(一社)クレオソーレ代表理事 丹菊敏貴さん
「人」と「人」がかかわるときに大事なことを教えてもらった
掲載日:2018年3月23日
2017年11月号 福祉のおしごと通信

丹菊敏貴 Toshitaka Tangiku

一般社団法人クレオソーレ代表理事

「すぎなみ151」(地域活動支援センター)・「koen the TAO」(就労継続支援B型)施設長

 

あらまし

  • 精神障害のある方とともに活動をしている丹菊敏貴さんのおしごとの魅力をお伝えします。

 

杉並区の地域活動支援センター「すぎなみ151」に入ったのは、今から12年前で37歳のときです。当時は共同作業所でしたが、それまで輸送関係の会社に勤め、長くロシアに滞在していたこともあり、こうした事業所のことは全然知りませんでした。また、求人票の仕事内容欄に「精神障害の方と活動する」とあっても、実際に何をするのかもよく分からないままでした。このような状況で応募したのは、資格や経験が不問だったことと、会社を辞めて余生を過ごすような気持ちだったので、障害のある方と一緒にゆっくりするのもいいかなと考えたからです。事業所の方々と初めて会ったのは、面接前に誘われたスポーツ交流会でした。皆さんが気を遣っていろいろ話しかけてくれたのを覚えています。

 

お付き合いの中で困りごとのお手伝いをさせてもらう

「お仕事は?」と聞かれれば、「精神障害の方の生活や活動を支援し、社会参加の場を提供している」という答えになると思います。ただ、それよりも、「皆さんとお付き合いする中で、困りごとがあったらお手伝いさせてもらっている」という方が、今の日常を表しているように感じます。

 

「話を聞いてほしい」「買い物に行けない」などの電話があれば、私がいる事業所では利用者以外の方でも話を聞いています。困ったときに「助けて」と言うだけでも大変なことです。特別にできることもありませんが、何かの縁でつながったのならば、その方がなるべく困らないように、自分にできることをやっていけばいいと考えています。また、事業所利用時の面接、いわゆるインテークも行っていません。ようやくたどり着いた場所を利用するために、今までの辛かったことを自分から話さなければいけないなんて、普通の人間関係ではないことです。「人」と「人」なのですから、やってきた方を「どうぞ」と迎え、その方のことはお付き合いする中で少しずつ知っていけばいいと思っています。利用者の方の趣味について知らなければ、勉強して相手に合わせるのではなく、その方と話をして教えてもらえばいいのです。

 

ただ聞いてほしい「相談」もある

最初の1年くらいは「噛み合っていないな」と感じることがありました。自分が率先して動き、利用者の参加の機会を奪ってしまったり、相談事の原因を追究しようとしたりと、今までの仕事の考え方が抜けなかったのだと思います。解決を求めていない、ただ話を聞いてほしい相談もたくさんあるということに気づかず、「何とかしなければいけないこと」と「ただ聞くこと」の区別がついていませんでした。

 

前職の経験を活かすというよりも、今やっていることは産業界でも大事だなと、振り返って感じます。たまたま「すぎなみ151」に拾ってもらったことで、人と人がかかわるときに大事なことを教えてもらいました。人間が成長する機会をいただけて、ありがたいです。

 

人とのかかわりは放棄できない

この仕事は「人とのかかわり」でしかないので、辞めて放棄するわけにはいかないと思っています。代わりはきくかもしれないですが、いろいろあっても、それでも一緒にいさせてもらっているのですから、私にできることはかかわり続けることだけです。

 

今考えているのは、事業所の枠にとらわれず、困っている人とつながるしくみがどうやったらできるのかということです。そこで大事になるのは、やはり「かかわっていくこと」だと思います。地域にいる人同士が普段からかかわり、お互いをよく知っていれば、何かあっても「困りごと」にはならないはずです。家で休んでいたとしても、同じ枠組みの中で一緒に生活していることが大切だと感じています。ですので、派手さはなくても、せめてつながった方には、これからもできる限りかかわり続けていきたいと思っています。

取材先
名称
(一社)クレオソーレ代表理事 丹菊敏貴さん
概要
一般社団法人クレオソーレ
http://www.creosore.or.jp/
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