大田区社会福祉法人協議会
地域の福祉人材育成に横串をさす「おおた福祉カレッジ」の取組み
掲載日:2018年3月23日
2017年11月号 連載

「おおた福祉カレッジ」作業部会の様子

 

あらまし

  • 大田区社会福祉法人協議会(事務局:大田区社協)は、平成27年7月に発足しました。社会福祉法の一部改正にむけた勉強会や情報交換会などからスタートし、発足から3年目を迎える現在、福祉人材の育成を目的とする「おおた福祉カレッジ」の取組みが始まっています。

 

大田区社会福祉法人協議会「おおた福祉カレッジ」

大田区社会福祉法人協議会が実施する福祉人材の育成を目的とした事業。福祉従事者の現任研修、各種資格取得等支援のほか、福祉分野への就労支援など、大田区および関係機関・団体と連携しながら重層的に展開している。

区内の(社福)大田区社会福祉協議会(社福)大洋社(社福)池上長寿園(社福)大田幸陽会(社福)有隣協会が幹事法人となり作業部会も設けて検討している。

 

福祉人材の育成を目的とする「おおた福祉カレッジ」の構想について、大田区社会福祉法人協議会の幹事法人である(社福)大洋社の齋藤弘美さんは「共生社会の循環形成を考えた時、これからの多様な問題を解決していくための勉強のしくみが必要だと考えた」と話します。その理由として、「同じ地域の中であっても、共有できる情報が少ないと連携や支援がしづらい。種別を超えた課題の把握や学びのしくみ、今までありそうでなかった包括的な福祉人材の育成のしくみがこれから求められると考えた」と言います。大田区社会福祉法人協議会では、平成28年度から作業部会を設けて「おおた福祉カレッジ」について検討をはじめ、29年度からは4つの柱で動きはじめました(表)。

 

おおた福祉カレッジの4つの取組み内容

 

 

小規模法人の人材育成も支える

区内には1法人1施設の事業所も多くあります。小規模法人では、研修機会が十分に確保できない等の課題もあるため、お互いの法人内研修に参加し合えることを考えました。

「職員育成 法人内研修交流」では、既に各法人が実施してきている管理職研修や事例検討等の法人内研修に、区内の他の事業所職員も参加できるようにしています。このことは、小規模法人の職員育成を地域で支える上でも有効な取組みとなっています。昨年度は(社福)池上長寿園が実施するコーチング等の職層別研修におけるチームリーダー研修に、試験的に区内事業所の中核人材が参加しました。

これまでは、各法人のビジョンを背景にして福祉人材の育成を考えることが中心となっていましたが、「今後は、地域の中で共有できるビジョンも必要。種別を超えて福祉人材として育成していくための研修や機会の必要性も感じている」と齋藤さんは指摘します。業種を超えて地域の課題を学ぶ機会は、「現場でのケアの先に、地域も含めて複雑な課題に対応していくソーシャルワーク、そして今この地域に必要なものを提案していく社会資源の開発など福祉人材が成長していく際にも必要な視点だと考えている」と話します。各法人・施設での実務上の育成だけでなく、地域の福祉人材としての育成が併せて望まれています。

人材育成以外にも、小規模法人に対する運営支援として、大田区社協が協議会に加入する法人を対象に会計相談を実施するなど事業所の運営面での支援も実施しています。

 

施設職員と地域の方が共に学ぶ

資格取得に係わる研修では、お互いの法人内研修を受けられるだけではなく、その機会を地域の方にも無料・低額で提供しています。

29年度は、池上長寿園が「介護職員初任者研修」を実施し、新任職員の他にも地域住民からを合わせて11名の申込みがありました。(社福)大田幸陽会の「知的障害者ガイドヘルパー養成研修」では、大田区生活再建・就労サポートセンター(JOBOTA(ジョボタ))の紹介をきっかけとした申込みもありました。7月の実施では10名の申込みがありました。しかし、学生の試験期間と重なる時期でもあり、次年度にむけては「事前に年間計画を立てることも含めて実施方法を検討していきたい」と改善点を挙げています。

また、大洋社では大田区元気高齢者就労サポート事業の一環で「保育補助養成講習会」を実施しました。大洋社では、講習会の実施だけではなく、子育て支援事業を実施している法人の特徴を活かして、自立に向けて研修等を受講する際に子育て支援事業での子どもの一時預かりを可能とするための要項改正も行いました。今後、地域の方が自立に向けて資格取得をめざすことを応援する環境づくりも課題です。

大田区社協においても、区内法人に講師を依頼し「介護職員初任者研修」を実施予定で、生活困窮者は受講料無料とする予定です。募集案内や講師依頼など研修実施にあたっても区内での連携を深めています。

 

地域を支える未来の人材を育てる

よりよい地域をつくっていくために、齋藤さんは「社会福祉法人・施設も力をつけ自立した経営ができるようにする必要がある。そのためには、実績を適切に評価するしくみや、新しいものを提案していく力も必要となる。社会福祉法人・施設が力をつけることで、職員や利用者を取り巻く環境も変わる」と話します。そして、そのことを実現していくための地域づくりを齋藤さんは「クリエイティブなこと」と表現します。社会福祉法人・施設で次世代の中核人材になっていく方が、自分の成長を望み、仲間とアイディアを出し合ったり、新たな提案を試すことができる場や機会をつくることが望まれています。

また、生きる力を身につけ、未来にめざすものをもてる後継者づくりは、福祉人材に限らず、これからの地域を支えていく次世代にとっても欠かせない視点です。福祉業界に限らず、地域の若い人が大田区の未来を考えられるように、「人を育てたいと個人的には思っている」と話します。

大田区社会福祉法人協議会では、29年12月3日には、地域密着就職面接会として、「ふくしのしごと市」を開催します。高齢・障害・児童の分野からそれぞれの職員が、日々の仕事内容等を具体的なエピソードで話すプログラムや、各法人・施設がブースを設けて参加者と対話し、面接や施設見学の申し込みができるコーナーも予定しています。実際に働いている方たちの生の声を聴き、働くイメージを具体的にもってもらう、地域の方と社会福祉法人・施設の出会いの場です。

ふくしのおしごと市ポスターの表   ふくしのしごと市チラシの裏
ふくしのしごと市」(29年12月3日開催)

 

「見たことがないと発想することはできない」と齋藤さんは言います。社会福祉法人・施設側は、地域公益活動をはじめとする活動を通して、地域の課題や地域で求められているものを知る機会を得はじめています。「社協を中心として、組織として関係者がつながるプラットホームがあってこそ。今後は、情報発信面も充実させていきたい」と齋藤さんは話します。

“地域の福祉人材育成に横串をさす”大田区の地域づくりの今後の展開とその拡がりが期待されます。

取材先
名称
大田区社会福祉法人協議会
概要
大田区社会福祉法人協議会 https://www.ota-shakyo.jp/cooperation/houjin

(社福)大田区社会福祉協議会  https://www.ota-shakyo.jp/publication

(社福)大洋社  http://www.taiyosha.or.jp/

(社福)池上長寿園  http://www.ikegami.or.jp/

(社福)大田幸陽会  http://www.ota-koyokai.or.jp/

(社福)有隣協会  http://yurin.org/

大田区生活再建・就労サポートセンター(JOBOTA(ジョボタ))  https://www.jobota.net/
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