認定NPO法人 難民支援協会(JAR) 代表理事 石川 えりさん
あらまし
- 石川えりさんは、日本にいる難民がより良い支援を受けられるような社会を目指す、認定NPO法人難民支援協会の代表理事です。個別支援だけでなく、政策提言、広報活動、被災地での人道支援などさまざまな活動を行なっています。
戦争や紛争、宗教的な問題、マイノリティーに対する深刻な差別や攻撃など、それぞれの理由から自国で生活することが困難になった人たちがいます。彼らのような「難民」と呼ばれる人たちは、日本へも逃れてきています。
平成26年、日本での難民認定申請者は5千人に上りましたが、その年に認定を受けることができたのは、わずか11名しかいません。
制度と公的な支援のギャップを埋める民間の支援体制
現在、日本で難民認定申請者が受けられる公的な支援は、申請手続き中に限られ、受け取っている人はわずか160人です。受けられる支援の期間は平均12か月程度で、申請前や裁判中に支援はありません。また、認定の申請から裁判までの待機期間は平均3年かかります。この間に、住居やお金が無いためにホームレスのような生活をしている人もいます。そのため、公的な支援では充足されない部分の支援は、公の仕事ではありますが、民間団体で補っていかなければなりません。
設立当初は、他の団体も含めて人員が十分でないため、ボランティアをお願いするのが一般的でした。本来ある自分の仕事を終えた後にボランティアとしてやってくるため、支援できるのが、夕方以降の公的な機関が閉まった後になってしまうのが課題でした。そんな中で私たちは、常時フルタイムの職員を配置し、役所への同行や病院への受診など、必要なニーズに対応できるよう団体の体制づくりを行ってきました。また、立法活動など政府への働きかけや、多くの方に難民の現状を知ってもらうための広報活動も積極的に行ってきました。
女性のための居場所づくり
支援を続けていく中で、過去の経験から、男性と同じ場所にいることに不安を感じる女性が多くいました。そこで、彼女たちのサポートができるよう、女性限定のピアサポートサロンを今年から立ち上げました。参加者のほとんどは単身で生活しており、孤独や悲しみ、過去の経験と現在の立場からくる複雑な感情を持っています。似た境遇に置かれた彼女たちが一つの場所に集まり、同じ活動をし、話すことで、お互いに共感し合ったりアドバイスし合う様子も見られるようになりました。今後は、彼女たちが主体となってサロンを開催していけることを目標にしています。
「地域で生きる」という課題
公的な制度自体もそうですが、私たちの行う支援も、「生きる」や「食べる」など、最低限の生活を満たすためのセーフティーネットとしての支援が中心となってしまっているのが現状です。ですが、実際に必要となるのは、ただ「生きる」だけではなく、地域というコミュニティの中で人とつながり、自分の特徴を生かしながら「地域で生きる」ことのできる環境を作る支援です。私たちは、難民が地域で生活しながら、将来設計の可能性や選択肢をもてるために、さまざまなニーズに対応しながら、その環境づくりの手助けができる団体にならなければなりません。
お隣に来るかもしれない人たち
個人的には、私たちのような団体が必要のない、誰もが平和に生きることのできる社会になるのが、究極的な目標だと思っています。難民という視点で活動を行なってはいますが、難民に限らず、外国人でも、障害者でも、どんなマイノリティーの人でも、いつか自分のお隣に来た時に、排除せず、自然に受入れることのできる社会の足場をつくるため、私たちは活動を続けていきます。
プロフィール
- 石川 えりさん
高校生の頃、ルワンダ内戦のニュースから難民問題へ関心を持つ。ボランティア活動を経て、1999年に難民支援協会(JAR)を設立。設立メンバーとして、支援活動に携わる。現在、協会代表理事。
https://www.refugee.or.jp/