佐藤 光則さん
あらまし
- ウォーキングサッカーを通じて、誰もが楽しみながらスポーツを続けられる環境づくりをすすめる日本ウォーキングサッカー協会の佐藤 光則さんにお話をうかがいました。
サッカー本来の楽しさとは…?
私は5歳の頃から50年近くサッカーを続けてきました。若い頃はプロ選手をめざしていましたが、膝の故障により断念。その後は子どもや大人の指導をしながらプレーを続け、40代からシニアサッカーを楽しむようになりました。今でも現役で、シニアの全国大会で3位になったこともあります。
アマチュアとはいえ競技志向でやっている現場では、勝ち負けに極端にこだわるチームや選手もいます。試合ではマナーが悪い人もいるし、時には殺伐とした雰囲気になって激しいプレーでけが人が出てしまうこともあります。また、上手な人は試合に出続けられるけれど、そうでない人はずっと出られずに、辞めていってしまいます。チームメートとも「サッカー本来の楽しみ方とは違うことをシニアになってもやっている。これって違うよな」と話していました。
そこで、みんなが試合に出られて楽しみながら勝利をめざすシニアサッカーの普及と、社会貢献の意味も込めて障害者サッカーを応援することを目的として、2015年にオンセドリームチームプロジェクトという取組みを始めました。ちょうどその頃、日本サッカー協会グラスルーツ推進部の方から「イングランドにシニアがプレーするおもしろいサッカーがある」と教えてもらい、活動に取り入れたのがウォーキングサッカーに関わるようになったきっかけです。
体験会などを開催しているうちに自治体やJリーグクラブをはじめ多方面から声がかかるようになったので2017年に一般社団法人を立ち上げました。
「歩くサッカー」の魅力
ウォーキングサッカーは、その名の通り「歩くサッカー」です。ボールに関与する、しないに関係なくすべてのプレーヤーは走ることができません。また接触やスライディングも禁止です。こうした基本ルールがあるため、年齢、性別、体力、技術、サッカー経験や障害の有無を問わず、誰もが一緒にプレーできます。走らないので膝や筋肉へ負担をかけることなく、軽いジョギングよりも多くの活動量が得られるなど、運動効率がよいのも特徴です。
私自身、初めてプレーした時は衝撃的でした。ぶつからないように相手の前で止まる、力量を感じ取って相手がプレーをやり切るまで待つなど、相手をリスペクトしながらゲームをします。ゆっくりとした運動なので、たくさんの人とコミュニケーションを取ることができます。そこには参加者全員が心から楽しんで、子どもみたいに笑いながらプレーするサッカーの原点がありました。また、走力でカバーできない分、動き方を考えて駆け引きで戦わなくてはいけないので、スポーツとしては単純ですが奥深い面もあります。
障害特性を超えてつながる
2018年3月には日本障がい者サッカー連盟の主催で、アンプティ(切断障がい)、CP(脳性麻痺)、ソーシャル(精神障がい)、知的障がい、電動車椅子、ブラインド(視覚障がい)、ろう者(聴覚障がい)の7団体の選手と健常者が一緒にウォーキングサッカーをする「まぜこぜスマイルサッカー」というイベントを行いました。
各団体でルールが整備されているし、障害特性も違うので一緒にゲームをするのはさすがに難しいかな……と思っていましたが、やってみたら大成功。その後の懇親会では、障害当事者の方が「こんなに楽しい運動は初めて!」「今度はこうしたらいいんじゃない?」といった感想やアイデアを積極的に出してくれました。お互いを思いやるウォーキングサッカーなら、障害があってもなくても、みんなで仲間になれるとあらためて感じました。
今後の普及に向けて
超高齢社会を迎え、介護や医療分野からの問合せも増えているので、今後は指導者の育成に力を入れていきたいと考えています。ウォーキングサッカーをひとつのきっかけとして、誰もが楽しみながらスポーツを続け、仲間をつくり、そして健康増進につながるような取組みが広がっていくことを願っています。
https://j-wfa.jp/