福島県老人福祉施設協議会会津支部
避難指示により施設に戻れない特養入所者を緊急支援
掲載日:2017年12月15日
ブックレット番号:2 事例番号:24
福島県会津若松市/平成25年3月現在

東日本大震災では福島第一原発の事故により原発から半径20 ㎞圏内に避難指示が出されました。この圏内の高齢者福祉施設には6つの特別養護老人ホームと1つの養護施設がありました。いずれも避難指示とともに入所者・職員全員で施設を離れて避難所を転々とする事態となりました。

福島県老人福祉施設協議会(以下、「県老施協」)では、被害の少なかった会津支部の施設長や老施協事務局(福島県社会福祉協議会内)が、3月16 日から足りない支援物資を届け始めて入所者の命をつなぎ、翌17 日からは会津支部の27施設で被災施設入所者を受け入れ始めました。そして、3月22日までに174人にのぼる入所者を避難場所から助け出し、受入れを完了しています。

 

避難した施設に起きていたこと

避難指示により全入所者・職員がともに避難した避難生活は同一法人の施設で受け入れた1施設を除き、一般の避難者と同じ体育館で過ごしたり、高齢者のための施設ではない青少年自然の家、また、コンクリートの地面の倉庫で過ごしたり、凄惨な状況にありました。コンクリートの床にシート、ダンボールを敷き、その上に敷布団、毛布を敷いただけの場所で、暖房も仕切りや囲いもなく、着の身着のままの雑魚寝状態で着替えや排泄処理にも苦労する状態でした。また、高齢者の介護に欠かせない経管栄養や褥瘡マットなどもなく、数日経つと高齢者の衰弱がかなりすすみ、「死線をさまよう」状態になってきました。

避難当初、一般の避難所においては、最初は周囲の方も協力的でしたが、避難生活が数日経つうちに、認知症の高齢者が声を出したり失禁したりする状況になり、ストレスがお互いに募る状況に陥りました。職員は休む時間も場所もなく交代で介護し続け、6日以上入浴もできず着の身着のままで、疲れは極限状態でした。

福島県老人福祉施設協議会(以下、「県老施協」)では、通信が途絶える中、被害の少なかった会津支部の施設部会長(当時)の小林欽吉さん(社会福祉法人博愛会常務理事、特別養護老人ホーム会津みどりホーム等を運営)と県老施協在宅部会会津支部長の渡部悌一さん(竹田ほほえみデイサービスセンター所長)が、県老施協事務局(福島県社会福祉協議会内)とともに、懸命に被災施設に連絡を取り続けました。小林さんが大熊町の特別養護老人ホームサンライトおおくまの施設長と携帯電話でやっとのことで連絡をとることができると、施設長の声は悲鳴に近い状態で、かなり混乱していることが伝わってきました。その後、渡部さんが、県老施協事務局とともに避難施設との連絡役を担い、お互いに連絡がとれたところをつき合わせることで、どの施設がどこに避難してどのような状態なのかの全体像が徐々にわかってきました。

こうした中、浜通りの施設は壊滅状態、中通りの施設もライフラインが途絶えて復旧できていない状態であることがわかり、比較的被害の少なかった会津支部が動くしかないとの決断に至り、3月17 日に会津方部老施協救援対策本部を急遽設置しました。

 

浜通り施設の凄惨な避難状況にまずは支援物資を

渡部さんは阪神・淡路大震災や中越地震などで支援に行った経験から「浜通りの施設から避難された方々にとって、とにかく最初の1週間、食べ物、服、暖房、水に困るはず。とにかくいかに早く必要な物資を届けるかが大事」と考えました。まずは、法人内で物資を集めて会津若松市社協に送り届けました。渡部さんが「せっかくの物資を活かすしくみが必要であり、たまたま社協に日頃からお付き合いのある職員がいた。社協であれば災害ボランティアセンターのネットワークがあるのでその方を通じて社協にお願いした」と話します。

16日には、会津みどりホームで備蓄していた褥瘡防止用のエアマットや清拭用品、経管栄養用のとろみ剤を一般の避難者と工業団地に避難しているサンライトおおくまの入所者に届けました。そして、小林さんの法人本部のある会津みどりホームを拠点にして会津支部の各施設から物資を集めました。渡部さんが連絡のとれた避難施設では、オムツやジャージのようなズボンがとにかくほしいということでした。ところが、会津若松市内でも既にこれらが不足している状態です。渡部さんは山形県米沢市まで車を走らせてとにかく物資を買い集めました。買い集めたオムツは100袋以上です。渡部さんは「一人の入所者に1日2枚必要としても、150 人近い定員だと1日だけで300枚以上が必要になる」と指摘します。

一方、小林さんは「一般の人とともに避難した一次避難は国や県等が中心に行ったが、その後の二次避難は法人の知り合いや施設長の判断で避難先を探さなければならない状況だった」と話します。法人事務局長の遠藤修一さんも物資を送り届けに行きましたが、「物資を送り届けた職員があまりの惨状に自分が着ていったジャンパーを脱いで置いてきた。戻ってきた職員は涙が止まらなかった」と話します。

 

竹田ほほえみデイサービスセンター所長

県老施協在宅部会会津支部長

渡部 悌一さん

 

右:社会福祉法人博愛会理事

   県老施協会津支部元施設部会長

   小林 欽吉さん

 左:浜通りの避難先に物資を運んだ

   博愛会法人事務局長

   遠藤 修一さん

 

取材先
名称
福島県老人福祉施設協議会会津支部
概要
(社福)福島県社会福祉協議会
http://www.fukushimakenshakyo.or.jp
タグ
関連特設ページ