石川県輪島市
能登半島地震で日本初の福祉避難所を設置
掲載日:2017年12月18日
ブックレット番号:3 事例番号:30
石川県輪島市/平成26年3月現在

 

石川県輪島市は人口3万人弱、高齢化率39%と約4割が高齢者です。能登半島地震が起きるまで過去100年にわたって有感地震がありませんでした。そのため、石の上に柱を固定しないで置くなど、揺れに弱い家屋が多かったのが特徴です。

平成19年3月25日に起きた震度6強の能登半島地震では、輪島市で死者1名、負傷者115名の人的被害、全壊住家513件、大規模半壊住家115件、半壊住家971件、一部破損9,988件の建物被害がありました。

この地震の際、輪島市は一般の避難所では生活が難しい高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者等を受け入れる全国初の「福祉避難所」を設置しました。

 

まずは、在宅の要援護高齢者(主に要介護高齢者)は施設の定員超過で受け入れる

震災が起きた3月25日、当時輪島市福祉環境部保険課介護保険係長だった河崎国幸さんは災害対策本部で電話を受けたり、建物が壊れたところを地図に落とし込む情報収集から始めました。市役所職員も何をどうすればよいかわからないところからのスタートでした。翌日の26日は、施設の被害状況を確認し、要介護認定者で被災した方の状況把握を行いました。また、この日に内閣府が市役所内に災害対策本部を設置しました。

27日に厚生労働省から「能登半島沖を震源とする地震により被災した要介護高齢者等への対応について」が発出されました。これは、介護保険施設等で要援護高齢者の定員を超えて受け入れても差し支えないという、さらに、被災のために利用料の負担が困難な方については、市町村の判断により減免できるというものです。これを受けて、利用料減免の手続きをすすめました。介護保険料のみの減免だけではなく国保税や住民税等とのすり合わせが必要だったので、基準を家の損壊状況としました。減免は申請主義であるため、必要な方が自分で申請しないといけません。介護保険料、国民健康保険税、住民税といくつもの申請書を書くのは大変なので、急きょひとつの様式に統一しました。

そして、サービス利用者に家が全半壊により帰宅できない方もいたため、震災当日から、市からの協力要請により介護保険施設において、在宅で生活する要介護高齢者を定員超過で受け入れていました。老人保健施設の百寿苑は定員104 名の1割程度、特別養護老人ホームのあかかみでは定員105 名で3割程度を超過して受け入れました。その他にも市内外16 の施設でも受け入れてもらいました。1人あたりの受入れの期間は、自宅や次の住み家に帰れるようになるまでの2週間程度でした。

河崎さんは定員超過の受入れをふり返り、「要援護者がすべて福祉避難所に行くとなると、福祉避難所をいくつ指定しても足りなくなる。まず要介護認定を受けている人は介護保険施設に定員超過で受け入れてもらい、一般の方は避難所に行ってもらう。その上で要支援者や何らかの支援が必要な人だけが福祉避難所に行ってもらうしくみとした。福祉避難所の制度が想定している体制では要介護高齢者の対応は難しく、制度そのものもまずは介護保険施設での定員超過の受入れを想定している。福祉避難所について、実際にはこのことがあまり理解されていないと思う」と話します。

また、定員超過して受け入れた施設では、職員の負担は重くなります。その負担感を軽減するために、他施設から応援職員に入ってもらいました。期間は3日〜1週間の短い期間でローテーションでの派遣であるため、仕事を教える負担感がありました。河崎さんは「他施設から応援職員を派遣する場合は、できるだけ長期間で派遣し、経験がある職員を派遣する、担ってもらう業務を明確化することが大切になる」と話します。

 

輪島市福祉環境部健康推進課 長寿支援室次長 河崎 国幸さん

 

 

福祉避難所の設置を打診

震災から4日目の3月28日、内閣府の災害対策本部担当者から福祉避難所設置の依頼を受けました。当時、輪島市では施設等と福祉避難所の協定を結んでいなく、輪島市地域防災計画にも位置付けはなかったため、内閣府の担当者と協議しながら依頼する法人への資料をまとめました。対象者は社会福祉施設等への緊急入所対象となる方を除く要援護者(家族も含む)とし、介助員は資格を問わず配置することにしました。福祉避難所を設置する場所は耐震構造でありバリアフリーな施設、かつ看護師が常駐している福祉施設や病院を想定しました。設置期間を3か月から6か月と長めにしました。通常、災害が起きて1か月以内に仮設住宅を建て、それとともに避難所は閉鎖されるとされています。しかし、福祉避難所には高齢者のひとり暮らしや高齢世帯などが来ることを考えると、一般避難所がなくなり仮設住宅ができたとしても誰かの見守りを必要とした福祉避難所は残るのではと考えました。

そして、福祉避難所の概要をもとに2つの施設に打診を行ったところ、そのうちの一つ、日常的に法人理事長ともやり取りがあった介護老人保健施設百寿苑が快諾してくださいました。

 

 

取材先
名称
石川県輪島市
住所
石川県輪島市
http://www.city.wajima.ishikawa.jp/
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