茨木県常総市、NPOさぽーとセンターぴあ、(社福)南相馬市社会福祉協議会
続・災害時の要配慮者をめぐる福祉
掲載日:2018年1月25日
2017年2月号 社会福祉NOW

 

あらまし

  • 被災経験に基づく要配慮者支援の取組みの検討や、東京における災害時の要配慮者支援のあり方について考えます。

 

近年、全国各地でさまざまな災害が発生しています。そこでは、災害時に増大するニーズに対応していく中で、要配慮者への支援が必ずしも想定した通りに機能できないことも少なくありません。それは、避難行動において犠牲が出ることもあれば、震災関連死などの状況にもつながりかねないものです。地域において、要配慮者をどのように支えるのか、また、行政による対応だけではなく、要配慮者の支え手による支援体制のしくみづくりを地域においてどのように考えていくかも、必要な視点となります。

 

地域で声を掛け合い避難―茨城県常総市

鬼怒川の決壊等により市の3分の1にあたる約40平方キロメートルが浸水し、甚大な被害が生じた「平成27年9月関東・東北豪雨」。

 

常総市役所では、平成27年12月に「常総市水害対策検証委員会」を設置し、当時の市役所の対応等をふり返り、検証が行われています。発災時、特に市内東側の被害が深刻で、避難所が使用できなくなったり、氾濫により移動ができなくなるなどして、市役所をはじめ、避難所に指定されていない場所に避難者が集まるなどの混乱がありました。また、昭和61年に小貝川が氾濫した際は、市内に住宅等への被害があったものの、市街地までは水が来ませんでした。その経験が住民の油断を招き、多くの住民が自宅に取り残されてヘリコプターで救助されました。

 

そのような中でも、地域の助け合いの力が発揮されました。昔から住民同士のつながりが深い常総市だからこそ、障害のある方や高齢の方、避難せずに自宅に残っていた方に対しても、近くに住む家族や近隣住民が声をかけ、避難をすすめたり、一緒に避難所に避難するなど、どんな方にもどこかで誰かが声をかけ、関わりを持っていました。また、鬼怒川が決壊する前日の9月9日から、地域包括支援センターのケアマネジャーが、把握している在宅の要配慮者の家族や近所の方に連絡を入れて協力を求めたり、緊急ショートステイの利用を斡旋しました。鬼怒川決壊後も、地域包括支援センターの専門職チームで高齢者の安否確認を行いました。

 

常総市ではこの水害をきっかけに、検証報告書をまとめ、ハザードマップや避難所の見直し、関係機関と連携して行う共同点検、小中学校への防災教育、住民一人ひとりが自分の避難計画を作成するマイタイムラインプロジェクト、地域防災自主組織の結成支援など、地域住民の自助・共助の力を高めながら、水防災意識社会の再構築に向け、動き出しています

 

 

福祉避難所を機能させるための災害時要配慮者支援センター構想―福島県南相馬市

福島県南相馬市では、東日本大震災の際、速やかに避難できなかった障害児者や、避難したものの避難所での生活に対応できず自宅に戻り、とどまっている方がいました。その背景について、NPO法人さぽーとぴあ「デイサポートぴーなっつ」施設長の郡信子さんは「ストレスの多い環境で大声を出してしまうと迷惑がかかると思ったり、また、身体障害者の場合には、狭くてトイレに行くこともできないという環境上の問題のほか、そもそも避難所に移動する手段がなく、行くことができなかった人もいる」と話します。

 

そういった経験から震災後、障害児者が安心して生活できる避難所のあり方を関係者が検討し、平成28年3月末時点で市内32の福祉避難所のうち10か所が障害者施設となっています。

 

南相馬市社協地域福祉課長の佐藤清彦さんは、「障害のある人にも障害の特性に応じた避難先を選ぶ権利がある。だからこそ、指定とともに『要配慮者名簿の更新』と『避難の個別計画』を合わせてすすめていくことが必要になると思う」と福祉避難所のしくみだけで要配慮者支援が成り立つわけではないことを指摘します。平成26年、郡さんと佐藤さんを含む「南相馬市・飯舘村地域自立支援協議会の災害対策部会」の中で、福祉避難所の運営方式として「災害時要配慮者支援センター」の構想が出てきました。

 

災害時要配慮者支援センターは、要配慮者の避難支援および福祉避難所の運営支援を専門的に行うための組織で、一般避難所で要配慮者が過ごす環境をつくりつつ、そこでは難しい要配慮者を見立てて福祉避難所につなげることを想定しています。また、在宅にとどまっている要配慮者には、センターからアプローチしてニーズを収集するしくみを想定しています。

 

平成27年8月30日に実施した福島県総合防災訓練では「要配慮者避難救助訓練」を行い、そこで初めて「災害時要配慮者支援センター(仮称)」の立ち上げの訓練を実施しています。

 

左:NPO法人さぽーとセンターぴあ施設長 郡信子さん

右:南相馬市社協地域福祉課長 佐藤 清彦さん

 

東京の特性をふまえた要配慮者対策―「災害時における要配慮者のニーズと支援対策に関する区市町村アンケート」から

前述のように、東日本大震災をはじめとした被災地では、経験に基づく要配慮者支援の取組みが検討されています。こうした経験もふまえつつ、東京における災害時の要配

慮者支援のあり方を考えるため、東社協では平成28年9月に都内区市町村の要配慮者支援対策の所管課を対象にアンケートを実施しました(58区市町村が回答)。そこからは、次のような東京の特性がみえてきます。

『大都市東京の特性をふまえた災害時における要配慮者のニーズと支援対策に関する区市町村アンケート』調査結果は、東社協ホームページに掲載しています。

 

(1)東京における災害時の要配慮者リスクと供給体制の課題

アンケートでは、特に区部で8割近くの区が「一般に想定される災害時の要配慮者のリスクとは異なるリスクが存在する」と答えています。そのリスクとは、次の4つです。

 

<要配慮者のリスク>

1)ひとり暮らしや日中独居の高齢者が多い

2)在宅で生活する要配慮者そのものが多い

3)家族の力よりも福祉サービスを利用することで、在宅生活が成り立っている人が多い

4)地域とのつながりが薄い

 

そして、災害時に拡大する需要に対応する供給体制にも、次の3つの課題が指摘されています。

 

<供給体制の課題>

1)福祉施設の近隣に居住する職員が少なく、初動期に参集できる人材が不足する。

2)入所機能をもつ福祉施設が少なく、かつ満床で緊急の受け皿に限りがある。

3)在宅サービスの休止が想定され、その再開に時間を要するおそれがある。

 

ここから考えられる避難生活のイメージは、次ページの図のようになるおそれがあります。それは、これまでに経験したことのない状況を想定する必要があるかもしれません。

 

 

 

(2)災害時における要配慮者に対する支援体制の確保

災害時の要配慮者の需要の増大に対応する人的な体制の確保には、なかなか有効な手段が見出せません。

そうしたことから、できる限り供給力の低下を抑える「減災」の視点も重要になります。区と事業者が参加する検討会で『介護サービス事業者(居宅・通所・施設)BCPマニュアル作成ガイドライン(震災編)』を策定している区もあります。事業所の事業継続を区として支援する取組みです。

また、一般避難所で訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護を提供すべく、事業者連絡会と『災害時における被災要介護者等への援助に関する協定』を結んでいる区もあります。

 

(3)福祉避難所の整備状況

回答のあった区市町村が平成28年9月現在で整備している「福祉避難所」は1千299か所です。各区市町村は協力が得られる施設等との協定をすすめてきていますが、想定される需要の増大に「福祉避難所」だけで応えていくことは難しいと考えられます。その整備を着実にすすめつつも、「(休止する)事業所の早期再開」「福祉避難所以外による要配慮者支援の充実」「被災地外との広域避難の調整」が必要になります。

1千299か所の福祉避難所のうち、協定先は半数近くの46・7%が「高齢者福祉施設」で、「障害者福祉施設」が21・8%、「児童福祉施設」が10・5%でした。福祉避難所の対象者では、「高齢者」は高齢者福祉施設、「障害者」は障害者福祉施設としている区市町村が多くなっていますが、それ以外に「妊産婦・乳幼児」「知的障害」「発達障害」など、対象を特化した福祉避難所を確保する区市町村もみられました(表)。

 

 

「福祉避難所の設置・運営訓練」は32・8%の区市町村が実施しており、「マニュアル等の整備」も29・3%となっています。一方、区市町村と協定先の役割分担は、「福祉避難所の受入れ避難者の調整」が区市町村、「スペースの提供」が協定施設という分担までは明確になっていても、具体的な運営における役割分担はこれからという区市町村も少なくありません。災害時における福祉施設の人的な体制を考えると、スペースは提供できても人手までは出せないことも予想されます。そこで、平成28年熊本地震のように全国からの介護職員等をそこに充てたり、東日本大震災のいわき市のように、休止した事業所の専門職を再投入するなどのしくみをあらかじめ考えていくことも必要になると考えられます。

 

4)福祉避難所以外による要配慮者支援

東京の災害時における要配慮者支援を考えていく上で、福祉避難所以外による対策を充実していくことが重要になります。

 

そうした中、一般避難所の要配慮者への対応力の強化が考えられます。半数近くの41・4%の区市町村が「一般避難所における要配慮者受入れや支援対策のマニュアル・ガイドラインの作成・整備を支援している」と回答しています。一般避難所に「要配慮者スペース」を設けようとする区市町村も増えてきています。介助を必要とする人に限らず、情報を得ることに障害のある方、外国人の避難者への対応を考える取組みもみられました。また、一般避難所の生活が長期化した場合にADL等の悪化を防ぐための生活支援や健康管理の必要性も指摘されています。

 

そして、一般避難所における要配慮者支援には、専門的なスキルをもつNPO・NGOへの期待もみられました。ただし、一般避難所の運営にあたる地元の運営組織と外部からの支援が円滑に連携できるようにしていくことも必要といえます。

 

さらに、要配慮者一人ひとりに応じた避難行動と避難生活を考えていくことが必要です。要配慮者のうち事前に個人情報の関係機関への提供に同意した方について、民生児童委員または担当ケアマネジャー、障害者相談支援専門員が個別支援計画を作成する取組みをすすめている区もあります。

 

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災害時に要配慮者の命を守り、平時からの暮らしに続く災害時の避難生活を支え、そしてその先の暮らしを見据えた支援に福祉の力が最大限に発揮できることが求められます。そのためには、「災害に強い福祉」を多様な主体が力を合わせて東京に構築していかなければなりません。

取材先
名称
茨木県常総市、NPOさぽーとセンターぴあ、(社福)南相馬市社会福祉協議会
概要
茨城県常総市
http://www.city.joso.lg.jp/

NPO法人 さぽーとセンターぴあ「デイサポートぽーなっつ」

(社福)南相馬市社会福祉協議会
http://m-somashakyo.jp/
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