(社福)ダビデ会
地域に”子育てコミュニティ“をつくる
掲載日:2017年11月29日
2015年9月号 連載

(社福)ダビデ会

ナオミ保育園 園長 伊能恵子さん

 

あらまし

  • 昭島市東中神駅徒歩1分にある保育園が近隣商店街の一角に地域の人が集える「地域ふれあい館」を平成25年4月にオープンさせました。利用者層別に各種プログラムを地域の方へ提供しています。本号では、異世代交流の場を通して地域に”子育てコミュニティ”をつくる取組みをしている社会福祉法人ダビデ会昭島ナオミ保育園園長の伊能恵子さんよりご寄稿いただきました

 

「地域ふれあい館」創設の背景

地域支援施設を創設しようとしていた当初、シャッター街化した小さな駅前商店街には、行き場のない高齢者が一日空を見つめて座っている姿があちらこちらにみられました。

また、近隣の小さな児童遊園は、夕方になると中高生のたまり場となり、シャッターの下りた商店の前には段ボールハウスが出来、治安も悪化していました。

さらに、中高生と小学生高学年の万引きや恐喝まがいのトラブルに関する相談が卒園生の保護者から続々と寄せられており、地域にある社会福祉法人として、何か出来ることがあるのではないかと模索していました。

その模索から、異世代が集うことのできるしくみ作りについて、昭島市の子育て支援課に相談に行った折、当時の課長は非常に共感を持って受入れてくれ、補助金について該当するものがあるか探してみるといった提案をしてくれました。

次に、商店会に異世代が集える場所を創設する着想について、話を持ちかけました。中には「子どもの声がうるさいのは困る」という意見も根強くありましたが、シャッターが次々と下りる中、期待を寄せているとの回答をもらい、

その上地域の居場所を創設する着想がうわさで広まり地域の高齢者から早く開設してほしいといった声が多く寄せられました。そして、子どもの声に反対している商店の説得にあたってくれました。

 

ところが、共感を寄せてくれていた子育て支援課に大幅な人事異動の波がおしよせ、新体制が整えられた子育て支援課から、今後は、待機児解消に向けたもの以外の補助はしないと断言されてしまいました。

しかも、高齢者を含む支援は児童福祉分野ではないと指摘も受け、全てが否定され白紙に戻った状態となりました。

委託費も助成金も望めないまま創設に踏み切っていいものかどうか、かなり悩みましたが、地域からの期待する声とニーズに支えられ、思い切って赤字覚悟で開設することにしました。

 

「地域ふれあい館」存続の工夫

①資金不足・人手不足の工夫

公的な補助金がのぞめず、独自の事業として成立させていくためには、資金不足を補う工夫が必要です。当然専属の人材等は雇えないわけですから、人手も不足です。

これらを補うために思いついたのが、出前保育のあり方の工夫です。クラス或いはグループ単位で地域に出向けば子どもと共に保育士も動くわけですから、ここに地域と関わる有効な人材が生まれます。

 

出前保育で保育の現場を動かし人材の工夫をしています

 

②多様な利用者のニーズに応える工夫

次に、当法人はつどいの広場事業を委託されていますが、そこにも課題がありました。

つどいの広場は親子が集う無料解放の場で、その意図には、子育て家庭の孤立予防として子育てサークル支援も含まれています。

ところが現場では、悩んでいる親子ほど子育てサークルにも入れず、子育てサークルの団体が来ると逆に「また今度来ます」と言って帰ってしまう現状です。

支援を要する親子こそ利用でき、気軽に相談できる場の提供が必要でした。また、高齢者を含む異世代交流といっても、ただ単に同じ場所に居て楽しめるわけではありません。

特に孤独な高齢者ほど「子どもの声は苦手」と公言する傾向にありました。そこで思い付いたのが、利用者が利用層及び時間帯を選べるようなプログラム設定の工夫です。

まず、一日を大きく3つのくくりに分けました。午前中は、子育て親子が子ども中心のプログラム、次に午後の3時頃までは、高齢者を含み親子連れでも利用できるプログラム、夕方からは、学童の学習支援中心のプログラム設定といったすみ分けです。

いずれの時間帯も利用可能ですが、利用者が利用したい時間帯や利用層を選ぶチャンスも提供することになります。

 

保育園の1歳児クラスと、地域の1歳児前後の親子が集い一緒にリズム遊び

 

保育士と遊ぶ地域の子ども。

「家ではできないマットや鉄棒遊びを、教わりながらできるのがいい」と保護

 

保育園と同じおやつも提供します

 

 

③地域に受入れられる工夫

そもそも社会福祉法人・社会福祉施設の成長は、特定の利用者のみならず、地域に受入れられ、かつ地域と共に成長する意識がなければ望めません。

そのためには地域における理解者を増やすことです。

そのための工夫が、地域とコミュニケーションをとる機会を作ること、法人・施設の活動をオープンにすることの2点です。一点目のコミュニケーションをとる機会の具体的なものとして、年長児イベントとして手作りクッキーをつくり、ありがとうのメッセージを添えて地域の1千を超える家庭に配布することや、紅白幕の設置等の商店会活動に職員が参加することがあげられます。

次に活動をオープンにするということについては、施設行事への招待ばかりではなく、活動している姿を全て見せていくことです。

特に「地域ふれあい館」施設改築の際、子どもの姿があまり見られないように壁を作る方向で助言されましたが、全面ガラス張りにこだわり、全てをオープンにしました。

このガラス張りの勇気がかなり成果をあげました。そして同時に忘れてはならないのが安全面です。出入り自由でガラス張りで無料だと、子ども達と触れ合わせるのに不安な人もかなりいました。

そのために導入したのが、ワンコインの登録料を利用者から頂くことです。

つまり、会館の約款にサインし登録し、バッチをつけた人のみが使用できるというものです。

これを導入してから酔っ払って暴れる人などの困った方が会館を利用しなくなった、すなわち本当に支援を必要とする人が利用するようになったのです。

 

 

 

「地域ふれあい館」創設の成果

こうした四苦八苦の末創設した「地域ふれあい館」活動の成果については、3点あります。まず、一点目は騒音苦情がなくなったことです。

次に「地域ふれあい館」は職員の老後のため、現利用者の老後の居場所づくりの提供であるといった位置づけにより、職員・利用者が参画意識を持って取組むようになったことがあげられます。

職員は現場で動く体力がなくなっても保育を語る力はあります。保護者も趣味や特技を生かして「地域ふれあい館」の利用者にも講師にもなれます。

そして、当法人が所属する日本子育て学会(*)などをはじめとする公的機関や地域に実践をオープンにすることが職員資質向上につながったことも、3点目の大きな成果と言えます。

今後は、シルバー人材の効果的な活用や人材発掘に取組むことが「地域ふれあい館」の発展につながるであろうと現在も課題解決へ向けて奮闘中です。

*「子育て研究:第5巻」に創設苦労話掲載

 

法人概要

  • (社福)ダビデ会
    1979年の創設以来、地域における子育てサークル活動の支援には36年の歴史がある。また、当法人は”見える化”に力を入れており、2009年に”保育の見える化”の取組みが日本教育新聞に掲載され、2010年日本生活科・総合的学習学会より「研究奨励賞」を受賞する。2011年に”経営の見える化”への取組みが、全社協の『特集』に掲載され、2013年創設の「地域ふれあい館」における”地域力の見える化”を含めた、”経営の見える化”への取組みが2015年東京メトロポリタン経営品質協議会(日本経営品質賞の地方版)より「ゴールド賞」を受賞する。
取材先
名称
(社福)ダビデ会
概要
(社福)ダビデ会
http://akishimanaomi.jp/
写真
ナオミ保育園外観
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