小規模多機能型居宅介護ユアハウス弥生所長 飯塚 裕久さん
介護の仕事が好きだと思える人たちが増えてほしい
掲載日:2017年11月29日
2013年12月号 明日の福祉を切り拓く

 

あらまし

  • 飯塚裕久さんは、介護従事者を元気づけ、いきいきと働き続けられよう、2010年6月にNPO法人もんじゅを立ち上げました。現在は、群馬、鹿児島など全国各地に12の支部で活動が広がっています。自分の職場以外の先輩職員とセッションを行うなど、介護現場で働く人たちが課題や悩みを話し合って解決する「もんじゅミーティング」を行っています。

 

現場職員のキラキラを支援する

「3人よれば文殊の知恵」の言葉にならい、異なる職場の先輩職員2名が、後輩職員1名の抱える悩みや課題について対話をしながら問題解決をしています。現在は全国に12の支部が立ち上がっています。相談する人は、勤続5年目以内の若手スタッフが多く、「他事業所と話をしたい」「悩みを相談したい」という思いで参加しています。

 

この「もんじゅミーティング」を通して、職場を辞めたいと話していた職員が、職場の課題の解決方法を提案して、仕事を続けられているという声を耳にします。相談した人の8~9割が課題解決のための対応策が考えられ、仕事への展望が開けたと回答しています。「もんじゅミーティング」をきっかけに、自分で考え、職場を変えられる力を身につけたのだと思います。

 

自分の仕事を好きになって欲しい

福祉業界で働く人が、自分の仕事を大好きになって、自分の仕事を言葉で伝えられるようになって、自分がしたいと思っている仕事ができるようになってほしいと思っていました。

 

昔から善いことをしたい、自分が社会にとって有用でありたいと思っていました。その想いは、祖母の時代から60年間、私の代までつないでくれた介護の仕事、地域とのつながりが影響しています。その恩を返したいけれど、祖母は亡くなり、恩は返せない。ならば、下の世代に祖母からいただいた恩を送ることはできる。そんな想いが「もんじゅ」の活動のベースにあります。

 

キラキラ輝いている

訪問介護事業所をずっと運営してきましたが、介護保険制度が始まり、できないことも多くなってきました。スタッフは利用者にとって良いと思う仕事をしたいけれど、向き合う時間が少なくなっていたように思います。

 

平成18年に小規模多機能型居宅介護の運営を開始して、これまでよりも自由にサービスを組み合わせることができるようになりました。利用者の看取りのニーズを最後まで汲み取ることができたケースなど、自分が良い仕事をしていると思えるスタッフは、モチベーションが高くて、表情がキラキラ輝いています。自分の事業所の取組みから、「もっと何かしたいと思っている人がたくさんいるのでは」と感じていました。そんな人たちの気持ちを解放して、みんなが幸せになれる場所を作りたかったのです。

 

教科書以上の認知症ケアを

この10年で認知症ケアは良い状態になってきています。従来の施設ケアから、その人が生まれ育った地域で支える流れになってきました。介護福祉士養成課程の教科書も、地域ケアの流れになってきました。でも現場では、何かしたくても理想と現実のギャップで戸惑い、したい仕事ができないという人たちもいます。多分、そんなことはなくて、きちんとアセスメントして問題解決をすれば、認知症の人にとって良い支援が実現できると思います。教科書に書いてあること以上の支援ができていないのは福祉業界だけかもしれません。それは専門職として悲しいことで、だから、認知症ケアの質を高めたいと思っていました。

 

介護は専門家

介護に携わる人たちが、何が問題でどんな解決方法があるのかと考え、言語化できるようになってほしいと思っていました。そのためには、「もんじゅ」のような考えを整理できる場が必要です。自分が培ってきた専門的技術を使って、社会に対して有用なことをしたいと思っていました。私は相談援助の専門家で、本人が何を感じているのかを正確に導き出してアプローチする仕事をしています。仕事で日々実践していることを、「もんじゅ」にも広げて活動しています。

 

次世代に伝える意思

「もんじゅ」は、職場から離れた場所で話せるので、参加する人にとっては利害関係がなくて居心地が良い場所です。会費を払って会員になってくれている人は、自分のお金と時間を使って、次の世代に知識とノウハウと伝えたいという強い意志がある人たちです。強い意志を持っているキーパーソンを掘り出して育て、「もんじゅ」を広げていきたいと思います。それぞれの地域で、考え解決できる場所ができて、自分の仕事が好きだと思える人たちが増えるといいなと思います。

 

 

プロフィール

  • 飯塚 裕久(いいづか ひろひさ)さん
  •  1975年、東京生まれ。小規模多機能型居宅介護ユアハウス弥生所長。東京医科歯科大学で臨床検査技術を学んだ後、祖母の代から続くケアワーク弥生入社。2006年小規模多機能型居宅介護ユアハウス弥生を立ち上げる。東社協介護保険居宅事業者連絡会運営委員。『ヘルプマン!介護起業編』の主役のモデルでもある。
取材先
名称
小規模多機能型居宅介護ユアハウス弥生所長 飯塚 裕久さん
概要
株式会社 ケアワーク弥生
http://www.carework.co.jp/
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