(社福)安立園
罪を犯した高齢者を家庭的な環境で支える
掲載日:2017年12月20日
2015年8月号 連載

浅原武納 施設長(中央)

日髙優浩 副施設長(左)

関口陽子 主任(右)

 

■あらまし

  • 平成26年度版犯罪白書」によると、平成25年度の65歳以上の高齢者検挙人員は、平成6年度と比べ6倍に増加しています。釈放後に頼る人がいないと、再犯する可能性が高まります。今号では、社会福祉法人として、触法高齢者を施設で受入れている取組みと、保護観察対象者に社会貢献活動の場を提供している取組みをご紹介します。

 

 

社会福祉法人安立園は、大正15年に設立された更生保護団体が前身です。刑務所を出所した60歳以上の身寄りのない高齢者が入所し、訓練・指導を通して社会復帰支援をしていました。昭和27年に社会福祉法人、昭和38年に養護老人ホームに移行しました。

入所者は男性のみの110名です。精神疾患、認知症、アルコール依存症、知的障害がある方、独居で地域生活が難しい方、触法高齢者など、手厚い支援が必要な方が暮らしています。建物は、昭和40年に建てられたため、施設の老朽化が課題です。入所者の生活の質を向上するため、建替えを検討していますが、条件が折り合わず見合わせています(*1)。

畳敷きの4人部屋が中心です。入所者の状態に合わせ、フローリングのベッド部屋も利用しています。また、身寄りがなく亡くなられた方には、生前の希望に沿い、施設内で葬儀・告別式を執り行っています。

 

*1

東京都では、養護老人ホームの建替えの補助要件に、特定施設入居者生活介護の指定が必要。安立園で指定を受けた場合、運営費が大きな減収となり、継続的な施設運営が困難なため、建替えは見合わせている。

 

私たちは「あなたを支援する」

 

安立園養護老人ホームは更生保護団体が前身であるため、現在も入所者の1割は触法高齢者です。更生保護施設から入所された方、保護観察中の方、過去に犯罪歴を有している方、地域生活定着支援センター(*2)経由の方などです。窃盗等の軽犯罪が主な犯罪歴の方を受入れていますが、家族からの支援は受けられない状況にあります。凶悪犯罪・性犯罪・放火等の犯罪歴を有している方は受入れていません。

触法者が施設に入所する場合は、再犯させないために、入所者・福祉担当者と話し合い、施設での生活ルールを丁寧に伝えています。保護観察中の方には、保護観察遵守事項に加え、外出や金銭管理等の施設内での制限を設けています。約束を守れなかった場合は、すぐに生活相談員、支援員による面接を行います。困りごとやトラブルがあれば、施設長等が面談をしています。

主任の関口陽子さんは「入所者には、施設で生活するための約束を守ってもらう。そして、『私たち職員はあなたを支援する』と伝えている」と話します。また、職員は誰が触法者かを把握していますが、本人以外の入所者には分からないように対応しています。本人にも自分から犯罪歴を話さないように約束しています。

 

*2 地域生活定着支援センター

高齢又は障害のために福祉的支援が必要な矯正施設退所者等に対し、関係機関と連携しながら、入所中から退所後まで一貫した支援を行い、地域生活の定着を支援する機関

 

自分で生活を組み立てる

 

施設長の浅原武納さんは「刑務所と施設の生活は異なる。ここでは生活を組み立てるための支援が必要」と話します。刑務所は集団生活で決まったルールに沿って行動します。一方、施設での生活は、自分で自分の生活を組み立てる必要があります。職員は、囲碁・将棋などのクラブ活動やお茶に誘うなど、自分で生活を楽しめるよう支援しています。入所当初は「刑務所の方が考えなくて楽だった」と話していた方も「人間らしい生活ができている」と変わっていきます。

 

入所者有志による「おそうじ隊」 毎朝、施設内共用部の清掃をしています

 

一人の人間として接する

 

触法高齢者への接し方について、副施設長の日髙優浩さんは「『触法者』という枠で括るのではなく、一人の人間として接するようにしている」と話します。入所者は一人ひとり性格が異なるため、定型的な研修で対応方法を学ぶことは困難です。経験の浅い職

員は、経験豊富な職員の声掛けやそのタイミングを実際に見て学んでいます。

入所者が落ち込んでいる時には優しく、トラブルを起こした際には厳しくと、保護者のように接し、いつもは子や孫のように入所者を敬って接しています。このような家庭的な関わりを継続することで、入所者は「安立園に最後まで居たい」と感じるようになります。

 

施設内での葬儀・告別式の様子

 

保護観察対象者の社会貢献活動の場の提供

 

平成27年6月より、少年院の仮退院者など保護観察対象者の一部に、福祉施設等での社会貢献活動が義務付けられました。安立園養護老人ホームでは、東京保護観察所立川支部からの依頼により、平成23年から先行して、保護観察対象者(成人・少年)に社会貢献活動の場を提供しています。東京保護観察所立川支部から依頼があった際、法人全体で検討した結果、養護老人ホームで受入れることになりました。

活動内容は介助浴の補助、洗濯物たたみ、ゴミ箱の清掃などです。1回の活動で3名程度が参加します。保護観察対象者が活動する際は、保護司、保護観察官が同行し一緒に作業をしています。活動した少年からは「『ありがとう』と言われたのが嬉しかった」「福祉に興味を持つようになった」などの感想がありました。日髙さんは「今後は養護老人ホームだけでなく、他施設でも受入れていきたい」と話します。

 

福祉と司法が話し合う場が必要

 

安立園は、触法者を積極的に受入れてきましたが、他法人ではあまり受入れがすすんでいないのが現状です。その課題として、受入れる職員の「触法者」への心理的ハードルがあります。それを解消するためには、触法者の生活歴や刑務所での生活状況、出所後のニーズ等を知ることが大切です。実際の姿を理解することで「触法者は特別な存在ではない。福祉施設でも受入れることができる」と職員の気持ちが変化していきます。

また、浅原施設長は「福祉と司法が話し合う場が必要。そのしくみづくりが急務」と指摘します。法務省調査によると、親族等の受入れ先がない満期釈放者は年間約7千200人います。そのうち高齢者又は障害を抱え自立が困難な人は約1千人に上ります。支援が必要なのに、誰にも頼れず再犯してしまう方がいます。矯正施設出所後、福祉サービスへつなぐ支援を行う地域生活定着支援センター等の機関の充実と、福祉施設による積極的な受入れが求められます。

 

法人概要

  • (社福)安立園
  • 「安立園」の法人名称は、創設者が聖人・賢人の教えから選んだ「安心立命」に由来
取材先
名称
(社福)安立園
概要
(社福)安立園
http://www.anryuen.jp/
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