大学が自治体や地域と連携し、福祉業界をはじめ職業の魅力を子どもたちに伝える取組みがあります。
平成30年2月10日(土)・11日(日)に、田園調布学園大学(神奈川県川崎市)で「第13回 子どもがつくる町 ミニたまゆり2018」が開催され、5歳から15歳の近隣に住む子どもたち約1千人が集まりました。平成17年に数人の先生と学生が立ち上げたこのイベントは、大学が地域の子どもたちのために開始し、今では地域と共に開催する、地域に根づいたイベントになっています。平成29年度からは、神奈川全域に普及させる活動として「かながわ子ども合衆国」事業を開始し、県と協力して取組むとともに、神奈川県内にある「子どものまち」9か所とも連携して実施しています。
ミニたまゆりに参加する子どもたちは、自分たちの力でひとつの町を運営します。町には、さまざまなお店(仕事)があります。市民登録を済ませた子どもたちは、職業案内所で仕事を選びます。1回30分の仕事を終えてお給料をもらったら、税務署で税金を納め、残ったお金で食事や買い物、ゲームを楽しみます。
ミニたまゆりの運営は、人間福祉学部1年生の必修科目の中に位置づけられています。そして1年次に経験した2年生の希望者が実行委員として舵を取り、総勢130〜140人の学生がボランティアとして運営に関わるとともに、地域のさまざまな団体に協力を得ることで、よりリアルな職業体験を実現させています。
「病院の仕事」の様子
福祉ってどんな仕事?
ミニたまゆりでは、福祉に関する仕事は「人助けの仕事」という名称になっています。田園調布学園大学地域交流センターの鈴木隆広さんは「以前は『福祉センター』という名称にしていた。困りごとの相談に乗ったり、車椅子に乗ったりできるブースだったが、『福祉』という言葉が子どもたちになじみにくいのか、なかなか子どもが集まらなかった」と言います。「福祉センターを担当している学生に協力先の福祉関係団体の方が、どうして福祉の道を選んだのかを聞くと『人の役に立ちたいからです』と答えた。それをヒントに昨年から『人助けの仕事』という名称にしたところ、100人近い子どもが集まる人気の仕事になった」と話します。
人助けの仕事をやってみる
「人助けの仕事」を選んだ子どもたちは、〝町の中の困っている人〟を探してお手伝いをします。このシチュエーションは、障害のある人も私たちと同じ町の中で生活していることを伝えたいという想いからです。
廊下で車椅子に乗った人が「困ったな〜」と言っていることに子どもたちは最初に気づきます。
「友達が向こうにいるんだ。そこまで車椅子を押してもらってもいい?」
「うん、いいよ」。
「人助けの仕事」の様子
〝困った人〟に扮する学生と子どもとの間でこんなやりとりがあり、子どもたちは初めて車椅子に触れます。「まず、ブレーキをはずしてみよう。意外と重たいね。片手だとなかなかうまくいかないね、両手でやってみたらどうかな?」隣につく他の学生が丁寧に車いすの使い方を教え、人通りの多い廊下を車椅子が通ります。「車椅子が通ります!」と子どもたちが大きな声で言うと、町の人たちはすっと道をあけてくれました。
目的地に到着してほっと安心した表情の子どもたち。「ありがとう!」と言われると、役に立てた嬉しさからか、はにかんだ笑顔がこぼれます。
小学生の女児は、「緊張した。はじめて車椅子を押して、人がたくさんいて危なかったりしたけど、止まりながらゆっくり頑張れば大丈夫だった。楽しかった」と話します。
「人助けの仕事」の受付を担当する学生は、「小さい頃は障害者や高齢者が身近に感じにくいこともある。子どもたちにとって、今日のこの体験がきっかけになって、町の中でも声をかけたり、一歩ふみ出せるようになってくれたら」と話します。
地域交流センター 鈴木隆広さん
鈴木さんは、「子どもたちが体験を通じて『これは福祉だったんだ!』と福祉が私たちの身近にあることを感じてくれたら嬉しい」と話します。
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子どもたちが主役となってまちづくりに参加することは、職業観の育成につながるとともに、一人ひとりの成長、将来の道を選ぶ第一歩になりそうです。どの子も目を輝かせ、いきいきとまちづくりに参加していました。
http://www.minitama.jp/