おおきな木 加藤未礼さん
想いをデザインする 言葉にすることで描けるものがある
掲載日:2018年3月27日
2018年1月号 明日の福祉を切り拓く

加藤未礼さん

 

あらまし

  • 加藤未礼さんは、人々の想いを形あるものにデザインしていく「コミュニケーションデザイナー」として、主に障害のある人が通う福祉施設の商品企画のコーディネートを通して、福祉職員のミッションを共にデザインしています。

 

障害のある人たちも、他者に与えられる価値をたくさん持っています。そこをコーディネートするのが、福祉職員のみなさんの一つの大きなミッションです。そのミッションを具体的にデザインすることは、とてもワクワクする活動です。日々の活動を、少し角度を変えて面白がれるスキルを持てたら、こんなにクリエイティブな職業はないと思います。

 

何もないところから「つくり合う」

幼少期、家には楽器がたくさんあり、造形教室に通っていたこともあって、芸術や文化が身近にありました。中学・高校では演劇部で、将来は演出家になりたいと思っていました。何もないところから何かをつくる仕事、限られた空間の中で人に感動を与えられることが魅力でした。

 

社会人になり、大手の雑貨インテリアショップで10年勤務しました。その時に、大量生産・大量消費ではなく、1点ものの商品やその商品の背景にある物語に魅力を感じました。売り場づくりは、手法は違いますが演劇の魅力に通じるものがあります。店長になると、スタッフが楽しく働け、自己実現できるような人材育成の視点も得ました。やれるだけの結果を出したところで、子育てと仕事の両立が難しくなり、私の持っているスキルを活かして地域で社会に貢献できる仕事がないかと考えるようになりました。

 

その後、区立小学校の特別支援学級での介添えをする臨時職員に就き、約20人の知的に障害のある子どもたちと本当に楽しい、素敵な日々を過ごしました。その子どもたちが18歳になり、小茂根福祉園に通い始めたことがきっかけで、小茂根福祉園で商品企画のコーディネーターの仕事をすることになりました。

 

「もの」を売ることは簡単じゃない

「もの」を通じて、それが「福祉施設」や「障害のある人」への世の中のイメージにもなります。ところが福祉施設では、もらったものを利用して「もの」をつくるという昔の感覚がまだ残っているところがあります。福祉施設自身が悪いイメージを生み出している一面もあるのです。本来ものづくりは、マーケットのニーズに基づいて行われ、お客さんにお金を出してもらっている以上は「商い」だと思っています。現在23の福祉施設・団体に関わっていますが、意識の改革が最も重要だと考えています。「授産品→商品」「福祉喫茶→カフェ」「福祉バザー→マルシェ」「福祉作業所→工房」この言葉のとらえ方の間には、とても長い距離を感じます。

 

福祉の現場の大変さ、切実さは十分知っています。どこの職員のみなさんも本当に頑張っています。職員のみなさんは、例えば災害発生時などに、具体的に発揮できる多様なスキルと力をもった人たちです。社会の中でその尊い仕事が認知され、もっと評価された方がいいと感じています。そして、障害のある人たちの存在意義を伝え、社会に認知・理解されるようにしていく役割が職員のみなさんにはあります。世間の人に気持ちを少し寄せてもらう手段として、「商品」や「カフェ」、「アート作品」などがあると考えると、それがかっこよく、かわいく、面白くあると、訴求力が高まり、気に留めてくれる人が多くなると私は考えています。想いを伝える「媒体」なのです。

 

職員が町のプレーヤーに

平成29年12月に開催したイベント「セッション」(*)では、出店する施設に組織としてのコンセプトを言葉にするように宿題を出しました。「そのぬくもりに答えがある」など、各施設で練り上げた言葉が出てきました。想いを言葉で描くことで発信につながります。考えるきっかけがあり、やり方をつかめると意識も開き、発信力も高まります。福祉施設や職員のみなさんは自分たちの想いや力を言語化することが、まだまだ足りていません。自分の仕事に誇りをもって、“福祉の仕事は面白い”と自分の言葉で発信できるようになるとカッコイイ!と思います。

 

一緒に同じ時代を生きる私たちが、各地でプレイフルな「福祉」を勃発し、世の中の価値観に揺さぶりをかけるムーブメントを起こしていきましょう。

 

(*)東社協 知的発達障害部会主催

 

プロフィール

  • 加藤未礼(Kato Mirei)さん
  • 大手雑貨インテリアショップで10年、区立小学校の特別支援学級の臨時職員2年を経て、2008年「おおきな木」を立ち上げ。
    主に障害のある人が通う福祉施設の商品企画コーディネート、カフェの立ち上げ・運営コンサルティング、アートや商品販売のイベントディレクションなど、フリーランスで活動。
    29年12月東社協・知的発達障害部会主催イベント「セッション」では、コーディネーターを務める。

 

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取材先
名称
おおきな木 加藤未礼さん
概要
おおきな木
http://ookina-ki.org/
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