(社福)東京都社会福祉協議会
“東京らしい地域共生社会づくり”の鍵となる社会福祉法人の地域ネットワークの取組み
掲載日:2018年7月18日
2018年6月号 連載

 

あらまし

  • 平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)「広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組(以下、地域公益活動)」を推進しています。(2)を推進する「地域ネットワーク」は、平成30年5月現在、49区市町村で準備または活動がすすめられています。本誌4月号でご報告した通り、各地域で住民や関係者の“共創”による「東京らしい地域共生社会づくり」をすすめていくにあたり、社会福祉法人による地域公益活動の広がりが大きく期待されています。

 

社会福祉法人の地域公益活動の推進

 

 

 

 

東京都地域公益活動推進協議会(以下、推進協議会)は、社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向け、社会福祉法人が連携して地域公益活動に取組むことを目的として活動しています。

 

制度に基づく支援では対応が困難な課題や世帯が複数の課題を抱えているケースなど、1施設や1法人による対応では解決が困難な場合が少なくありません。また、法人や施設の規模もさまざまである中、社会福祉法に規定された「地域における公益的な取組」を実施する責務を果たし、それぞれの専門性を活かして継続的に取組むためには、「連携」が有効かつ重要となります。

 

推進協議会がすすめる三層の取組みの一つである「地域ネットワーク」は、その地区で事業を運営する社会福祉法人の事業所と区市町村社会福祉協議会が協働して組織化を図り、主体的に活動がすすめられつつあります。

 

東京らしい地域共生社会づくり

一方、平成29年5月に成立した地域包括ケアシステム強化法をふまえた改正社会福祉法は、福祉や介護に限らず、保健医療、住まい、就労、教育等を含めた「地域生活課題」を新たな概念として規定し、その解決のため、包括的な支援体制づくりを市町村の責務とするとともに、地域福祉(支援)計画の策定を市町村及び都道府県の努力義務としました。こうした背景のもと、東社協地域福祉推進委員会に設置した地域福祉推進検討ワーキングがまとめた「東京らしい地域共生社会づくりのあり方ついて(中間まとめ)」では、社会福祉法人の地域公益活動は、地域共生社会づくりの取組みと趣旨、目的を同じくするものであり、貴重な一翼を担うことが強く期待されるとしています。

 

中間まとめでは、東京で地域共生社会づくりをすすめる地域基盤(しくみ)を(1)小地域圏域、(2)中圏域、(3)区市町村圏域の3圏域に分けて提起されており、そのいずれにおいても社会福法人の地域公益活動による取組みを展開できる可能性があります。

 

例えば、小地域圏域では、地域のニーズに基づき、施設で「認知症カフェ」や「子育てひろば」の開催、近隣の複数法人が連携して「子ども食堂」を開催している実践などがあります。また、町会が主体となり活動する「居場所」の運営に場所や機材の提供、スタッフの支援により協力する方法もあります。中圏域で多機関と連携して「子どもの学習支援」等を実施する例や、区市町村圏域で、全法人の事業所が連携して相談事業やフードドライブ等の事業に取組む地域も見られます。

 

「東京モデル」への挑戦

また、中間まとめでは、地域支援や個別支援、しくみづくりの機能をもつ「地域福祉コーディネーター」が、社会資源や専門機関をつなげ、課題を受け止める東京らしいスタイルの実現や、分野を超えた多機関協働体制を動かす役割を果たすことが提起されています。さらに、民生児童委員がこれまで以上に地域のさまざまな機関や活動と連携して、課題解決に向けてチームで「寄り添う支援」を行うことが期待されています。

 

そして、個々の法人や民生児童委員の連携だけではなく、区市町村ごとに社会福祉法人の地域ネットワークと民生児童委員協議会、地域福祉コーディネーターがそれぞれの強みを活かして協働し、「チーム方式の地域福祉推進体制(東京モデル)」ですすめることを提起しています。今後は、各地域でこの「東京モデル」への挑戦が具体化していくことが期待されます。

 

東京都地域福祉支援計画に示された期待

東京都が30年3月に策定した東京都地域福祉支援計画にも、社会福祉法人による「地域における公益的な取組」の推進が挙げられています。「専門性やノウハウ、地域の関係者や他の社会福祉法人とのネットワーク等を活かしながら地域における公益的な取組の実践により、地域共生社会の実現に積極的に貢献していくことが期待されている」としており、推進協議会の取組み事例も紹介されています。

 

また、東京都の取組みの方向性として、社会福祉法人が地域における公益的な取組みの実施により地域社会へ貢献できるよう、区市と連携して、取組事例の収集・提供等、支援の充実を図るとしています。

 

地域ネットワークの広がりと取組み

区市町村ごとの社会福祉法人の地域ネットワークは、30年5月時点で49地区となりました。半年前に比べ10地区増え、社会福祉法人の事業所数が少ない島しょ部を除く53地区中の92%まで広がっています。

 

推進協議会として、東京全域での地域ネットワーク化を推進するため、会員法人が拠出する推進協議会費から、希望する地域に対して助成金(事務費5万円、事業費30万円以内)を出し、ネットワーク化と活動の立ち上げを支援してきました。

 

各ネットワークでは、行政とも連携し、地域特性や社会資源の状況をふまえたニーズ把握や課題の共有、複数法人の連携による地域公益活動の実施、情報発信等がすすめられています。また、各事業所の喫緊の課題である人材確保・育成や、災害時の取組みなどもすすめている地域もあります。

 

理事長や施設長の連携だけではなく、現場の職員間での連携を図れるよう組織化を図った地域や地域福祉コーディネーターや地区社協等、社協がすすめる地域づくりの活動と連携を図っている地域など、そのあり方や推進方法には、地域特性が見られます。

 

推進協議会の地域ネットワーク推進委員会アドバイザーである諏訪徹さん(日本大学文理学部教授)は、「法人改革の背景から、法人が単体で公益的な活動に取組むだけでなく、住民、活動者、行政に、社会福祉法人グループを地域資源として認識してもらうことが何より大切。その意味で、地域ネットワークには大きな意義と広がりの可能性を感じている。法人・職員の活性化のためにも地域で輝く社会福祉法人をめざして取組んでいただくことを期待している」と応援します。

◆◆◆

福祉広報では、来月号から地域の具体的な取組みをお伝えし、「東京らしい地域共生社会づくり」における社会福祉法人の地域公益活動とネットワークが果たす役割について考え、活動を推進してまいります。

 

 

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/index.html
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