石川県輪島市
能登半島地震で日本初の福祉避難所を設置
掲載日:2017年12月18日
ブックレット番号:3 事例番号:30
石川県輪島市/平成26年3月現在

一般避難所から福祉避難所へ

一般避難所は震災当日の3月25日から開設されました。場所は公民館や小学校等、最大で27 か所になりました。のべ18,228人が利用し、1日最大2,200人でした。5月3

日まで計40日間でした。一般避難所は、1人あたり一畳弱の狭い空間で、固い床の上での生活です。不慣れな集団生活の中、プライバシーの課題やトイレの不足や入浴の問題もあります。高齢者や障害者等は自宅では家族と不自由なく生活できても、一般避難所では難しい場合があります。一般避難所での生活が長期化することで、健康状態や疾病の悪化、精神的ストレス、認知症症状が現れたり、悪化する危険性があります。

避難所で生活されている方の中で、保健師や地域包括支援センター職員が状態を把握した方が良いと判断した方に対する実態把握を行いました。この把握には、既存の資料を組み合わせた実態把握票や生活機能詳細チェック表を用いました。それらの情報を集約し、福祉避難所での生活が相応しい方を選定しました。自宅では自分のことは自分でできるが、避難所では、共同生活が難しい方を対象となりました。避難者の送迎はデイケアのバスで対応しました。

 

 

日本初の福祉避難所を設置

このような流れで4月4日に福祉避難所を開設しました。地震発生から10 日後のことです。百寿苑は介護老人保健施設の他に、ショートステイ、通所リハビリテーション等を運営しています。福祉避難所は、通所リハビリテーションの30 畳の部屋を使いました。通所リハビリテーションは他のスペースで継続して運営しました。通所リハビリテーションの利用者の承諾を得て、福祉避難所の方も不活発病を予防するためにアクティビティを利用しました。食事は施設入所者と同じものを提供し、6月5日までの計63 日間でした。

 

介助員は、資格を問わず福祉避難所を設置した百寿苑に一任しました。同施設にはちょうど前年度退職した方が2名おり、家の被害もなかったのですぐにお願いしました。2人が交代で日中8時半から17 時まで、時給1,000 円でお願いしました。夜は百寿苑の施設職員が当直しました。百寿苑には100 名近くの職員がいたので運営上の問題はありませんでした。

介助員の業務は、避難所で生活される方の日常生活上の世話や、相談に乗ることです。また、避難所で生活される方の次の行き先を調整することも役割の一つです。そのような業務を行うため、河崎さんは「介助員は地元の福祉施設や病院の情報を把握している方が適している。外部からきた人よりも地元の人に優先的に依頼し、保健・医療の知識がある方を配置したほうがスムーズになる」と話します。

福祉避難所を利用された方に対しては、一般の避難所の食事が食べられなかった方には刻み食を提供し、尿失禁があった方にはポータブルトイレを使ってもらうなどの対応をしました。利用された方の退所先は、自宅や仮設住宅が大半でした。入院したり、養護老人ホームに入所された方やショートステイに移られた方もいました。一般の方は自宅が一部損壊や半壊でもライフラインが復旧できれば自宅での生活が可能ですが、福祉避難所を利用される方は、自宅が完全に復旧するか、養護老人ホームなどの次の住み家が見つかるまでは福祉避難所を出ることができません。

福祉避難所を設置したメリットとして、①24 時間の見守りができた、②入浴の見守りや介助ができた、③服薬管理ができた、④おかゆや刻み食を提供できた、⑤一般避難所より広い空間で生活できた(一般避難所:約1畳、福祉避難所:約3畳)、⑥ADLの状況などの把握ができ、地域包括支援センターと連携できた、⑦おのおのが役割分担して助け合って生活できた、が挙げられます。また、今回の経験をふまえ、福祉避難所を事前に指定しておくことの必要性や、福祉避難所閉鎖後の受入れ先を協議する必要性が浮かび上がりました。

 

 

 

 

取材先
名称
石川県輪島市
住所
石川県輪島市
http://www.city.wajima.ishikawa.jp/
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