平成27年4月施行の生活困窮者自立支援法では、区市等による任意事業として「就労訓練事業」(いわゆる「中間的就労」)が導入されました。就労に困難を抱える生活困窮者に就労の機会を提供するとともに、生活面や健康面での支援を行う事業です。
千葉県にある社会福祉法人生活クラブ風の村(以下、風の村)では、約10年前より生活困窮者に限定せず、「はたらきたいのに はたらきにくいすべてのひと」を「ユニバーサル就労」として受入れ、就労の機会を提供しています。東社協社会貢献事業検討委員会広域連携事業に関する勉強会では、10月27日に、NPO法人ユニバーサル就労ネットワークちば副理事長の平田智子さんを講師に招き、ユニバーサル就労についての勉強会を開催しました。
平田さんは、風の村の職員としてユニバーサル就労の立ち上げからしくみづくりに取組んできました。きっかけは、風の村が新規施設を立ち上げる際に住民や地域から聞いた声でした。新しく地域にやってくる法人に期待することとして、防災拠点としての食料備蓄、ホームレスやニート・引きこもり支援などの意見と共に、”はたらく場を提供してほしい“という声がありました。平田さんは、取組みのきっかけについて「生活協同組合が母体の社会福祉法人であり、『自分たちにとっていいことをつくり出す』という組合員活動の風土があった」ことが取組みを推進に導いたと話します。
ユニバーサル就労の具体的な対象者は、障害者手帳の有無にかかわらず、精神的な理由、身体・知的な理由、子育てや介護で時間に制限がある方や、ニート、引きこもり等社会的な理由で現在の雇用形態でははたらきにくい人です。触法状態の方は除きますが、触法歴のある方は対象にしています。「本人が”はたらきたい“と思っていることを条件とし、居場所、生きがいも含めてユニバーサル就労として受入れている」と平田さんは話します。ユニバーサル就労の方を、風の村では継続的に通う人を意味する「コミューター」という名称でよんでいます。非雇用型の①無償コミューター、②有償コミューター、雇用型の③最低賃金保障職員、④一般賃金職員の4段階に分かれます(表1)。
事業所では、受入れにあたって「人と接する仕事」、「力を使う仕事」、「入力業務」、「PC以外の事務作業」などに業務分解を行います。職員以外にもできる業務が複数あることがわかり、それらをユニバーサル就労の方に担ってもらっています。「ユニバーサル就労の方へ業務を切り出すことで、職員はより専門業務に専念できる等の効果がみられた」とユニバーサル就労の受入れ効果について説明しました。
平田さんの説明の後、出席委員による質疑応答や意見交換が行われました。「中間的就労に関する気持ちのハードルがさがった」「感銘をうけた」という感想がありました。そして、生活困窮者自立支援法における自立相談窓口を受託している委員からは「このような社会資源が欲しいと思っている」との意見がありました。
また、保育所で障害者雇用を開始した委員より、採用に至るまでの取組み紹介がありました。「職員理解や仕事の切り出し等に時間は要したが、障害者雇用を導入することができた。できないと思っていたが、保育園にもできることがある」と話しました。その他にも、「東京の社会福祉法人も様々な取組みをしているが、まだお互い把握しきれていない。連携していけることを実践事例やモデルを伝えながら広めていければ」との感想がありました。
本会では、社会福祉法人の広域連携による社会貢献事業として中間的就労に関する取組みの、28年度からの実現にむけて検討を行っています。
*2017年6月に「東京都地域公益活動推進協議会」を設立
https://www.tcsw.tvac.or.jp/koueki/index.html