左から
新宿区社協 地域活動支援課地区支援担当主事 粟飯原由貴さん
地域活動支援課担当課長 長谷川真也さん
法人経営課主任 出店富美さん
地域活動支援課地区支援担当主事 川野実夏さん
あらまし
- コロナ禍で多くの地域活動が停止した一方、コロナ禍に地域への関心が高まったことで、新たな活動として始まった食支援などへ参加する企業も見られました。コロナ禍をきっかけにつながった企業と、今後もつながり続けることが望まれますが、以前から、企業との連携については、単発の取組みではなく、活動に継続性を持たせることが課題となっていました。また、活動の幅を広げていくためにも、地域の中で、企業と社会福祉法人など多様な主体がつながることも重要です。今回は、長く企業の地域活動を支援してきた新宿区社協の取組みより、「新宿CSRネットワーク」と「新宿区内社会福祉法人連絡会」の活動をご紹介します。
「新宿CSRネットワーク」の活動
前身である「新宿企業ボランティア連絡会」は、区内の企業からの「地域貢献をしたい」という相談が発端で、平成9年度に発足準備委員会を設置し、翌年度に設立しました。区内のイベントへの参加、情報交換会や勉強会等を行ってきたほか、平成18年度から始まった「打ち水大作戦」は、地域と企業が一緒になって、区内のホテル前で夏の暑さを和らげる打ち水を行う取組みですが、コロナ前の令和元年度まで14年間毎年実施してきました。
部会やワーキンググループを立ち上げて活動していた時期もあります。規約をつくり、企業が参加しやすいように環境を整備し、「新宿CSRネットワーク(以下、CSR)」と改称したのは平成24年度のことです。東日本大震災の被災者が新宿区内に避難してきた時期で、避難者のサロン運営にも協力をしました。また、平成25年度には新宿NPO協働推進センターが立ち上がったこともあり、NPOとの交流も始まりました。企業によって参加への考え方がさまざまであったことから、平成30年度に加入企業にCSRの活動についてヒアリングをし、積極的な活動意思を持っている企業で今のネットワークの形をつくりました。企業が主体的に活動することを大事にしており、現在は年4回の定例会と地域イベントへの参加、環境整備活動(ごみゼロデー、年末クリーン大作戦)、特別支援学校との交流、社会福祉施設の訪問などを行っています。
リーフレットも参加企業が作成しています。
「新宿CSRネットワーク」と「新宿区内社会福祉法人連絡会」の連携
新宿区内社会福祉法人連絡会(以下、社福連)は、平成29年9月に設立しました。社福連では、多様性理解を目的とした福祉教育「ダイバーシティウォールパズルアート」や食品配付会、会員法人の新人・中堅職員向けの「オンラインサロン」などを実施してきました。地域のイベント「ダイバーシティパークin新宿」ではCSRが実施したスタンプラリーに社福連の加盟法人も参加しました。コロナ禍でも工夫しながら活動を続けており、食品配付会やオンラインサロンは、コロナ禍だからこそ始まった取組みでもあります。
社福連設立当初から、社会福祉法人だけで地域公益活動を行うのではなく、多様な主体とつながったほうがいいと考えており、積極的にCSRとの連携を進めてきました。CSRの定例会を社会福祉法人の会議室で開催して、施設見学をしたり、一緒にボッチャ大会を開催して交流も深めています。会場提供や施設見学だけではなく、社福連の法人もオブザーバーとして参加し、企業の参加者に向けて話をすることもあります。社福連のみなさまの協力をいただき、企業の方々にさまざまな福祉の分野を知ってもらえるようにしています。連携して地域活動を行っていくためには、まず、企業と社会福祉法人がお互いのことを知る取組みが大事だと考えています。
多様な主体が連携した3つの取組み
「新宿アールブリュット企業展」(企業と社会福祉法人の連携)
CSRと社福連がつながったことで始まったのが、社福連に加盟する社会福祉法人の施設利用者が作った作品を企業のオフィスに展示する取組み「新宿アールブリュット企業展」です。高齢者、障害者、児童など分野を問わず、利用者の作品を多くの人に見てもらうことができます。新宿区社協に寄せられた「アート作品の力をオフィスの環境改善や施設利用者の仕事にもつなげられないかな」という企業のアイデアを社福連につなげたことで多くの作品が集まり、実現に至りました。初年度の令和4年度は、1社で実施した取組みですが、今後は参加企業が増え、施設利用者の活躍の場が広がっていくことを期待しています。
令和5年度「新宿アールブリュット企業展」
「特別支援学校と企業の交流会」(企業と学校の連携)
CSRでは、特別支援学校の児童・生徒に企業の仕事を知ってもらうとともに、企業側が障害への理解を深める機会として、新宿区立新宿養護学校(肢体不自由の児童・生徒のための特別支援学校)の児童・生徒と企業の交流会を実施しています。コロナ禍で学校外での体験が難しい時期だからこそ、さまざまな人と交流させたいという学校からの希望で始まった取組みです。年に3回の手紙交換と、対面交流を1回行っています。コロナ禍で中止になった社会科見学の代わりに、社員がタブレットで社内を見せながら企業見学を実施したり、ZOOMで企業の海外支社とつながって外国の方と通訳付きで話をするなど、コロナ禍で広まったオンラインの良さを活かすこともできました。オンライン企業見学を実施した印刷会社では、事前に児童・生徒の名刺を学校に送っておき、当日にオンラインで現物を手にしながら、障害者雇用で働いている当事者の話を聞けるようにしました。
「食品配付会」(地域の多様な主体の連携)
新宿区社協では、コロナ禍で経済的に困窮している方の相談が増えたことから、食支援の必要性を感じ、令和3年度から食品配付会を実施しています。令和4年度からは社福連が主催となり、子育て世帯を対象に、食品を渡すとともに当日は相談にも対応する取組みです。CSR、社福連のほか、民生児童委員や町会・自治会にも協力を依頼し、地域の多様な活動者が関わって実施しています。配付会の開催や食品寄附の周知をはじめ、食品を集める拠点、配付会の事前準備、当日の運営、相談対応などさまざまな形で地域の力が活かされた事業です。
今後の展望
特別支援学校と企業の交流会は、新宿区社協の地区支援担当に学校から相談が入り、企業側も子どもに対する活動をしたいと思っていたことから実現しました。新宿区社協には区内9つのエリアをそれぞれ担当する地区支援担当職員がいます。地区支援担当職員が地域のイベントや民生委員・児童委員、町会・自治会の定例会に出席するなど、地域住民や地域の活動団体と関係をつくってきたことで、新宿区社協には地域からさまざまな相談が寄せられます。学校と企業をスムーズにつなぐことができたのは、地区支援担当の取組みがあったからだと言います。社福連を担当している法人経営課主任の出店富美さんは、社福連もCSRも区全域の活動だけでなく、小地域での活動を展開していきたいと考えています。地区支援担当には小地域の情報が集約されやすいので、新たな地域課題の発見ができると期待を寄せています。
令和4年度に社福連担当と地区支援担当が一緒に社会福祉法人にヒアリングしたところ、多くの法人に地域公益活動をやりたい、専門職の強みを活かしたいという思いがありました。社会福祉法人も企業も単独では実施が難しいことでも、社福連やCSRのネットワークであれば取り組めることもあります。地域活動支援課担当課長の長谷川真也さんは、CSRや社福連の活動を企業や社会福祉法人の中で理解してもらい、気持ち良く・楽しく参加してもらえる活動を作っていきたいと、ご本人も楽しそうに語っていました。
https://www.shinjuku-shakyo.jp/