渋谷区では、令和5年度から「重層的支援体制整備事業」を開始。同時期に本格実施を始めた他の自治体とは異なり、「移行準備事業」を経ず本格実施に入っています。社協には平成28年度に生活支援コーディネーターを2名配置していますが、令和4年度に生活支援コーディネーター4名と地域福祉コーディネーター4名へ増員しています。
渋谷区社協の「強み」の一つは、高齢、障がい、子育て支援の各分野の相談援助事業を地域の拠点で担ってきた実績を持つことです。平成30年度からの社協の『第2期地域福祉活動計画』では、3つのエリアで地域福祉部門と事業部門の社協職員がチームを組む「地区担当制」を試行しましたが、残念ながらコロナ禍に入りその取組みは道半ばに途絶えました。とはいえ、そこでの気づきは新たに配置された地域福祉コーディネーターと社協内の各部門との連携に活かされることが期待されます。また、ボランティアセンターやこどもテーブル事業でも分野の垣根を越えた多世代のつながりを意識した取組みがこれまでにも行われてきています。
渋谷区社協には前年度の地域福祉コーディネーターと生活支援コーディネーターを合わせて8名から令和5年度は13名の地域福祉コーディネーター(全員が生活支援コーディネーターを兼務)が配置され、4つの日常生活圏域に3名ずつを配置するとともに、全体を統括する1名が配置されました。地域福祉コーディネーターは既存の相談支援機関による包括的な相談支援と連携しつつ、①福祉なんでも相談窓口、②①の分室、③区内巡回の地域相談を担っています。③では民生児童委員と連携して取り組んでいます。
そして、令和5年11 月には渋谷区地域共生サポートセンター「結(ゆい)・しぶや」がオープンし、地域福祉コーディネーターはここでの相談や、参加支援の取組みをNPOのコミュニティマネジャーと連携しながら担います。今後、「ちがいをちからに変える街」の渋谷らしい地域づくりに取り組む支援者たちを支える拠点となることが期待されます。
渋谷区社会福祉協議会 地域相談支援係 地域福祉コーディネーター(東部・西部)
濵野弓子さん、係長・内山江里子さん、松本康宏さん、
松本摂子さん、成田紗衣さん
Ⅰ 渋谷区社協がこれまでに取り組んできた地域福祉活動
1 3つの重点事項を定めた平成 25 年度からの『第1期地域福祉活動計画』
渋谷区社協では、かつて平成14年度から16年度までの3ヵ年を計画期間とする『渋谷区地域福祉活動計画』を策定しています。しかしながら、この計画は、計画年度終了後に継続した計画が策定されないままとなっていました。そこで平成25年度、改めて「きづきあい みとめあい ささえあい 共に生きるまち 渋谷」を基本理念とした『地域福祉活動計画(平成25年度~平成29年度)』を策定しました。その策定にあたっては、住民懇談会、団体懇談会を何度も実施し、住民の意見を反映することに努めました。その結果、同計画では、図のように「協働を進める地域福祉活動」として、「住民主体」を「活動の拠点」「生活課題への対応」に活かすことを柱に、公的な福祉サービスと地域の中で活動するボランティア、町会や民生児童委員等、関係機関・団体がネットワークを形成して生活課題への対応力を高める地域づくりがめざされていました。
図 「協働を進める地域福祉活動」
当時の渋谷区社協では、地域包括支援センター、子育て支援センター、障害者相談支援事業のそれぞれを地域に拠点を構えて運営し、さらに成年後見支援センター、障害者就労支援センター、精神障害者地域生活支援センターの運営にも取り組んでいました。そうしたことから、子どもから高齢者、障害者までの切れ目のない相談援助活動を社協の「強み」として活かしていくことが期待されました。そのため、同計画の3つの重点実施事項には、①相談援助体制の構築、②小地域福祉活動のあり方の研究、③災害時の地域支援体制づくりのためのネットワークの推進が位置づけられ、この3つは、現在の地域福祉コーディネーターやボランティアセンター、こどもテーブル事業の取組みへと発展してきています。
また、渋谷区は昭和48年に東京都児童会館の一室に、東京ボランティアセンターの前身となる「東京都ボランティアコーナー」が初めて設置された地でもあります。そうしたことから、しぶやボランティアセンターはその精神を受け継ぎ、区内の4ヵ所のボランティア室に職員であるスタッフとは別に地域の情報に詳しい地域住民によるボランティアアドバイザーを配置する取組みを行ってきました。地域に出向く拠点をもち、地域住民とともにボランティア活動の推進に取り組む姿勢です。
https://www.shibuyashakyo.or.jp/