東京都社会福祉協議会地域福祉推進委員会WG
東京らしい“地域共生社会づくり”のあり方について~中間まとめ~
掲載日:2018年6月6日
2018年5月号 NOW

 

あらまし

  • 厚生労働省が設置した「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部では、地域共生社会の実現を今後の福祉改革の基本コンセプトと位置づけ、地域力強化や公的サービス改革、専門人材等について検討を行ってきました。平成29年には地域包括ケアシステム強化法が成立し、平成30年4月から「我が事・丸ごと」の地域づくりや包括的な支援体制の整備について規定された改正社会福祉法が施行されています。
  • 東社協地域福祉推進委員会の地域福祉推進検討ワーキングでは、東京らしい地域共生社会づくりのあり方について検討を重ね、平成30年3月に「中間まとめ」を公表しました。今号では、中間まとめによる東京モデルの提案についてお伝えします。

 

 

検討の背景

平成29年5月に成立した地域包括ケアシステム強化法による社会福祉法の改正では、地域生活課題の解決のために包括的な支援体制を整備することを市町村の責務としたほか、市町村および都道府県における地域福祉(支援)計画策定を努力義務としました。東京都はこうした動向をふまえ、29年6月に東京都地域福祉支援計画策定委員会を設置し、検討を始めました。

 

東社協においても国や都の施策動向を受け、29年7月に地域福祉推進委員会の下に検討ワーキングを設置して、東京において今後いかに地域共生社会づくりをすすめるべきかをテーマとして検討を行ってきました。検討にあたっては、大都市東京ならではの地域共生社会の姿を追求することを意識し、そのためには地域社会を構成する多くの関係者が協働し、主体的に取組むべきテーマや視点を明らかにすることが重要であると考えました。

 

また、東京には島しょ部を含む62区市町村があり、地域特性が多様であることが大きな特徴といえる中で、地域共生社会づくりの取組みも全都的に画一的で均質なものにはなり得ないことをふまえ、ワーキングでは東京における地域共生社会づくりに向けてめざす方向性のモデルを提示することとしました。

 

そして、東京都による「東京都地域福祉支援計画」が区市町村や地域の取組みに与える影響の大きさに鑑み、それに対する民間の立場からの意見反映を図るため、とりわけ重要と思われる5つの事項に絞って考え方や視点を提起することを29年度の到達点としました。以下に「中間まとめ」のポイントを紹介します。

 

1 「我が事・丸ごと」地域共生社会の提起をどう受け止めるか
国の提起は、従来の社会福祉のあり方を見直し、地域生活課題を地域社会で受け止め、住民や関係者が主体的に取組む必要があることを明確にしました。これに対し「国や行政にできないことを住民に押し付けるのはおかしい」という声もあります。しかし、国や行政に施策推進の基本的責務があることは当然であるとしても、一方で行政施策や公的サービスだけで解決できない課題があることも明らかです。特に社会的孤立や排除、差別といった問題は住民の意識や関係性、地域のあり方が問われる課題です。

 

これまでも「福祉コミュニティづくり」への取組みは区市町村社協を中心にすすめられてきましたが、さまざまな課題も抱えています。国の提起をきっかけに、こうした「住民主体」の取組みをあらためて推進していく必要があるでしょう。多様な関係者とネットワークを構築するとともに、「住民主体」を徹底し、住民や関係者が自分たちの地域をよくしたいという気持ちを共有することが重要です。地域共生社会は、住民や関係者が創意工夫と協働によって力を発揮し、共に創っていく社会といえます。

 

2 地域共生社会づくりをすすめる地域基盤(しくみ)のあり方

 

 

 

地域基盤(しくみ)のあり方については、国の「地域力強化検討会」の報告では、「住民に身近な圏域」と「市町村域」の2つの圏域での提起がなされていますが、東京の実情をふまえ、3つの圏域に分けて提起しています。

 

(1)小地域圏域
(住民が我がまちと感じるエリア)
小地域圏域では、住民主体による多様な地域活動の推進がテーマとなります。住民が〝我がまち〟と感じる圏域で、地域の問題に関心を持ち、行動できる基盤づくりが重要です。〝我がまち〟と感じる圏域は一様ではないため、行政や専門機関が押し付けるのではなく、住民が実感できる圏域に行政や専門職の視点を合わせることが大切です。

 

また、地域には支え合おうとする面も排除しようとする面もあります。地域の問題に無関心な人もいます。住民の自然な思いに任せるだけでなく、専門職が住民と一緒に学び、考える「場」をつくることが必要です。専門職は、住民が主体となるよう、「住民コーディネーター」となる地域人材を見つけ、住民のよきパートナーとして地域づくりに取組む必要があります。

 

小地域圏域で住民主体の活動を推進するにあたっては、(1)協議の場づくり、(2)居場所づくり、(3)見守り活動を基盤とし、その上で必要に応じて地域のニーズにあわせて生活支援(ゴミ出しや電球交換等)の活動や、食事・移動支援等を実施することが考えられます。協働するプラットフォームとしての「地区社協」も有効です。また、活動推進のための場(拠点)の確保も重要です。

 

さらに、都市部に固有の課題である大規模集合住宅におけるコミュニティづくりや、個人情報を含む地域情報入手に取組む必要があります。

 

(2)中圏域(中学校区等)
中圏域では、住民と多機関の協働により、多様な地域生活課題を包括的に受け止め、解決を図る機能の確立がテーマとなります。

 

小地域圏域で対応困難な課題は、中圏域で住民や専門機関が協働し、包括的に受け止めて解決を図ります。特定機関が守備範囲を広げ、ワンストップで受け止める方法も考えられますが、狭いエリアに資源が密集する東京では、各機関の専門性を活かし、密接に連携するスタイルが有効と考えられます。
社会資源や専門機関をつなげ、ネットワークを活かして課題を受け止めるスタイルを実現するには、地域福祉コーディネーターの役割が重要となります。民生児童委員、社会福祉法人、NPO、企業、ボランティア等、分野を超えた資源の把握と密接な協働関係の構築も求められます。社会福祉法人の地域公益活動も有効です。

 

(3)区市町村圏域
区市町村圏域では、多分野にわたる多機関の協働による、困難事例への包括的相談・支援体制と、中圏域・小地域圏域へのバックアップ体制の構築がテーマとなります。

 

中圏域でも解決困難な課題は、区市町村圏域で対応する必要があります。また、小地域圏域や中圏域で住民と専門機関が役割を的確に果たすためには、区市町村圏域からのサポートが重要です。地域で活動する住民の人材育成プログラムの検討、関係者と連携した資源開発、地域の活動団体をサポートする中間支援組織としての役割等もあります。

 

この圏域では、関連する領域の範囲が広いほど、制度間や領域間の縦割りの問題が顕著になるため、課題の解決には分野を超えて取組むべきテーマを〝横串〟にしてすすめる必要があります。また、多機関協働体制を動かすためには、地域福祉コーディネーターが小地域、中圏域からつないだ課題に伴走するなどの役割を果たすことが重要です。

 

区市町村圏域では、ネットワークをマネジメントする機関が必要であり、区市町村社協、生活困窮者自立相談支援機関、基幹型地域包括支援センターなどが挙げられます。課題を協議する会議体は、新たに設置する方法のほか、既存の会議体を整理、活用することも考えられます。これらを機能させるためには、3圏域の多様な取組みを交差させ融合させて働く地域福祉コーディネーターの役割が重要となります。

 

3 地域福祉コーディネーターの配置と育成策
地域支援や個別支援、しくみづくりの機能をもつ地域福祉コーディネーターは、中圏域ごとに複数体制で配置されることが望ましいと考えられます。チーム対応により機能を的確に発揮することで、施策やサービスの縦割りを排した地域課題への丸ごとの対応が可能になります。

 

介護保険制度における生活支援コーディネーターは、できる限り地域福祉コーディネーターと同様の役割を期待されますが、地域包括支援センターに他の職種と兼務体制で配置される場合には求められる役割が十分に果たせるか、注意が必要です。

 

地域福祉コーディネーターの養成は、専門職種(社会福祉士等)のあり方の検討だけでなく、区市町村および都道府県レベルでの取組みが重要です。また、研修機会の充実だけでなく、各地域や職場内でのOJTやスーパービジョン、地域福祉コーディネーター間の交流が有効です。

 

4 「東京モデル」による連携・協働体制
「東京都地域公益活動推進協議会」で推進している取組みのうち、地域連携ネットワークによる取組みは、まさに地域共生社会づくりにつながる重要な役割が期待されます。

 

また、地域課題が複雑化、困難化する中で、民生児童委員はこれまで以上に地域のさまざまな機関や活動と連携することが必要となっています。個人の資質向上に加えて、民生児童委員同士がチームで動くことにより、「つなぐ役割」だけではなく、持続的な「寄り添う支援」が可能になると思われます。

 

個々の社会福祉法人、事業所と民生児童委員がそれぞれの強みを活かして協力するだけでなく、社会福祉法人の地域連携ネットワークと民生児童委員協議会が組織的に連携することにより、さらなる効果も望めるでしょう。

 

社会福祉法人の地域公益活動推進のための地域連携ネットワークや民生児童委員協議会の取組みには、関係機関や地域福祉コーディネーターと連携し、地域をつなぎ、縦割りになりがちな多分野・多機関のしくみに〝横串〟を入れる役割が期待されます。

 

社会福祉法人のネットワークの取組みが40を超える区市町村ですすみつつある東京の現場をふまえると、社会福祉法人のネットワークと民生児童委員協議会、地域福祉コーディネーターの協働による「チーム方式の地域福祉推進体制」(「東京モデル」)により、関係者との協働を深め、多様性ある〝共創〟社会をめざすことが期待されます。

 

5 地域福祉(支援)計画のあり方
改正社会福祉法では、地域福祉(支援)計画を高齢・障害・児童等の分野別計画の上位計画として位置づけています。厚生労働省のガイドラインでは「共通事項」として計画に盛り込むべき事項として、「制度の狭間の問題への対応のあり方」や「各分野横断的に関係する相談者に対応できる体制」づくり等を例示しています。

 

東京には多くの地域活動と資源がありますが、これらが密接に連携しつつ適切にニーズにつながるために、区市町村における地域福祉計画の策定と推進が期待されます。そのため都が計画の策定や推進にあたっての視点や指針を示す必要性は大きいといえます。

 

地域福祉計画は、単なる行政施策や公的サービスの実施計画ではなく、分野を超えた地域生活課題を守備範囲として、地域共生社会の実現をめざすものです。そのためには、住民や関係者が主体的に策定し、推進する地域福祉活動計画と連動させることが重要です。

 

都の地域福祉支援計画には、東京らしい地域共生社会の構築に向けた基本理念を位置づける必要があります。特に、東京では、地域福祉コーディネーターの役割が大きいと考えられ、その配置と支援策を計画に盛り込み、実行することが重要です。

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中間まとめの検討過程において、内容の重要部分について都へ伝達し、計画への意見反映に努めた結果、30年3月に公表された東京都地域福祉支援計画に多くの内容が盛り込まれました。今後は、区市町村の地域福祉計や地域福祉活動計画への波及、反映が期待されます。

 

 ワーキングでは引き続き、障害者に対する地域や社会の障壁の問題や共生型サービスの意義と可能性等、重要な課題について検討をすすめ、30年度内に最終とりまとめを行う予定です。東社協地域福祉推進委員会地域福祉推進検討ワーキング 「東京らしい“地域共生社会づくり”のあり方について 中間まとめ」 全文は、下記でご覧いただけます。

http://www.tcsw.tvac.or.jp/chosa/documents/180319chiikikyosei_chukan.pdf

 

 

 

取材先
名称
東京都社会福祉協議会地域福祉推進委員会WG
概要
東京都社会福祉協議会
東社協地域福祉推進委員会WG
https://www.tcsw.tvac.or.jp/
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