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東京の地域福祉コーディネーターが地域共生社会を切り拓く!
掲載日:2018年1月29日
2017年8月号 NOW

 

あらまし

  • いま、制度だけでは解決できない課題が地域にあります。また、課題の複雑化、深刻化も見られます。今号では、そうした地域の課題に対し、住民等とともに課題解決に取組み、資源開発や地域のしくみづくりをすすめてきた社協の「地域福祉コーディネーター」の役割・実践をふり返り地域共生社会の実現について考えます。※東社協では「地域福祉コーディネーター」という名称で総称していますが、「コミュニティソーシャルワーカー」等、様々な名称で同様の活動をしている職員も含みます。

 

小地域福祉活動を推進していくために

東社協では、「地域福祉コーディネーター」を「(1)個別支援、(2)小地域の生活支援のしくみづくり・地区社協等の基盤づくり、(3)小地域で解決できない課題を解決していくしくみづくりという三つの役割を担い、一定の小地域圏域にアウトリーチして、住民と協働して問題解決に取組む社協のコミュニティワーカー(専門職)」と定義し、配置・活動促進に取組んでいます。

 

29年2月には、これまでに地域福祉コーディネーターを配置し貴重な実践を積み重ねてきた文京区社協、豊島区民社協、練馬区社協、立川市社協、調布市社協、西東京市社協の6名の方の座談会を実施しました。座長は都内の地域福祉コーディネーターの養成・活動促進に長く関わってきたルーテル学院大学名誉教授の和田敏明さんにお願いし、各地域から活動をご紹介いただきながら、地域福祉コーディネーターの役割や実践の特徴、今後の展開などについて、話し合いました。

 

6社協の地域福祉コーディネーターの配置・活動の根拠には、各区市行政の「地域福祉計画」や社協等が中心に策定する「地域福祉活動計画」への位置づけがあります。これにより、住民に身近な地域でのつながりをつくる小地域福祉活動をすすめるとともに、多様な人や団体、機関を柔軟につなぎ、住民とともに解決に向かう地域福祉コーディネーターの必要性が施策として計画に位置づけられ、その配置と活動がすすんできた背景があります。

 

相談を受け止め地域に返す

練馬区社協の佐藤修男さんは、地域福祉コーディネーターの配置により地域にアウトリーチして住民と顔を合わせる機会が増えたといいます。そして、「これまでは窓口に行かなければ相談できないと思っていた方から『こんなことを話していいのかしら?』と、本人も相談と思っていない相談を受けることや、『心配な高齢者の人がいる』等の地域で気になっていることを聞くことも増えた」と言います。地域福祉コーディネーターの配置で住民の気づきや相談を受け止める機会が増え、さらに次の気づきや相談を促すことにつながっています。

 

西東京市社協の大賀晴江さんによると、西東京市では、地域福祉コーディネーターを「困りごとなんでも相談窓口」と位置づけ、相談の種別、内容に関わらず、あらゆる相談をワンストップで受け止めています。相談内容として最も多いのはまちづくりや地域活動に関することですが、高齢者や障害者の生活課題、引きこもり、子どもの問題、ごみ屋敷など生活環境、近隣トラブルまで、あらゆる相談が寄せられているそうです。ただし、こうした制度の狭間や一機関では対応しにくい複合的な課題について、必ずしもコーディネーターのみで解決までつなげることが本来の役割ではありません。住民や関係機関と課題を共有し、一緒に考えることで活動や課題解決に向けた動き、新たなしくみづくりがすすみ、それによりさらに地域のあり方が変化することに大きな意味があります。

 

コーディネーターを支える協力者、理解者(登録ボランティア等)を募集し新たな地域の人材発掘につなげている社協も複数あります。

 

誰もが地域の一員として

豊島区民社協では、個別支援においてその方のこれまでの生き方を理解した寄り添い支援、ソーシャルサポートネットワークを支える支援を行っています。例えば、ごみ屋敷に住む方の支援を行う際、近隣の方が反発や排除の気持ちを持っていることがあります。大竹宏和さんは「そうした気持ちを持つ方たちに、当事者の方のこれまでの生き方を伝えるなどして、共感を持ってもらうことがとても大切。共感し理解してもらえれば具体的な次の活動につながる」と言います。

 

調布市社協の前田雄太さんも「福祉サービスが入ることでかえって地域から孤立してしまうこともある。だから、課題を抱える方を一方的に利用者、サービスを受ける側にしない。必ずその方にも地域の中で役割やできることがあるので、住民の一員として一緒になって地域づくりをしていきたい」。そして、「住民の方と何をめざすのか、どういう地域に住みたいのか、プロセスやストーリーを共有し、一緒に考えていくことが一番大事だと思っている」と話します。

 

このように、地域福祉コーディネーターの活動の特徴は、目の前の当事者の問題を解決することだけでなく、その方の役割創出までめざすこと、また、専門職や専門機関だけで完結せず、あえて住民を巻き込み、住民の「当事者性」や「住民主体」を引き出していくことにあります。

 

個別支援と地域支援の両輪で

文京区社協の上村紗月さんは「個人の支援と、地域の中で住民が活動するしくみを支援する地域支援の役割とは両輪」だと言います。個別支援で解決までの過程を共有したり、住民の活動を丁寧に支えることで信頼を得て協力者が広がっていくそうです。こうした積み重ねで、地域福祉コーディネーターの役割が認知され、相談や活動が増えています。今は多様な活動づくりや居場所づくりに力を入れており、区内では、住民による空き家活用の居場所づくりの事例も複数生まれています。さらに、区内全域に支援を広げるべき課題に関しては、行政の施策や社協の事業としてのしくみの構築についても提案しています。

 

立川市社協の枝村珠衣さんは「地域福祉コーディネーターだからこそ領域を超えて関係する人を増やしていくことができる」と言います。一つの事例として、地域包括支援センター(以下、「包括」)で把握した「食べ物に困っている高齢者がいる」という相談と、ホームレス支援のNPO法人とをつなぎ、そこから市内で初めてのフードバンク立上げの動きにつながりました。さらにそのNPO法人の利用者に包括の登録ボランティアメンバーになっていただいたり、市内の社会福祉法人に課題を伝え、就労できる仕事をつくり出してもらったりと、ダイナミックに関係者をつないで、個人の支援や新たな地域内のしくみづくりにつなげています。こうした活動の広がりこそ、地域福祉コーディネーターの活動の醍醐味ともいえます。

 

連携と協働で地域を拓く

平成27年度から、第6期改正介護保険制度での生活支援体制整備事業における生活支援コーディネーターや、生活困窮者自立支援法上の自立相談支援事業の自立相談支援員等、地域福祉コーディネーターと役割が重なる、あるいは連携・協働する可能性の高い、地域をフィールドとした新たなコーディネーターや専門職が各所に配置されつつあります。また、各分野の専門機関にも、従来の機能や分野、対象を広げて地域に目を向けて活動する動きがあります。座談会では、座長の和田さんは、「役割が重なる部分があってもそのうちそれぞれの役割や協働の方向性が見えてくるので、今は地域をフィールドにする仲間が増えるという視点で、協力して活動するべきだ」と言います。

 

また現在、厚生労働省で検討がすすむ「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現に向けては、地域における住民主体の課題解決力を強化し、包括的な相談支援体制をつくるため、他人事を「我が事」に変えていく働きかけをする機能と、相談を「丸ごと」受け止める場の両方をつくること等がめざされています。こうした動きは、これまで社協、また地域福祉コーディネーターがめざしてきたことと一致します。これまでの活動が今後各地での具体的な実践において大いに活きてくると思われます。

 

今回の座談会の模様や6社協の活動の状況は、本会にて発行した冊子に収録しています。ぜひご一読下さい。

東京から『我が事・丸ごと』地域共生社会を切り拓く! 地域福祉コーディネーターの役割と実践 ~コーディネーター座談会から~

(平成29年7月18日発行)

取材先
名称
(社福)文京区社会福祉協議会、(社福)豊島区民社会福祉協議会、(社福)練馬区社会福祉協議会、(社福)立川市社会福祉協議会、(社福)調布市社会福祉協議会、(社福)西東京市社会福祉協議会
概要
(社福)文京区社会福祉協議会
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