立川断酒新生会 師岡 迪夫さん
決意一つで人はやりなおせる
掲載日:2018年6月6日

立川断酒新生会

師岡 迪夫さん

 

あらまし

  • アルコール依存症の経験者として、長年、アルコール相談や断酒会の活動を行い、強い思いで適正な飲酒の啓発活動をしている師岡迪夫さんにお話を伺いました。

 

 

父はとび職で、朝から職人達が集まる家で育ちました。幼い頃から給料日に集まった職人達が、我が家で酒を飲み、高校生になると、家業を手伝う中で飲酒の機会がある環境でした。

 

長男の私は家業を継ぎ、取引等で酒を飲む席が増えていきました。40代の頃には、酒が切れると手が震えて、足はガクガクし、頭は朦朧となり、仕事ができない。しかし、たった1杯飲むと頭と身体がスッキリし、気持ちではやめたくても、身体がやめられない状態でした。

 

やめたくてもやめられない

アルコール依存症は「否認」の病気です。「自分は大丈夫」と自分が依存症であることを認められない。私は自分がアルコール依存症で、病気だとは知りませんでした。

 

その後、結婚しても、妻が不在の隙きを狙って、自販機のワンカップを買いに行き、隠れて飲む日々でした。「普通ではない。このままどうなるのか」と不安な気持ちから、何度も酒をやめようとしました。しかし、アルコールに関する知識もなく、ひとりでは断酒が続きませんでした。見かねた妻が涙を流しながら「一緒に治そう」と言ってくれました。妻の言葉に涙しました。

 

53才の頃、アルコール専門病院へ入院し、やっと外泊許可が出ても、帰宅途中の駅で缶ビールを飲んだら止まらなくなり、離脱症状になっていました。命がけで酒を断つ決意をしました。

 

仲間ができて断酒が続いた

退院の条件は自助グループに通うこと。自宅近くの「立川断酒新生会」へ入り、断酒のため必死で通いました。退院して間もなく、入院中にできた仲間や家族から、相談の電話がかかってきました。夜中でも夫婦で駆けつけ、話を聞き、励まして仲間のケアを続けました。

 

その後、月に数回、夫婦で地方の断酒会例会に参加し、全国の仲間と交流しました。断酒会例会の出席者は、命をかけて出席しています。1年後に、例会でお互いの無事を確認しあい、感激と感動の入り交じった涙の出そうになる再会は言葉になりません。仲間がいるからこそ、断酒が続いています。

 

周りに困っている人がいるはず

地方の断酒会例会で出会った東北会病院の石川達先生から「アルコール依存症と診断された日から、困っている人の手助けをするのがあなたの使命ですよ」と言われたことが、私の行動が変わるきっかけになりました。

アルコール依存症に対して、社会の理解がすすんでいないと感じます。そのため、恥ずかしいからと、家族や本人が隠し深刻化してしまいます。身近にアルコールに困っている人はいるはずです。

 

私は「アルコールに関する相談の場を」と、立川市社協に相談し、職員が理解を示してくれたことで、平成14年から社協内にアルコール専門相談室ができました。今年で16年になります。

相談室に、勇気をふりしぼってきた相談者には、まず私の体験談を伝え、話しやすい雰囲気をつくります。あとは、自分だけでないと知った相談者の話をじっくり聴きます。時には、相談時間いっぱいまで。その後、相談者が例会に出席したら、一緒にお酒をやめようと声をかけ、ひとりにしません。断酒会に入ってくれるととても嬉しいです。本人にとって断酒への第一歩となるからです。

 

今後は、多くの方に相談室を知ってもらい、気軽に相談に来てもらうにはどうしたらいいかと考えています。市の広報誌と社協だよりに掲載された相談室を知って訪れる相談者もいて、周知の効果を感じます。未だ相談に来られない人へ、ひとりでなく、仲間をつくり、一緒にやめようと伝えていきたいと思っています。

 

 

立川断酒新生会

  • 酒で困っている人や家族が体験談を話し、聞き、断酒会例会などを通し、仲間と共に回復をめざす日本独自のアルコール依存症の自助グループ
  • http://www.tama-danshurengou.jpn.org/
  • アルコール相談 第2・4水曜日
  • 13:30〜16:30
  • 立川市社協 TEL 042-529-8429

 

取材先
名称
立川断酒新生会 師岡 迪夫さん
概要
立川断酒新生会
http://www.tama-danshurengou.jpn.org
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