あらまし
- 高齢者や障害者の旅行を支援する、NPO法人東京バリアフリーツアーセンター理事長 斉藤修さんにお話をうかがいました。
障害者になってはじめてわかった困難
私が車いすを利用するようになったのは、交通事故が原因で足が不自由になってからでした。暗い気持ちになった時期もありましたが、障害者になったことを前向きにとらえられるようになってから、障害者としての生活を思いきり楽しんでやろうという意識に変わりました。
それでも、車いすでの生活は想像以上に大変なものでした。今まで入れていたお店に入れなかったり、出かけた先で利用できるトイレがなかったり、健常者として生活していた経験があるからこそ、強くその不便さを感じました。
障害を持った人たちの旅行を手助けする
それは旅行に関しても同じで、車いすで旅行しようとしても、新幹線のチケットを取るのに時間がかかったり、車いすでも楽しめる観光地の情報が少ないなど、多くの困難を伴うということがわかりました。そこで、以前旅行会社に勤めていた経験を活かし、高齢者や障害者の旅行を手助けしたいと考え、NPO法人東京バリアフリーツアーセンターを立ち上げたのです。
利用者の方に楽しい旅を提供するためには、実際に自分で色々な場所に行って、設備や人の対応などを確かめることが大切です。なので、私はとにかくあちこちへ出かけて行って、楽しむことにしています。自分が楽しめなければ、利用者の方々も楽しめないと思うからです。地方の施設から毎年利用される方もおり、多くの高齢者、障害者の方が旅行をしたいという思いを持っていると感じています。
「バリアフリー」は ひとつじゃない
ひとくちに「バリアフリー」と言いますが、誰にでも通用するバリアフリーというものはありません。例えば同じ車いすの利用者でも、交通事故による後遺症、ALS、脳性まひ等、経緯や疾患は人それぞれです。また、症状の度合いも個人で大きく異なります。「バリアフリー」と称したトイレやホテルの部屋、施設等は増えてきていますが、「ある人にとってはバリアフリーでも、別の人にとってはバリアフリーではない」ということが常にありうることを、意識してもらえたらと思います。
外の世界に出ていくことが社会を変える
車いすの利用者には、とにかく外に出かけて行ってほしいと思います。旅行でも映画でも買い物でも、とにかく外に出て、困ってほしいのです。困ることではじめて課題を発見でき、それを周囲に伝えることで、解決する方法も見つかります。なにより、外には必ず誰か助けてくれる人がいます。家にこもっていても、誰も助けてくれないし、社会の状況も変わりません。
車いすの利用者だからできること、できないことがあります。健常者にも、できること、できないことがあります。お互い協力しあうことで、より良い社会を実現できると考え、私は今の活動に取組んでいます。車いすの人が勇気をもって外出することが、世界をバリアフリーに変えていく第一歩なのです。
GROUPナビ!
- NPO法人東京バリアフリーツアーセンター
- 高齢者や障害者への旅行支援を中心に活動している特定非営利活動法人。Facebookで観光地のバリアフリーに関する情報を発信したり、小学校等で障害についての講演を行うなど、広報・啓発活動にも力を入れている。
http://www.t-bftc.org/