北区くらしとしごと相談センター、(社福)北区社会福祉協議会
地域のネットワークを活かした生活困窮者自立支援の取組み
掲載日:2017年12月12日
2017年10月号 TOPICS

セミナーには40代の子育て世代を中心に定員を超える参加があった

 

■あらまし

  • 北区では、「北区くらしとしごと相談センター」において自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計相談支援事業を実施しています。センター運営を含む主な事業は北区社会福祉協議会が受託し、就労に係る部分のみ株式会社パソナが受託しています。北区社協では27年度に組織再編を行い、生活困窮者自立支援係を新設。生活困窮者自立支援事業と生活福祉資金貸付事業を同係の所管とし、一体的な相談支援体制を整えました。

 

平成28年度に本会が実施した「生活困窮者自立支援法における地域のネットワークの活用に関する区市アンケート」では、支援の入口(対象者の発見)と支援の出口(社会資源づくり)に課題があることや、地域のネットワークを活かした取組みがまだまだ不足している状況がうかがえました。そうしたなかでも、地域の実情に応じてすすめられているさまざまな取組みを紹介します。

 

北区では、「北区くらしとしごと相談センター」において自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計相談支援事業を実施しています。センター運営を含む主な事業は北区社会福祉協議会が受託し、就労に係る部分のみ株式会社パソナが受託しています。北区社協では27年度に組織再編を行い、生活困窮者自立支援係を新設。生活困窮者自立支援事業と生活福祉資金貸付事業を同係の所管とし、一体的な相談支援体制を整えました。

 

社協のつながりを活かした食料支援

近年、家庭で余っている米や缶詰などの食品を持ち寄り、必要とする人や施設に届ける「フードドライブ」というボランティア活動が広がっています。北区社協では主催する地域のお祭り「おちゃのこ祭祭」の開催に合わせてフードドライブを実施しています。全戸配布の社協広報紙やSNSのほか、区役所や民生児童委員など関係機関の協力を得て広報活動を行い、その結果、28年度は280品目・ダンボール11箱分、29年度は312品目・7箱分の食料が地域住民から届けられました。

 

また、この取組みとは別に、以前から現金寄附をいただくなどつながりのあった地元のパチンコ店にはたらきかけ、景品の中で品質に問題はないけれどキズやへこみがあるため廃棄対象となっていた食料や飲料を、定期的に提供してもらえるようになりました。

 

こうして集まった食品は社協会長のお宅で預かってもらい、月に一回、職員が仕分けをしてセンターで保管しています。そして、来所者の相談内容や状況によって必要と思われる方には数日間しのげる分の食料を渡し、継続的支援が必要な場合にはフードバンクにつないでいます。賞味期限が近い食料が一定量ある場合には窓口に置いておき、相談者が帰りがけに自由に持ち帰れるようにしています。相談支援員の渡辺茂子さんは「寄附された食品をむだにしてはいけないので、物品管理を徹底している」と話します。

 

これまで物品管理は大きな課題でしたが、フードバンクを見学して管理方法のノウハウを学び、現在は商品コードとともに受領日や食品の分類、賞味期限等を1点ずつエクセルに入力し、廃棄を出さない工夫をしています。また、社協には日常的に寄附の問合せがあり、個人だけでなく施設や団体から大口寄附の申し出が届くこともあります。災害用備蓄品のアルファ米などはまとまった量があるため、区内の福祉施設や子ども食堂につないだり、学習支援事業の食事提供時に使用するなど、社協のネットワークを最大限に活かして善意をつないでいます。

 

主任相談員の上田文子さんは「『もったいない』という意識から食品寄附は住民の関心が高く、物は集まりやすい。一方で保管場所の確保や協力団体の開拓が課題」とし、「物品管理も社協職員だけでやっていくには限界があるが、やり方によっては中間就労の場にできるかもしれない。社会福祉法人のネットワークもあるので、可能性を探っていきたい」と話します。

 

地域の人との関わりを重視した学習支援

現在北区社協では、北区の委託事業として区内2か所で子どもの学習支援事業を実施しています。学習支援の目的は学力向上もさることながら、北区では学習支援の場を通じた地域づくりも重視しています。

 

上田さんは「子どもは地域の人と関わることで変化が出てくる。ちょっとしたことで『ありがとう』と言われたりすると、本人にがんばろうというエンジンが芽生えてくる。また、さまざまな世代の人と関わることで、多様なおとなと出会うことになる」とその意義を話します。こうした関わりを通して、子どもたちが自己肯定感を高めたり、学習に対する心構えを整えていくことを期待しています。また、社協による子ども支援事業として居場所づくりや子ども食堂の支援を行っていますが、今後は地域で活動している団体に呼びかけ、子どもの学習支援活動を広げていく予定です。

 

学習支援というと、住民は「自分たちに勉強は教えられないから」と引いてしまうことが多いため、いろいろな人との関わりを重視していることを伝え、立ち上げへの心理的なハードルを下げる工夫をしています。さらに近隣の大学に声をかけ、学生から勉強を教えてもらうだけではなく、中学生の時の悩みや大学進学を決めた理由など、さまざまな経験を子どもたちに話してもらう企画なども検討しています。

 

子どもたちが当面の学習に取組みながらも今後のことを考えるきっかけが得られるような、多様な人が集まる場づくりをめざしています。

 

取材先
名称
北区くらしとしごと相談センター、(社福)北区社会福祉協議会
概要
北区くらしとしごと相談センター
http://kitashakyo.or.jp/service/sodan/seikatsu_konkyusha/

(社福)北区社会福祉協議会
http://kitashakyo.or.jp/
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