山形県高齢者福祉施設防災ネットワーク協定書(PDF)

県を超えたネットワークに向けて

前述のとおり、村山地区における具体的なしくみづくりには平成24年度までの３か年にわたり県行政の山形県村山支部から業務委託を受けましたが、平成25年度は山形県老施協として国の独立行政法人福祉医療機構から「山形県災害福祉広域支援ネットワーク構築事業」の助成を受けて取組みをすすめています。25 年度は(1)災害時支援ネットワークの構築、(2)防災意識の向上及びネットワーク構築及び男女共同参画のための研修会開催、(3)災害時支援チーム（ＤＣＡＴ体制）の確立を事業計画としています。

平成26 年３月11 日には、福祉避難所の開設及び炊き出し等の訓練に加えて、同事業を活用して隣県の宮城県老人福祉施設協議会からもＮＰＯヘリコプターを使用して支援に駆けつけることも想定した訓練を実施しました。この訓練を当番で実施した特別養護老人ホームやまのべ荘管理課長の伊藤和雄さんは「山辺町と福祉避難所の協定は締結しているが、具体的なしくみづくりはこれから。実際に福祉避難所を設置するまでの訓練の体験を活かしたい」と話します。

また、同事業の第１回代表者会議は山形県行政の所管課も含めて18 団体で開きました。構成メンバーには県内の団体に止まらず、隣県の宮城県老人福祉施設協議会も入っています。峯田さんは「老施協が先行した取組みをしていたので、老施協としてネットワークの構築をすすめているが、今後は障害者施設の団体にも呼びかけをすすめていく。そして、災害時要援護者支援は施設関係だけの取組みではいけない。老施協として考えうるモデルを提示して、そこで構築したネットワークは幅広い取組みのできる山形県社協に引き継いでもらえればと考えている」と話します。

さらに、山形県老施協では他都道府県の老人福祉施設協議会とも相互支援協定の締結に向けた準備をすすめています。平成25 年11月には山形県老施協の理事会で他県と協定する内容の承認を得て、現在、近県の老人福祉施設協議会と協定の締結をすすめているところです。

平成26年３月11日に行った訓練

災害時に施設職員が地域のために活躍できる人材養成

災害時における介護人材を育成していくことについて、山形県行政としても「介護人材確保事業補助」という形で山形県老施協による「福祉施設防災ネットワーク構築及び防災訓練の実施等」を支援しています。

さらに、災害時支援チーム（ＤＣＡＴ体制）の構築に向けて、山形県老施協では防災士の資格を活用することを考えています。峯田さんは「防災士は、施設職員に限らず誰でも取得できる資格である。ながまち荘でもすでに16人の職員が資格を取得したが、それぞれの居住地に名簿登録させている。防災士という共通した知識をキーワードに登録した各自が居住地の訓練等に参加し、その地域の関係者とのネットワークも作っていくことも期待したい」と話します。平成25 年12 月には「山形県防災士会」を設立し、前述の広域支援ネットワーク事業にも構成団体として参加しています。

災害時に施設職員が他の施設を応援するスキルとして「介護福祉士と防災士の資格があれば、十分に支援ができると思う」と峯田さんは話します。一方、災害時に他の施設に派遣される場合、派遣する側も受け入れる側もとまどいを覚えるのは施設によって行われているケアに違いがあることです。この点について峯田さんは「常日頃から施設相互で交換研修を行い、他の施設では違うやり方があるということを学んでおくことが重要である」と指摘します。

さらに県を超えて応援する場合には、微妙な文化の違いも出てくることが想定されます。その課題についても、ながまち荘の岩崎さんは、「平成22 年からながまち荘では、経済連携協定（ＥＰＡ）に基づいてインドネシアから２人の外国人介護福祉士候補者を受け入れている。日本とインドネシアとの文化の違いに大きな不安に感じたが、実際に一緒に仕事をしてみると、お互いに学ぶことが非常に多かった」と指摘します。

老施協会長としてこうした取組みをすすめる意識として、峯田さんは「施設職員はコミュニティソーシャルワーカーであるべきだ」と話します。そして、「会員組織は会員の利益を守るためだけの組織ではなく、会員組織が地域社会に貢献するための取組みをすすめることこそが必要だ」と強調します。

山形県老人施設協議会会長　峯田幸悦さん　　　　　　　特別養護老人ホームながまち荘（山形県山形市）