三菱商事株式会社
豊かな自然の中で受入れられ人とかかわる楽しさを体験する
掲載日:2017年12月11日
2016年9月号 連載

 

あらまし

  • 「母と子の自然教室」はひとり親家庭の母子を招待して実施する2泊3日のキャンププログラムで、三菱商事株式会社が社会貢献活動の一環として実施しています。新潟県の豊かな里山がある村で、社員ボランティアや民宿の方と、山歩きや水遊びなど自然の中でおもいきり遊ぶ体験は、人とかかわる楽しさを知り、自分の存在を受けとめてもらう経験にもつながっています。

 

新潟県の豊かな里山がある村では、毎年、「母と子の自然教室」に合わせてひまわりの花をきれいに咲かせ、ひとり親家庭の母子を迎えています。

 

母と子の時間も大切に―子どもの成長や新たな一面に気づく

自然教室は、「都会の生活では味わうことのできない豊かな自然の中での遊びや生活を通して、人と人そして母と子の心の触れ合いや自然の素晴らしさを肌で感じて欲しい」という願いから生まれた三菱商事の社会貢献活動の一つで、今年43年目を迎えます。各期、ひとり親世帯の母子(子どもは小学生に限る)を約50世帯招待しています。また、東京YMCAのキャンプディレクターや社会福祉協議会、福祉施設職員等が相談員として参加しています。

 

相談員として初めて自然教室に参加した母子生活支援施設「ハイツ尾竹」職員の深谷真人さんは、「見るもの体験するもの全てが良い経験。道には蛍がいて、竹を割って水鉄砲をつくり、思う存分水遊びする。子どもも大人も良い表情をしている」と普段出来ない経験を楽しむ参加者の姿が印象的だと話します。フルタイムで働く母親も多く、普段は仕事と家事で忙しい毎日ですが、自然教室では、母と子で同じ体験をし、久しぶりにゆっくり過ごす時間が持てています。また、苦手な食材をみんなと同じ食卓で頑張って食べる姿、徐々に親から離れて子ども同士の輪の中に入っていく姿など、子どもの成長を感じたり、新たな一面に気づく機会にもなっています。過去の参加者からは、「母親同士でずっと身の上話をし合った。それまでは子どもやまわりに対して負い目を感じていた。でも他の母親たちのたくましさをみてものすごく勇気をもらった」との声がありました。「ひとり親家庭だから」と他の家庭との違いを意識するのではなく、ありのままの自分を見せられ、想いを共有できる時間にもなっています。

 

キャンプネーム“ふっかー”こと

「ハイツ尾竹」職員の深谷真人さん

 

社員が汗を流し、継続する活動

自然教室が開始されたのは、昭和49年。「企業は社会の一員として社会貢献事業を積極的に行うべきで、そのための経費は企業が社会で存続するための社会的経費(ソーシャルコスト)として、利益を得る前に負担しなければならない」との認識のもと、昭和48年に三菱商事に「社会環境室」が設立されました。社員が「自発的に参加して汗を流すとともに、継続して活動に取組むこと」を重視しています。

 

自然教室に参加した社員からは、「お母さんたちからは人間力を、子どもたちからは純粋さをもらった。人とのかかわりがこんなにパワーを生むなんて」、「『もっと楽しませられる』との思いから参加し続けている。特に子どもたちには『こんなに楽しいことがあるんだ』と思ってもらいたい」などの声が聞かれます。毎年、7~8月の実施にむけて、4月上旬にグループ会社を含めた全社員から約40名のボランティアを募ります。所属や役職、年齢はさまざまですが、参加経験のある上司や同僚の勧めが参加のきっかけになったという方が多くいます。

 

母親が集い、郷土料理の試食や、ひとり親に関する制度の情報提供も受けられる

 

人が喜んでくれる喜び

社員ボランティアは、本番を迎えるまでに4~5回程度のミーティングを行います。その中には、1泊2日の現地トレーニングや、障害児やDVについての講習会も含まれます。

今年初めて参加した”かしゅー“さんは、中学から大学まで子どもに関わるボランティアをしてきた経験があり、社会人になっても続けたいと思っていたところ、OJT担当者から自然教室を薦められました。自然教室がきっかけで、子どもが将来自立できるための支援の必要性を感じ、「母子生活支援施設利用者の現状に関心をもち理解を深めることが必要」と言います。2回目の参加となる”すーも“さんは、所属先の上司の推薦で、子どもと触れ合えることに関心を持ち参加しました。「子どもやお母さんだけでなく、裏方の仕事や新人のインストラクターを助けたいと思い2度目の参加を決めた。自然教室がきっかけで母子家庭の生活状況に関心を持った」と言います。そして、4回目の参加となる”さらいぇ“さんは、以前から自然教室のことは認識していましたが、「自ら参加しようと思ったのは、上司の薦めと東日本大震災がきっかけだった」と言います。あるボランティアスタッフの「人に何かを行い、その人が喜んでくれることに喜びを感じる」という言葉に大いに賛同し継続的に参加しています。また、自然教室には障害のある子どもも参加することから関連書籍を読んだ際に、介護福祉士の現状を知る機会がありました。障害や高齢者福祉分野の現在の課題など、社会的課題への関心も拡がっています。

 

初めて参加した“かしゅー”さん

2回目の参加となる“すーも”さん

4回目の参加となる“さらいぇ”さん

 

 

人とかかわる楽しさを日常にも活かす

2泊3日を終えて帰るころには、民宿のお父さん、お母さんとの別れを惜しむ姿も見られます。30年以上にわたってたくさんの母子を受入れてきた民宿では、自然にその存在を受とめてくれます。短い期間ではありますが、普段の日常生活から離れた場で、さまざまな立場の方と沢山の経験や感情を共有し、母も子も自分らしく過ごします。

 

自然教室への参加は、各世帯一回なので毎年一期一会の関係です。しかし、「私は○○旅館で、リーダーは□□だったよ」と社員ボランティアを含め、同じ期間同じ民宿で生活した仲間同士の絆は、それぞれが日常に戻った後も続きます。連絡を取り合い、「一緒にバーベキューをした」、「子ども達だけで会った」などの報告をもらうこともあります。また、社員ボランティアにも声がかかり、一緒に楽しむこともあります。

 

同じ状況の仲間とつながることで得られるエネルギー、そして、自然教室で経験する人とかかわる楽しさ、ありのままの自分を受けとめてもらう経験は、今後のさまざまな人間関係の基礎となる他者への信頼感にもつながります。母と子の自然教室では、”もっと楽しませたい“と全力で楽しませてくれる社員ボランティアの熱い思いに支えられ、その瞬間の親子の笑顔だけでなく、これから先、それぞれが日常に戻った後に必要な原動力が得られる機会になっているのかもしれません。

 

子ども同士の関係も深まります

 

大人も子どもも思いきり水遊び

 

法人概要

  • 三菱商事株式会社 社会貢献活動「母と子の自然教室」
  • 三菱商事の社会貢献事業の一つとして、昭和49年(1974年)に開始。
    東京・神奈川・千葉・埼玉のひとり親家庭の母親と子どもを招待して行う2泊3日×2期のプログラム。子どもには大自然の中で思いきり遊んでもらい、母親同士のネットワークづくりやひとり親家庭ゆえの悩みや課題を専門家に相談したりすることを目的としている。お互いの距離を縮めたいという思いから社員ボランティアも参加者もお互いをキャンプネームで呼び合う。

 

→関連記事 約30年間受入れ続けて 

取材先
名称
三菱商事株式会社
概要
三菱商事株式会社 社会貢献活動「母と子の自然教室」
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/
タグ
関連特設ページ