東社協児童部会では、「児童養護施設問題検討委員会」を設置し、児童養護施設における問題や課題について意見交換等を行っています。これまでの委員会の中で挙げられた課題の中で、人材の確保・育成・定着については、平成26年12月に問題検討委員会の傘下と位置付ける「人材対策特別委員会」を設置し、課題の具体化と対応について検討を行ってきました。
その対応の一つとして、平成27年12月14日、児童養護施設へ保育士や社会福祉士の資格取得のための実習の送り出しをしている養成校と、実習を受入れる児童養護施設がお互いのネットワークを深められる場として、「第1回施設実習養成校と児童養護施設との懇談会」をセントラルプラザ内で開催し、養成校・施設併せて100名を超える参加者が集まりました。
はじめに、児童部会副部会長である二葉学園統括施設長の武藤素明さんから、開会のあいさつがあり、「職員配置国基準が職員1人当たり児童5・5人から4人へ改訂されたことにより、今後全国で約2千200人の職員の増員が必要になった。東京都の児童養護施設の半数はいまだ職員数を確保できていない状況にある。約15年ぶりに懇談会という形で養成校と施設の職員が集まったこの場で、意見交換を通じ、実習生が将来担い手として就職したいと思えるような職場づくり・実習体制について考えたい」と、今回の懇談会の目的と期待について話しました。
続いて、人材対策特別委員長である二葉むさしが丘学園施設長の黒田邦夫さんから児童養護施設の現状について説明がありました。
現在、東京都には63の児童養護施設と17の自立援助ホームがあります。従来までの大・中規模な施設は減少傾向にあり、小規模化・地域分散化が進み、「小舎」と呼ばれる6~8人のユニットが、26年で総定員の5割と半数近くを占め、グループホームを合わせると約8割に及び、児童養護施設の運営形態が従来とは異なるものになっていることを説明しました。また、子どもたちの入所理由も、「虐待」が近年急速に増加しており、支援の内容も複雑化していると言います。黒田さんは、「児童養護施設での実習を希望する学生の中には、大人数が生活する大規模な施設をイメージして来る方もいる。しかし現実は、多くが小規模施設であり、職員の仕事の様子や心理職・家庭支援専門相談員等の専門職の状況を知ることで、イメージと現実とのギャップが生まれてしまう。このようなギャップをなくし、児童養護施設ならではの仕事のやりがいをみせていくことも、養成校・施設で共に取組んでいきたい」と話しました。
後半には、事前アンケートで集約した養成校側・施設側からの質問・要望事項について回答する時間が設けられました。養成校からの質問では、人材確保のための国の補助金についてや東京都としての人材確保への取組みといった人材確保にかかわる施策に関する内容から、実習先の確保・新規開拓や、実習生への事前指導にやっておくべきことなど、実習に関することまで、さまざまな疑問が寄せられました。その質問に対して、聖ヨゼフホーム施設長の鹿毛弘通さんが、具体的で明快な返答をしていきました。
施設側からの質問は、代表して至誠大地の家施設長である髙橋誠一郎さんが、養成校での実習先の選定方法についてや実習から就職へつなげていくために施設がやるべきことなどの質問を、会場に集まった養成校職員へ投げかけ、多くの回答を引き出していました。
また、当日会場で挙がった質問の一つ「人材確保において、参考となる施設の運営体制や取組みを、他の施設へと広げていくにはどのような取組みが必要か」に対し、本懇談会の総合司会でもある人材対策特別委員会副委員長で東京家庭学校施設長の松田雄年さんは、「人材確保には実習での経験や出会いが重要なキーになる。実際、新任職員に聞くと、施設へ就職することを決めた理由の約6割が、『実習時の体験』や『実習先の職員との出会い』だという状況にある。児童部会として、施設内実習担当者を集めた研修会や情報交換会を今後検討していきたい。より魅力的な実習体制を浸透させていかなければならない」と、今後の部会としての活動を含めた取組みについて話しました。
28年3月には、養成校の学生を対象にした施設見学会と説明会の開催も予定しており、人材育成等に関する今後の活動が期待されます。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/jidou.html