(社福)仁育会「青梅療育院」
特別養護老人ホーム「青梅療育院」平成28年台風9号による浸水被害 ―施設の被害状況と対応
掲載日:2017年12月22日
2016年10月号TOPICS

1階廊下の様子

 

■あらまし

  • 平成28年8月22日に関東地方に上陸した「台風9号」ならびに8月30日に東北地方に上陸した「台風10号」によって、関東、東北、北海道等を中心に、大きな被害がもたらされました。被害を受けられた方々に、謹んでお見舞い申し上げます。 台風9号による豪雨の影響で、都内で冠水の被害を受けた、社会福祉法人仁育会 介護老人福祉施設青梅療育院(定員100名)の被災状況と、復旧にむけた取組みについてお伝えします。

 

青梅市の特養「青梅療育院」の主な被災状況

施設が冠水するまでを振り返って、施設長の宇津木敏郎さんは、「雨が降ってきたと思ったら、バケツをひっくり返したような大雨になり、みるみるうちに玄関まで水が入ってきた」と話します。職員が急いで土のうを玄関に積み上げて対応しましたが、水は施設の内部にまで侵入し、降り始めから30分足らずで床上40センチにまで達しました。2時間後には完全に水が引いたものの、冠水によって1階の電気、冷暖房、通信機器等が使えなくなり、1階に設置してあった機械浴槽や洗濯機、厨房機材も壊れてしまいました。入浴は清拭で代替し、洗濯は好意で代行を申し出てくれた近隣の施設にお願いしていましたが、9月初頭には復旧しました。しかし、厨房機材は被害が大きく、改装工事が必要となり、9月中旬まで食事を外食業者へ委託せざるを得ませんでした。また、事務所にあった書類も浸水の被害にあいました。

 

浸水した事務所の様子

 

 

人的被害はなかった

「何より幸いだったのは、利用者が全員無事だったこと」と事務長の伊東力さんは何度も強調しました。1階には居住スペースがなく、利用者は施設の浸水前に昼食を終えて2、3階の居住スペースに戻っていたため、全員が無事でした。また、職員にも被害はありませんでした。2、3階は電気、冷暖房等の設備に被害がなかったため、利用者に別の施設に避難してもらわずに済み、精神的な負担も少なかったと言います。

 

宇津木さんは、「浸水が起こったのが日中で、しかも昼食をちょうど終えたころに雨が強まってきたから良かったが、もし夜間に発生したり、多くの利用者が1階で過ごしている時間帯だったらと想像すると、本当に恐ろしい。この地域は平成10年にも同様の豪雨を経験したが、その時は玄関までの浸水だった。地震や火災に関する防災マニュアルは作成して、消火訓練等も行っていたが、水害は想定していなかった」と話しました。

 

復旧への取組み

この被災を受けて、夜勤明けや公休の職員も含めて、総出で泥かき等の施設の復旧作業にあたりました。伊東さんは、「泊まり込みで作業をしているところに、近隣の福祉施設の職員が手伝いに来てくれた時は本当にありがたかった。これは平常時のつながりがあるからこそだと思う」と話しました。また、東京都高齢者福祉施設協議会 青梅ブロックや、東京ボランティア・市民活動センター等を通じた情報発信や呼びかけにより、約20名のボランティアが復旧作業に加わりました。

 

今後の災害に備えて

被災後、青梅ブロックからは被害状況を問うメールがブロック内の各施設宛に来ていましたが、青梅療育院のパソコンは冠水の被害で使うことが出来ず、数日後に近隣施設の職員から聞いてはじめて知ったと言います。「被災時に通常の連絡方法が使えるとは限らない。いつ、どうやって、どこに被災したことを知らせればよいのか、改めて考えさせられた。施設でもマニュアルの見直しを検討しはじめている」と伊東さんは話します。宇津木さんは、「今回、多くの近隣施設やボランティアに助けてもらった。地域の施設等が今後災害に見舞われた際には、駆けつけて今回の恩返しをしたい」と話しました。

 

自然災害の発生自体を防ぐことは出来ません。しかし、日ごろからの防災の取組みや、地域住民・団体との連携によって、被害を最小限に留めることは出来ます。さまざまな災害に備えた継続的な取組みが、各福祉施設に求められています。

 

取材先
名称
(社福)仁育会「青梅療育院」
概要
(社福)仁育会「青梅療育院」
http://jiniku.or.jp/
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