畳の部屋では、漫画を読んだり、UNOで遊んだり、家のようにのんびりできます
若者の生きづらさに寄り添う
調布市のアパートの一室にある「Kiitos」に、子どもたちは「ただいま」と帰ってきます。今日の出来事をスタッフに報告する子、パソコンでゲームをはじめる子、おやつを食べてのんびりする子。
漫画等のある畳の部屋では、支援員も交えて大勢でUNOの大会が開かれていました。
一方、学習室でひとりで黙々と勉強をしている子もいます。
どこか懐かしい、安心できる雰囲気がそこにはあります。 「NPO法人 青少年の居場所Kiitos」は、生きづらさをかかえた地域の若者の居場所です。
約250人の子どもが利用の登録をしており、その半数が日常的に来所しています。
相談支援、学習支援に加え、面接で食事が必要と認められた子どもには、昼と夜の二食を無料で提供しています。お米や野菜等の食材の多くは、地元の農家や全国からの寄附でまかなわれ、ボランティアスタッフが交代で調理を行っています。
午後6時からは、みんなで食卓を囲んで夕食の時間です
子どもたち自身の力を信じて
代表を務める白旗眞生さんは、調布市の中高生世代の居場所「CAPS」で相談員として働いていましたが、満18歳でCAPSを「卒業」していく子どもたちのなかには、虐待を受けていたり、食事をとれていなかったり、不登校の子どももいました。
白旗さんは切迫した状況にある子どもが卒業を迎えるたび、「この子は明日からどこに帰るのだろう」と危機感を抱き、平成22年にKiitosを設立したのです。
Kiitosでは、子どもたちの意思を非常に大切にしています。何かを「やりたい」思いを叶えることが、他人への信頼感や自信を育むからです。学習支援をはじめたのも、Kiitosに通っている不登校の子どもが、「学校には行きたくないけれど、勉強はしたい」と言ったことがきっかけでした。
今では毎日、複数の講師がボランティアで主要5教科を教えられる体制を整えています。白旗さんは、「立ち止まって動けなくなった子どもを、無理やり前に引きずっていくことは支援ではない。
私たちは、子どもたちが自分の力で再び歩き出すためのきっかけを作っている」と話します。
「ただいま」と帰ってこられる地域の居場所として
スタッフは、いつも「ここが家だったらどうするか」を考えて、子どもたちに対応しています。子どもたちが甘えたいそぶりを見せれば思いきり抱きしめ、人を傷つける言動をすれば厳しく叱ることもあります。
虐待等、過酷な経験をしてきた子どもたちを叱るのは難しいことです。
しかし、放置すれば今度は本人が暴力や虐待の加害者になる可能性があります。スタッフは、真剣に一人ひとりの子どもと向き合い、信頼関係を築くことを心がけています。
支援を始めた頃に中高生だった子どもたちが、社会人になってからも仕事帰りにやってきます。白旗さんは「よく支援の『出口』という言葉が使われるが、ここは『家』なので、出口はない。
子どもたちがいつでも帰ってこられる場所として、これからも活動していく」と話します。Kiitosの地域の若者に寄り添った支援は、今後も続いていきます。
http://kiitos.org/
生きづらさをかかえた若者が、ふたたび自信を取り戻し、目標を見つけ、自立するための居場所として、平成22年に開設されました。中学生から30歳までの若者なら誰でも利用できます。
開室時間:毎週月~木、土曜日(11:00~18:00)
休室日:金・日・第3月曜日
TEL:042-444-0749