山田 遼太郎さん

あらまし

• 平成27年9月12日に「『人間って、障害者って、』その暮らしを考えよう」をテーマに第10回東京大集会が開催されました。山田遼太郎さんが「フクシの仕事の魅力」について発表しました。

誰かの役に立っていると実感したい

私が感じているフクシの仕事の魅力、この仕事の楽しさを皆さんに伝えたいと思います。私は滝乃川学園に勤めて3年目です。滝乃川学園成人部の施設入所支援部で30代から50代の主に重度の知的障害がある方の日々の支援をしています。業務内容は、食事の準備、服薬管理、入浴、金銭管理など、利用者さんが自分で行うには難しいことを支援しています。

利用者の方々が充実した毎日を過ごせるよう支援することも私たちの仕事です。私は、ここで働き始める前は技術系の大学を出て、福祉の世界とは縁のない企業に勤めていました。私が福祉の道を志したのは、もっと直接的に誰かの役に立っていることを実感したかったからです。「自分がしたことに対して笑顔が返ってくる、そんな仕事は何だろう」と考えたときに、思い浮かんだのが福祉の仕事でした。

純粋なキラキラした笑顔

私はこの仕事をする前は、知的障害者の方とかかわった経験はありませんでした。正直なところ、知的障害者の方に対して「こわい」という思いもありました。ですが、入職してから知的障害者の方と一緒に毎日を過ごすなかで、そのような想いは薄くなっていきました。知的障害者の方々が持つ魅力を知ることができたからだと思います。毎日顔を合わせるたびにニコニコ笑顔で握手をしてくれたり、学園内にトラックが入ってくるのを楽しんでいたり、私が今日の入浴の担当と知ると声をあげて喜んでくれたり。言葉が話せない方、会話が難しい方も多くいらっしゃいますが、本当に素敵な笑顔を見せてくれます。なぜそんなに笑っているのがわからない時もあるのですが、純粋なキラキラした笑顔をみると、こちらも思わず笑顔になってしまいます。

利用者の方々に楽しく過ごしていただくことも私たちの仕事の１つです。休日は利用者の方と一緒にお昼ご飯を作ったり、誕生日に一緒にケーキを作ったりもしています。夏休みには利用者の方と流しそうめん大会をして楽しい一日を過ごしました。とくに問題なく終えた一日だと、仕事ではなく利用者の方々と一日遊んで帰るような気持ちになることもあります。

もちろん、そういったことばかりではありません。時には、利用者の行動を身体を張って止めなければならない時もあります。それによって怪我をしてしまうこともあります。この仕事は「大変な仕事だ」とよく言われますが、確かに以前の会社勤めの頃と比べて大変だと思うこともあります。例えば、利用者の方がどうしたいのか、何を望んでいるのか、わからなくて困ることがあります。言葉を話せない方であればなおさらです。表情や身振り手振りから読み取るしかありません。利用者の方も訴えることがなかなか通じず苛立ち、こちらも訴えていることがどうしてもわからず、繰り返される訴えにイライラしてしまうこともあります。それでも辛抱強く時間をかけてかかわるしかありません。

朝食を食べてくれない利用者

利用者の方と信頼関係を築くのにも難しさがあります。私が支援している利用者の方の中には、私が入職してから1年間、私が担当の日の時だけ朝食を食べてくださらない方がいました。突然現れた見ず知らずの新入職員が信頼できないのは、当たり前だと思いますが、先輩職員と比べ自分だけ信頼されていないというのは、私の中で大きな悩みでした。悩みながらも毎日笑顔で話しかけることを心がけ、一緒に好きなテレビ番組を見て、空いた時間にはできるだけ一緒に過ごすようにしているうちに、次第にご自身から話しかけてくださるようになりました。私にあだなをつけてくれるようになり、互いに冗談を言い合うようになり、1年経ってようやく朝食を食べてくださったときには非常に嬉しく感動しました。

知的障害を持つ方の持つ魅力にきっと気づく

こうしたことは前職では体験しなかった大変さであり、そしてまた前職では感じられることができなかった達成感ややりがいです。辛いこと、大変なことも含めて、私は今の仕事を楽しんでいます。大変なこともあるけれど、利用者の方の笑顔に癒され、元気がもらえるこの仕事が好きです。

知的障害を持つ方とかかわったことのない人もいるかと思います。大変な仕事というイメージが強かったり、私と同じようにこわいと感じている人もいるかもしれません。ですが、かかわってみればこの仕事の楽しさや、知的障害を持つ方の持つ魅力にきっと気づくことができると思います。今日ここにいる皆さんに知的障害者支援の魅力を少しでも伝えることができたら幸いです。