(社福)椿の里 大島老人ホーム
福祉避難所の設置と特養利用者の平穏を守る支援
掲載日:2017年12月19日
ブックレット番号:3 事例番号:35
東京都大島町/平成26年3月現在

 

利用者が離散して避難すると不安になる

昭和61 年の三原山噴火の際に行った島外避難では、利用者・職員110 数名が一か所にまとまって避難することができ、約35日間寝起きを共にし、大きな混乱は起きませんでした。その経験をふまえ、利用者を離散して避難させると不安と不穏を抱かせてしまうのではと心配でした。そして、安全を確認しながらできるだけ島外避難はしないと考えていました。しかし、大島老人ホームも絶対安全とはいえず、ホームの東側遠方には沢があり、強い勢力の台風に襲われ大雨の場合には、土砂崩れが起きる可能性はゼロではありません。万が一のことを考え、藤田さんは次のような対応を取ることを決めておきました。東側にある2 階部分のご利用者を西側に避難させ、土砂が西側施設に入ってこないように東側と西側の間にある防火扉を閉めて土のうを積み、さらに、東側の居室の掃き出し戸数か所を全開し、流れ込んだ土砂を下り坂の方に流すようにしました。今回は幸いにもホーム付近では土砂崩れは起きず、利用者は無事で平穏な生活を継続することができました。

 

今後の福祉避難所開設の流れを町と確認

今回の経験をふまえ、大島老人ホームでは災害時の福祉避難所の開設について町担当課と話し合いました。今後、福祉避難所を設置する場合は、町が施設に避難所開設を要請して管理者を置き、収容人数や対象者、送迎方法、スタッフなどについて調整することとしました。

平成26 年2 月には、低気圧が接近・通過により関東地方は大雪になりました。大島は雨の予報で、危険区域の要援護者の受入れを実施しました。今後の要援護者の受入れについては、人数の規模により避難先を検討し、①少人数の場合は仮設住宅の集会室かおおしま健康センターとし、②人数が多い場合は、大島老人ホームで受け入れる等、大島町と協議しています。

また、災害時における福祉避難所開設に伴う確保備品を定めました。在宅要援護者避難受け入れ用として、60 人分の物資を大島町より預かり、施設に保管して非常時に備えています。

 

これからの課題

今回、福祉避難所を設置するためにデイサービスを休業しました。今後、同じような対応を行った場合、デイサービスを休業した際の収入減について、どのように対応するか町と協議をすすめています。

土石流災害から1 か月後、職員は落ち着いた状況も見られるようになりました。しかし、島外から来て勤務していた職員が退職して島を出て行ったり、住居が被災し、精神的に不安定になっている職員がいるなど、まだまだ安定には至っていません。藤田さんは「利用者の生活が平穏に過ごせるように職員は頑張ってきた。今後は、幹部職員が中心に職員のメンタル面を配慮しながら、協力しあって運営していきたい」と話しました。

数年前より大島老人ホームでは、災害のために大型発電機等の投資をする話がありましたが、職員間で意見が分かれました。「いつ来るかわからない災害に投資するよりは、今必要な物を揃えて欲しい」、そんな意見もありました。結局、2 千万円の投資ができず、施設機能を維持するのに必要な大型自家発電機は未設置のままです。

藤田さんは「最近は『災害は忘れる前にやってくる』、用心に勝るものはない。今後も施設の防災体制の整備に力を注いでいきたい」と話しました。

 

 

「平成25 年台風26 号等による大島町の被災に対する高齢者施設福祉部会支援活動報告書」(PDF)

 

 

取材先
名称
(社福)椿の里 大島老人ホーム
概要
(社福)椿の里
http://care-net.biz/13/tubakinosato/

タグ
関連特設ページ