(社福)至誠学舎立川、(社福)立川市社会福祉協議会
頼りあい・支えあえる福祉コミュニティーづくり
掲載日:2017年12月12日
2015年12月号 TOPICS

シンポジウムの様子

 

■あらまし

  • 11月は児童虐待防止推進月間です。キャンペーンやシンポジウムなど様々な普及啓発活動が全国で行われました。

 

平成27年11月13日に、社会福祉法人至誠学舎立川児童事業本部と、立川市社会福祉協議会が共催した第12回児童虐待防止推進月間セミナー「大人も若者も子どもも頼りあい・支えあえる福祉コミュニティーづくり~子ども・若者支援ネットワークづくりに向けて~」が、開催されました。悩みや課題を抱えた家庭を地域につなげ、地域で支えていくために、地域でできることを参加者と共に考える機会にしたいという趣旨のもと、大人や子ども、若者の支援に取組む方がシンポジストとなり、講演を行いました。地域のボランティア団体や、民生児童委員、一般市民、福祉を学ぶ学生などが参加しました。

 

子どもたちに学習の機会を保障するために

初めに基調講演として、法政大学名誉教授で社会福祉法人至誠学舎立川顧問の高橋利一さんが登壇しました。高橋さんは、児童虐待通告が増加する現状とその内容や防止の取組みについて説明しました。そして、児童養護施設の子どもたちの大学進学について、「児童養護施設の子どもたちがやっと大学に入学しても、4年間通い続けるための支援が足りない。切れ目なく教育の機会を均等に提供できるような生活支援や、学費の応援が必要。社会的養護とは、社会みんなが親となり子どもたちを見ていくこと」と指摘しました。

 

家族再統合の支援を通して

招待して、子どもの成長を一緒に喜び合う中で、家族内の力関係を適切な状態に戻していきます。他にも、カウンセリングの充実や、親の持っている力を引き出す支援などをしています。高橋誠一郎さんは、「施設を地域の社会的養護の拠点にしていきたい。地域と一緒に家庭復帰後の家族支援を一緒に考え、家庭支援や地域支援を充実させていきたい」と話しました。

 

高校での「カフェ」の実践を通して

東京都立砂川高等学校通信制課程主幹教諭の田中正仁さんは、生徒たちにとって情報が極めて不足している状態にあると感じ、生徒の情報スキルを高め、人とのつながりを持ってもらいたいと考えていました。そこで、田中さんは、5分模擬授業やボランティアによる学習支援、フードバンク、心理専門家の家庭訪問による支援、地域学習教室開設などの取組みをはじめました。「砂川カフェing」では、コーヒーを飲みながら進路相談や、NPOなどの地域活動の情報提供を行ないます。しかし、なかなか生徒たちに来てもらえませんでした。サービスやシステムばかりつくっても、生徒たちが「ハードルが高い」と感じてしまえば、生徒たちは心を開いてくれないのです。取組みを通し、生徒たちは身近で心を許している人や信頼できる人を求めていることがわかりました。田中さんは、「生徒たちにとって、しくみづくりだけでなく、その利用ができるようになるためには、ハードルが低く心を許せるような相手の協力が必要」と指摘しました。

 

若者支援の現場を通して

認定NPO法人育て上げネットは、主に15歳以上の若者への就労支援を中心に若者のサポートを行っています。近隣で起きた虐待事件をきっかけに、子どもへの支援の必要性を痛感した若年支援事業部担当部長の井村良英さんは、「学校にも家にも居場所がない子が安心して学び、自分らしく過ごせるサードプレイスの役割も担っている。10月からは高校中退者等のための学習スペースもはじめた。今後は、学習スペースまで通うエネルギーのない若者に対する支援を考えているので、地域の方にも手伝っていただきたい」と協力を呼びかけました。

 

虐待かな?と思ったら・・・

シンポジウムのあとは、実際にあった虐待事例をもとに東社協が作成した小冊子『こんなことに気づいてあげて』を使い、ロールプレイを行いました。気になる家庭に対し「これって虐待なのでは?」と感じた時に、地域住民として何が出来るのかを考えました。

 

ロールプレイをする至誠学園職員の皆さん

 

地域でしかできないことがある

高橋誠一郎さんは「施設の子も地域住民。一緒に支えてほしい。施設の取組みや考えを発信しながら、地域の方と一緒にできることを考えていきたい。子どもたちと人のぬくもりを分かち合えるような方に是非手伝ってもらいたい」と話しました。田中さんは「今後、学校は、生徒たちにとってもっと身近な大人を求めていくだろう。以前、学校と音信不通になっていた子が地域のサッカークラブにいたことがあり、地域とのつながりを更に活かしたいと感じた。何度も声を掛けて人間関係を作れる人が生徒の心を開いていく」と語りました。

 

井村さんは「ロールプレイを見て、このように動いてくれる大人が増えるためにはどうしたらいいのだろうと考えさせられた。相談することは恥ずかしいことではないことを伝えてあげられたらよい」と話しました。最後に、立川市社協地域福祉コーディネーターの早川郁子さんが、「立川市で行っている学習支援や居場所づくり、フードバンク事業について、是非一緒に取組みませんか」と参加者へ協力を呼びかけました。

 

虐待や貧困問題が顕在化し増加している今日、専門機関や制度だけで解決するのではなく、地域の力が必要とされています。困りごとを抱えた人にとって、地域住民は、身近で信頼できる存在であることが望まれています。

取材先
名称
(社福)至誠学舎立川、(社福)立川市社会福祉協議会
概要
(社福)至誠学舎立川 児童事業本部
http://gakusha.org/group/jido)

(社福)立川市社会福祉協議会
http://www.tachikawa-shakyo.jp/
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