(社福)豊島区民社会福祉協議会 大竹 宏和さん
大切なのは、地域にある課題を住民に伝えていくこと
掲載日:2017年11月29日
2016年10月号 連載

(社福)豊島区民社会福祉協議会 地域相談支援課 課長 大竹 宏和さん

 

あらまし

  • 豊島区には129の町会・自治会があり加入率は平均52.7%です。しかし、餅つき大会等のイベントを開催すると多くの人が参加するなど、町会・自治会の加入率と地域のつながりはイコールではありません。

    豊島区民社協では、CSW(*)の配置、地域福祉サポーターの募集等を通じて地域の課題を把握し対応していくだけでなく、地域課題を住民に伝え、地域力・住民力の発揮につなげることを意識した取組みが行われています。

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    (*)CSW(コミュニティソーシャルワーカー)

    地域において生活上の課題を抱える個人や家族に対する個別支援と、人々が暮らす生活環境の整備や住民の組織化等の地域支援をチームアプローチによって統合的に展開する実践。個別支援から地域の中で共通する課題を見つけ、地域住民や関係機関等との協働により課題解決に向けた新たなしくみづくり(地域支援)を行います。

 

「ホームレス団体の炊き出しに子どもが並んでいる」と民生児童委員から社協に情報が寄せられました。平成21年のことでした。「子どもの貧困がこんなにも広がっているなんて」と、民生児童委員も衝撃を受けていました。

 

豊島区民社協では、この情報提供をきっかけに関係機関と協力し、学校の長期休みに「子ども祭り」を開催し相談コーナーを設置したり、平成22年からは主に小学生を対象にした学習支援活動「ちゅうりっぷ学習会」、「にじいろ学習会」を開始しました。また、実践と並行して地域に支援の必要な子どもがいることを、意識して地域に伝えてきました。学習支援の場は今年で開始7年目となります。現在では、社協で実施している3か所以外にも取組みが拡がり、区内で計11か所の学習支援の場が開設されています。住民が地域課題に関心を持ったことが活動の拡がりにつながっているのではないかと思います。大切なのは課題に気づいた後に、自分たちだけで対応するのではなく、把握した地域課題を地域の中にきちんと伝えていくことだと思っています。

主に小学生を対象にした学習支援活動

 

地域の関心を高めるためには

社協が把握した地域課題を住民に伝え、関心をもってもらうために始めた活動の一つが「しゃべり場」です。全世代の地域コミュニティの拠点「区民ひろば」を活用し、区民ひろば運営協議会と連携し行っています。地域課題は個別に存在しているのではなく、同じ一つの地域という大きな器の中に、複数の課題が時には複雑に絡み合って存在しています。しゃべり場は、結論を出すための話し合いの場ではなく、顔を合わせたさまざまな話題のやり取りから、地域課題を知ることにつなげる場です。

 

しゃべり場の第一回目は「災害」をテーマにしました。東日本大震災という共通の経験から、災害は世代を超えて共通課題になりやすく、自分はこんな経験をした、こんな風に大変だったと会話が行き交います。豊島区民社協としても、被災地への職員派遣を経験したからこその話題提供や課題の投げかけができます。「災害時に心配してくれる人が近くにいなかったらどうするか?」と投げかけると、「そういえば、近所に一人暮らしの高齢者がいる。あの人はどうするのだろう」と、身近な課題にも目が向きます。

 

ある回のしゃべり場では、住民の関心から「遺産相続」をテーマにしたところ会場が満員になりました。税理士や司法書士にも協力いただき、遺言の書き方や相続に関して不安に感じていることなどを相談できる場にしました。まずは、住民の関心があることから場をつくり、その機会の中で、社協からも発信していこうと取組んでいます。

しゃべり場「災害時の防災用具の体験」

 

しゃべり場「災害を考える」

 

身近に感じてもらうための工夫

伝える際の工夫としては、地域の方に自分の身近な課題と感じてもらうことを意識しています。「区内でこのような課題があります」と入ると、「大変なところもあるのね。でもうちの地域は違うから」という反応になる場合があります。しかし、「東京都では」や「被災地では」と、身近な地域とは少し距離をもたせた説明をすると、逆に関心をもって聞いてくれます。更に、「自分の地域にも同じ課題があるかもしれない」と、自分の身近な場所に目を向け気づき始めてくれることがあります。

 

地域の中で話す機会をいただければ、出かけてその機会を存分に活かします。一方的に伝えたいことを発信するのではなく、相手が関心をもっている話を話し合う中で、社協からも新たな話題提供をさせてもらう。他人の土俵に乗ることを大切にしています。お互いが情報発信しあい、共感から理解が深まり、地域力・住民力の高まりにつながればと考えています。

 

CSWと地域福祉サポーター

豊島区民社協では、平成21年度より豊島区のモデル事業としてコミュニティソーシャルワーク事業(CSW事業)を開始しました。CSWは、区民ひろば8か所に配置され、主に個別相談支援、地域の実態把握、地域支援活動の3つを基本とし活動していています。全ての人に対応できるかという点では、CSWも完璧ではなく悩むことも多いです。介入拒否をされる方ももちろんいます。関係機関につないだ後に「相談してみたけれど話をよく聞いてくれなかった」と戻ってくる方もいます。そのようなときは、とことん対応します。どこまで深く関わるか見計らいながらも、寄り添い支援することを大切にしています。そうでないと、個別事例の要因を探れず、次に同様の事例が出てきた時の学びにつながらないからです。他機関につないだ際も、その事例を主に関わる機関と認識しながら、丸投げにせず一緒にかかわることを大切にしています。自分たちができることが役割です。特に多問題がある事例の場合は、最初の段階では役割は他機関と重複していくものだと思っています。重複する中で、お互いの考え方あり方も含めて、目の前の課題を一緒に考え、一緒に対応していくことで解決力を高めています。

 

また、CSW等と連携する存在として住民による「地域福祉サポーター」を募っています。豊島区は「池袋」などがある商業地域でもあるため、日中豊島区で過ごす方も地域を見守る重要な存在です。地域福祉サポーターは、区内在住、在学、在勤の18歳以上の方を対象としています。通勤途中の駅周辺で気になる方、または接客の仕事をしている最中に出会った気になる方や異変に気づいた方についても社協に連絡が入ります。

 

「支える側」「支えられる側」というそれぞれの枠で固定せずに全ての人から力をもらいたいという思いがあり、子育て中の方も、高齢者も障がいがある方も全ての方を担い手の対象としています。地域福祉サポーター向けの学習会では、自然と仲間として存在します。そこでの会話から、お互いの立場や課題の理解が深まることもたくさんあります。

改正介護保険法、社会福祉法人による地域公益活動の推進においても、住民理解や地域力・住民力は重要な視点になっています。

 

取材先
名称
(社福)豊島区民社会福祉協議会 大竹 宏和さん
概要
(社福)豊島区民社会福祉協議会
http://toshima-shakyo.or.jp/
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