしごと通信

 

(社福)大和会 特別養護老人ホーム「愛生苑」 介護職員兼ケアマネジャー 伊藤 敏さん

 

あらまし

  • 看取りへの恐怖心を乗り越え、特別養護老人ホームで働く伊藤敏さんのおしごとの魅力をお伝えします。

 

夢中に取組む自分をみつけた

私は、幼いころ近所のおじいちゃんやおばあちゃんにとてもかわいがってもらいました。そんな経験を思い出してこの仕事を選んだのだと思います。学生時代は工業を学んでいましたが、大学2年生の時に思い切って介護の世界に飛び込むことを決めました。20歳で愛生苑に介護職員として入職し、現在12年目です。

 

入職時には介護の知識はほとんどなく、高齢者施設は利用者がゆったりと散歩やお茶を楽しむ場所だと思っていました。自力で食事が摂れない方を目の当たりにしたときは「こんな世界があったんだ…」と感じたことを覚えています。

 

はじめの頃は介助の際に他の職員より時間がかかったり、人間関係などで悩んだこともありました。でも一生懸命取組んでいると、だんだん周りの人が認めてくれるようになり、本音を言い合える仲間もできていきました。

 

また、働いていく中で、どうしたら利用者の普段の暮らしがもっとよくなるかを考え、勉強したり努力する自分がいました。こんな自分ははじめてでしたし、こんなに一生懸命になれる仕事につけた自分は幸せなのかもしれないと強く思うようになりました。

 

さみしい思いをさせたくない

私が介護の仕事をしていく中でぶつかった一番の壁は、利用者が亡くなることに向き合う恐怖心でした。利用者への想いが強くなるほど、利用者が亡くなってしまうことへの辛さが増し、はじめの頃は利用者が亡くなるたびに家で泣いていたこともありました。「どうか朝、みんなが来るまで息をしていて」と願いながら夜勤をする日もありました。

 

入職から5年目に自分が担当する利用者の看取りを経験しました。その方は食べ物をほとんど受けつけない状態でしたが、体調のよさそうな日にはその方の大好物のお寿司を買いに行きました。一貫だけしか食べられませんでしたが、自分の手でお寿司を食べている姿は印象的でした。また、ある日、私がその方の口腔ケアをしていると「本当にありがとうね」とおっしゃってくれました。私がその方を大切に想う気持ちが伝わったような気がして本当に嬉しかったです。

 

その方がいつ息を引き取るかわからない状態が続く中での夜勤の日。私は恐怖を感じていませんでした。暇を見つけてはその方の居室へ行って手を握り、「絶対にさみしい思いはさせないからね。もし何かあっても私が絶対にみつけてあげるからね」と思っていました。

 

その利用者とのかかわりを通して、職員が不安な気持ちでいるよりも、さみしい思いをさせたくないという気持ちでいた方が利用者も嬉しいのではないかと思えるようになり、看取りに対して前向きに考えられるようになりました。

 

南多摩から介護業界を盛り上げたい

私は現在、東京都高齢者福祉施設協議会南多摩ブロックの幹事を務めています。部会活動へ参加し、経験を重ねるうちに、自分の働く施設の中のことだけでなく、施設の外に対しても目が向くようになっていきました。他施設の職員と悩みや良いところを交換し、互いの施設の良いところを取り入れながら協力して取組んでいます。

 

これからもっと他の施設で働く職員の仲間や地域の方、福祉の仕事をめざしている人たちなど、多くの人を巻き込んで協力しながら、みんなが笑顔で楽しく、よりよく暮らしていける地域をつくっていきたいと思っています。そして自分の生まれ育ったこの南多摩から介護業界をますます盛り上げていきたいです。

 

プロフィール

  • 伊藤 敏さん
    平成16年愛生苑に介護職員として入職。平成25年度より介護職員兼ケアマネジャーとなる。
取材先
名称
特別養護老人ホームで働く 伊藤 敏さん
概要
(社福)大和会 特別養護老人ホーム「愛生苑」
http://www.yamatokai-tokyo.or.jp/

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