小規模多機能型居宅介護で働く 木村謙一さん
年齢や病気により諦めていた希望の実現に向け、在宅生活を創り上げる
掲載日:2017年11月29日
2017年3月号 福祉のおしごと通信

(有)ブライトケアー 小規模多機能型居宅介護「ブライトの家」所長 木村謙一さん

 

あらまし

  • 小規模多機能型居宅介護で、高齢者の在宅生活を支え、ともに生きがいを見つけていく、木村謙一さんのおしごとの魅力をお伝えします。

 

小規模多機能型居宅介護は、「通所」を中心に「訪問」や「泊まり」を組み合わせ、高齢者の在宅生活を支援します。病院を退院した方や認知症の方など、個々の利用者の状況と希望に応じ、住み慣れた自宅で生きがいを持って暮らし続けられるよう、利用者とともにケアプランを作成しています。

 

諦めてしまった希望を叶えたい

利用者は、はじめから希望を持っているとは限りません。

突然の病気やケガで体が不自由になり、自暴自棄になっている方や、認知症がすすんで家事を止められ、家での役割をなくしてしまった方など、さまざまな理由で生きがいを見失い、支援を拒む方もいます。

それでも「家での生活を手伝いたい」と伝え、かかわりを続けていくことで、「本当はやりたいこと」が徐々に見えるようになり、目標と役割を持つことで、生きる気力を取り戻していかれます。

希望の一つひとつは、高齢や病気になる前は当たり前にできていたことです。

例えば、病気で半身不随になった方は、「新橋で飲みたい」「お神輿を担ぎたい」という希望を話してくださいました。

飲み会はすぐに実行し、お神輿も主治医などの関係者や地域の方の応援と協力を得て、実現させることができました。

心身の状態から諦めていたことでも、本人が望むならば何とか叶える方法はないかと考え、愚直に応援し続けています。

 

介護はクリエイティブな仕事

希望や役割を見つけ、目標に向かう姿は、家にとじこもっていたときと違い、生き生きとされています。こうした本当の姿を見られることは嬉しいですし、利用者の家族にも見せたくて、活動の様子は写真や動画に収めています。

映像を見ると、「サービスを受けて良かった」と、介護に疲れていた家族にも笑顔が戻ります。

地域や家族への働きかけは、意気込まなくても、利用者本人を支えることで自然とつながっていきます。

この仕事は、利用者の状況や生活環境といった与えられた状態から理論を積み重ね、その方の役割や生きがいを見出せる、クリエイティブなところが魅力だと思います。

思い悩むこともありますが、医師や家族、本人でさえも諦めていることを実現に向けて工夫できる点に、やりがいを感じます。

 

「本当の介護」に出会う機会を

この仕事を「続けていきたい」と思えたきっかけは、訪問介護員だったころ、ある認知症の方への支援の悩みから体調を崩したため、「何かが変われば」と受講した研修会でした。

それまでに教わった支援技法が腑に落ちず、元々、人と話すより物づくりが好きだったので、「やはり介護は向いていないのだ」と思い、辞めようと本気で考えていたときでした。

研修会では、根拠に基づいた認知症の方への正しいかかわりを学びました。

それを実践したところ、担当している方への支援に希望が見えるようになり、支援が難しいとされる方も、やり方次第で状況は変えられるのだと気づきました。

小規模多機能型居宅介護を始めたのも、訪問以外の支援を取り入れることで、施設に入所せざるを得ないとされる方でも在宅生活を続けられないかと考えたからです。

今、介護業界には、大学などで福祉を専攻し、強い意欲を持って入職する若い方がたくさんいらっしゃいます。こうした方たちが、入職後、壁にぶつかったとき、「仕事を続けていくきっかけ」に出会えず辞めていくことは避けなければならないと思っています。

平成27年に「CLUB POPCORN」という、若手職員の活動の場を立ち上げました。私が研修会に出会えたのと同じように、若い世代が「本当の介護」に出会う機会としていきたいです。

 

プロフィール

  • 木村謙一さん
    メーカー勤務、訪問介護員を経て、平成23年12月から小規模多機能型居宅介護「ブライトの家」所長。東京都介護保険居宅事業者連絡会青年部「CLUB POPCORN」会長。
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名称
小規模多機能型居宅介護で働く 木村謙一さん
概要
(有)ブライトケアー 小規模多機能型居宅介護「ブライトの家」
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