東社協在宅福祉サービス部会(*)では、平成27年12月10日(木)に、27年度第2回情報交換会「リレートーク 再考!!住民参加型在宅福祉サービス団体の役割と課題」を開催しました。「人」(担い手や後継者不足)と「財源」(補助金等の状況)に課題を抱えながらも、住民目線で、お互いの助け合いで暮らしやすい地域や社会を創ること等の理念を大切に活動している団体が、社会状況や制度・施策が大きく動いている今、感じている課題や今後の展開などについて情報交換を行いました。
*在宅福祉サービス部会
「住民参加型」「会員制」「有償制(非営利)」「多様な運営主体」等を特徴に、有償家事援助サービスなどの住民同士の支え合い活動を進める団体が所属する部会。
担い手確保のための働く環境づくり
生活協同組合東京高齢協は、仕事をすることが最も積極的な社会参加、生きがい活動であるという理念で活動しています。専務理事・代表理事の田尻孝二さんからは、「介護保険事業への参入を契機に、それまでの助け合い活動などの『生きがい就労』から、雇用契約に基づく『仕事』へと働き方が変化した」と近年の状況について説明がありました。そして、常に介護保険と比べられる生活支援サービスや住民参加型在宅福祉サービスについて、「担い手確保のため、楽しく充実感が持てる仕事、働く環境をどう整備していけるか法人の努力が問われる」と課題提起がありました。
身近な地域で、きめ細かな相談支援
品川区社協では、平成4年から有償在宅福祉サービス「さわやかサービス」を実施しています。相互支援室室長の布施恵美子さんは「介護保険制度導入や改正頃から、徐々にボランティアや利用会員の意識の変化を感じてきた」と話します。そのような中、ボランティア入門・養成講座へ参加した地域活動に関心ある方に働きかけをしたり、職員が地域のイベントに顔を出し、「何かやりたい」という思いを持った地域の人とつながることなどで、担い手の増加につなげてきました。
品川区社協では、地域の中の身近な相談窓口の開設を順次進めています。行政が設置する「地域センター」の中に、社協職員が常駐し相談を受ける「支え愛・ほっとステーション」を設置し、さわやかサービスと連携を密にして相談支援を実施しています。現在4か所で事業実施しており、28年度中に8か所に増やす予定です。そして、今後、区内全13地区に展開させる予定です。より身近な地域に相談拠点があることで、近隣の助け合いなどが広がりを持って展開されることが期待されています。
ニーズを支えるサービスの重み
特定非営利活動法人たすけあいグループひまわりは、小平市を活動エリアとする団体です。理事長の達下伸子さんは、「生活に欠かせないニーズは人によって違う。ひまわりでは支援内容に差をつけず、一律の利用料で、高齢者、障害者、親子、ターミナルケア中の方など、さまざまな方を支援している」と話します。他の制度や営利企業の家事援助サービス等と比べて”利用料が安い“という理由での利用相談も増えていますが、「住民の助け合いの手がなければ生活できない人のために利用料を安価に設定している。単に『安いから利用したい』という相談はお断りするなど、信念を貫く活動をしている」と言います。
担い手不足と財源の課題は大きく、この間の都や市の補助金の減額の動向を受けて、その都度団体としての方向性を考えて来ました。また、助け合いの活動を必要とする方を支えるために、介護保険や障害者総合支援法等の制度事業を実施し、その収入を助け合いの活動に充てています。助け合い事業と制度事業でヘルパーの待遇を一律に保つための検討を今後行う予定です。
家族の困りごとを丸ごと支援する
練馬区で活動する「子ども支援ぽれぽれ」ケアワーカーの川合碧さんと理事長は、20歳代の頃に児童養護施設の職員として出会った仲間です。主要なメンバーには、施設職員の後輩が多く、あらゆる困難な状況に対応できることを強みとしています。活動内容は、制度では到底できない、柔軟で利用者に寄り添ったものです。
三つ子を出産した母が産後うつ状態となった際の子育てや家事全般の支援、親が入院した子どもへ付き添い病院へ行く、父子家庭の重度障害をもつ未就学児の日中預かり等、子どもと家族を丸ごと包み込むような支援を行っています。依頼があれば、支援対象は親子にとどまりません。震災に不安を感じた高齢者や、手術後の方からの緊急の依頼等にも対応してきました。「助成金が減額にならないか、ワーカーも高齢化しつつあり健康状態等の悩みがあるのが課題」と話します。
食を通じたつながりづくり、支えあい
支えあう会みのりは、生活の基本である食を通じて、支えあいを大切に稲城市で活動しています。前理事長(現副理事長)の石田惇子さんは、「配食サービスに営利企業が参入し、コンビニ等での安価なお弁当の販売がすすんでいることで、みのりに支払う会費や配食の利用料(1食620円)が高いという声がある」と現在の課題について説明します。しかし、みのり配食サービスは、食事が届くだけでなく、同じ地域に住む人と顔見知りになって、気にかけてもらう安心感が持てるものなので、価格だけで比べてほしくないという思いがあります。また、「ボランティアのリーダー層の担い手がなかなかいない事、新たな活動拠点の整備等も課題」だと言います。今後は、より小さいエリアを対象にした会食会の実施や、好評の居場所づくりをさらに展開させていきたい意向です。
今般の介護保険制度改正の中では、要支援者に提供される多様なサービスの一つとして、住民やボランティアによる活動も期待されています。今後、住民の生活そのものを支援し、暮らしの質を高める地道な活動が、地域に根づいていくことが期待されます。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/zaitaku.html