福島県福島市/平成26年3月現在
東日本大震災に伴う福島県内の福祉施設の被災状況は、全壊が4施設、一部損壊が311 施設、原子力災害による避難が102施設でした(平成24年10月福島県調べ)。
福島県社会福祉協議会(以下、「福島県社協」)には、6つの社会福祉施設部会・協議会(①児童福祉施設部会、②老人福祉施設協議会、③障がい児者福祉施設協議会、④母子生活支援施設部会、⑤地域包括・在宅介護支援センター協議会、⑥県社会福祉施設経営者協議会)があります(福島県保育協議会は別団体が運営)。福島県社協では、災害発生後、それぞれの社会福祉施設部会・協議会の事務局として会員施設の被災状況の把握をすすめました。
地震、津波による被害に東京電力福島第一原子力発電所の事故が加わったことにより、各自治体は被災したあまりにも多くの市民の対応に追われ、施設に対する支援はもとより状況把握も厳しい状況でした。そうした中、県社協では個別の施設からの要望に次々と応じながら緊急物資などの提供を行うとともに、県内の施設間による避難施設の利用者の受入れの調整に取組みました。
人的被害・建物被害・ライフライン、援助の要否を調査
福島県社協では、平成23年3月11日午後2時46分に東日本大震災が発生した当日は、会員施設の被災状況の把握に取組むことはできませんでした。6つの社会福祉施設部会・協議会の事務局を担っていたのはわずか3人(他の業務も兼務)の職員。ガソリン不足に陥ったことにより、被災状況の把握に動くことも困難でした。
そうした中、当時の福祉サービス支援課長の村島克典さんは「会員施設の状況を把握するのは当然の役割。何とかしてまずは被害の全体状況をつかんで今後の対応策を検討することが必要」と考えました。そこで、3月13日〜16日に会員施設(児童福祉施設・老人福祉施設・障害児者福祉施設)に対してFAXで「東北地方太平洋沖地震による社会福祉施設状況の緊急調査について」を実施しました。同調査は418 の会員施設に送り、140施設から回答が得られました。あらかじめ用意していた調査票ではなく、その時に急ぎ検討して作成した調査票です。次のような項目で実施しています。
福島県社協人材研修課主査の今関稔子さん(老人福祉施設協議会事務局を担当)は、「被災直後の状況把握としては最低限の項目に絞り込むとやはり人的被害、建物被害、ライフラインの3つと援助の必要性となり、これは項目として妥当だったと思う。人的被害については、利用者と職員に分けて聞くべきだった」と話します。また、「局地的な災害の場合は、電話で状況を把握することができるが、今回のように大規模な災害になると、それも難しい。被災状況によって、電話(固定電話・携帯電話)、FAX、メールのどれがつながりやすいかもある。一つの手段に限らず、複数の手段を備えておくことが必要だろう。電話で把握する場合には、聞き取りに時間がかかりすぎないようにしなければならない」と指摘します。
実際には、被災により停電していたり、施設にとどまることができずに所在地から動いてしまっている場合には、このFAXによる調査では状況を把握できません。県社協は回答してくれた施設の状況を一覧にまとめながら、未送信になった施設をチェックし、回答のない施設に送り続けるということを繰り返し、徐々に被害状況の全体をつかんでいきました。そして、所在地を離れてしまっている施設からは、3月14日〜15日に「助けてほしい」という電話をもらうことなどで、ようやく連絡を取ることができました。また、所在地を離れた施設の利用者の家族の多くが県の災害対策本部に問合せたことから、県のホームページに避難施設の携帯電話番号が問合せ先として載り、そこで初めて連絡先がわかった施設もありました。
『被災している施設にとって状況把握は負担になるかもしれない』という躊躇はあります。しかし、支援を検討するために被災直後に実施したこの調査に対して施設側は協力的でした。むしろ今後の課題として、種別協議会が適切な支援を行っていくためには、原則として被災状況の第一報は施設から種別協議会事務局に送ることをルール化し、情報集約のしくみを整えることも必要と考えられます。村島さんは「情報を集約しないと支援につなげることができない。施設自身も情報を発信する意識をもってもらうことが必要となる」と指摘します。
右:福島県社会福祉協議会 村島克典さん
左:福島県社会福祉協議会 今関稔子さん
集約した情報をまとめて共有し、支援につなげる
緊急調査で集約された情報を県社協では一覧にまとめ、県の災害対策本部に提供するとともに、会員施設相互で情報を共有するため、施設に対して回答結果を返しました。実際に一覧にまとめた情報の一部ですが、次の内容で集約しています。
災害発生後、県社協の3人は支援を検討しつつ、電話対応にも追われました。避難施設の家族から「施設の避難先を教えてほしい」という問い合わせもありましたが、多くは関係機関からの「県内施設の被害状況はどうなっているか」「何が必要とされているか」といった問合せでした。こうしたことから、都道府県社協や種別協議会は支援の申し出を必要とするところと結びつけるためにも、被害状況の全体を把握しておくことは極めて重要な取組みといえます。
また、避難指示区域等から利用者とともに避難した施設は介護設備もない避難先で過酷なケアを続けていました。県内の大きな公共施設はどこも避難した市民でいっぱいで、避難施設は必要な物資も得られず、かつ、自ら避難先を探さなければならない状況に陥っていました。こうした施設からの「避難先を確保してほしい」という悲痛な電話は深刻でした。そうした中、比較的被害の少なかった福島県老人福祉施設協議会会津支部の施設が3月16日から避難施設へ緊急物資を届け始め、22日までに会津支部の27施設は174人にのぼる避難施設の入所者を避難先から助け出しました。
※平成25年8月13日に福島県社協老人福祉施設協議会の協力により発行された『避難弱者』(東洋経済新報社)では、避難指示等区域内にあった老人ホームが必要な情報が得られない中で非常に過酷な避難状況となった経過が詳細に報告されています。また、福島県老人福祉施設協議会会津支部による取組みは、本会発行の災害時要援護者支援ブックレット②「続・東日本大震災 高齢者、障害者、子どもを支えた人たち」(平成25年3月28日発行)に紹介しています。
http://www.fukushimakenshakyo.or.jp/