NPO法人多摩の医療健康増進フォーラム
子どもたちに「へぇーっ!」を言わせたい。〜医療や介護の現場を見て、学んで、体験しよう!〜
掲載日:2018年8月13日
2018年8月号 TOPICS

 

あらまし

  • 府中市内の医療・介護の従事者たちの有志によるNPO法人多摩の医療健康増進フォーラムでは、毎年「ひと・生活・医療フェスタ」を開催しています。今年は平成30年6月10日に開催され、5年目となり、当日は800人を超える来場がありました。このイベントは、市民が会場に設けられた医療や介護の「現場」にチャレンジして「見て、学んで、体験できる」ことが特徴です。

 

府中市高齢者支援課の石谷佳代さんは「一つの職種だけのイベントではこんなに多く人は集まらない。医療と介護の連携があるから良い」と話します。また、地域包括支援センターあさひ苑センター長の清野哲男さんは「子どもに仕事の内容を知ってもらうことを通じて、大人にも『あなたにもできることがあるよ』と伝えることができる場になっている。施設・事業所の職員にとっては自分の仕事を知ってもらう貴重な機会」と考えています。

 

小中学生に触れてもらう福祉

当初は小学校のみにチラシを配布していましたが、現在は中学校にも配布しています。学校と顔の見える関係を築きたいという想いから、運営スタッフが直接手渡しでチラシを届けに行って、配布を依頼しています。前年度参加した小学生が次は友達を連れて参加することもあります。昨年は夏休み時期に開催し、「夏休みの自由研究にどうぞ」と謳うなど小学生に関心を持ってもらえるように工夫しています。また、各ブースにちなんだ内容のクイズラリーも用意し、各ブースで体験したらカードを1枚渡します。集まったカードの枚数によってお土産がもらえるようになっています。

 

各ブースにちなんだクイズラリー

 

清野さんは「『困っている人を見たらどうしよう』『誰にでも優しく』という気持ちはみんな持っている。とくに小学生は体験を通じて『人の気持ちを察する力』をつけてほしい」と話します。

 

実験コーナーと銘打って訪問介護の現場を体験

 

訪問介護事業所なないろの山岡広法さんは、ブースで介護を体験してもらうための工夫を重ねてきました。「介護の仕事を伝える際、看護のブースのように看護師さんの制服コスチュームを着るなどのような『カタチ』ではかなわない。介護は『目と耳で感じる』ことが特徴。つまり、観察力とコミュニケーションがあって、手を動かす。とはいっても、それを体験してもらうのはなかなか難しい。子どもにとってこのイベントは介護に触れる最初の入口なので、とにかく興味を持って、楽しんでもらうようにしている。あえて『実験コーナー』と貼紙をしたり、リフトに乗る体験を用意したり。興味を持つきっかけがあれば、体験をしながら伝えていける。例えば、『リフトは足が地面につかないと怖いよね』とか。そして、中学生にはさらに言語化した+αのものを伝えて、『明日学校で何を伝えよう?』をコンセプトにしている。とにかく『へぇーっ!』を言わせたい」と話します。

 

訪問介護事業所なないろ 山岡広法さん

 

大人にも気づいてほしい

小学生の子どもに付き添って保護者も多く参加しています。このイベントで大人に介護のことを知ってもらうと、後日、事業所へ介護の相談に来てくれることもあるそうです。清野さんは「よく健康で長生きしなさいというが、気をつけないといけないのは30〜40代。そういった層が関心を持つことは大切」と指摘します。

 

NPO法人多摩の医療健康増進フォーラムの芝祐信さんは、「医療・介護の問題をほうっておけないと気づき、それを日常的な問題として興味を持ち、一緒に考える。このサイクルがとても大切。講演会だとすでに関心を持っている人が集まるが、体験型フェスタはいかに市民に関心を持ってもらうかが問われる。それを医療・介護の専門職が場をつくる取組みとして始めた」と話します。

 

 

NPO法人多摩の医療健康増進フォーラム 芝祐信さん

 

市民とともに歩むまちづくり

参加する専門職側にも、他の事業所や職種の人たちとともに市民に広く接することに大きな意味があります。山岡さんはこのイベントについて、「これだけの市民や関係者と関われて、人に伝えるという経験は、人が興味を持つポイントや伝えるコツを学べるので、自分たちとしても勉強になり、有意義な機会」と言います。

 

芝さんは「運営側の人たちは、医療や介護に関することを市民に何が還元できるかについて、それぞれ異なる発想を持ち寄っている。見返りを求めず、市民に大切なことを知ってもらうということを最優先に思える人たち」と話します。さらに芝さんはさまざまな専門職が関わって、目標が一緒だからできるイベントだと考えています。「『がんは医療、介護は福祉』と分野ごとにくくられがちだが、一人の患者には多様な職種の連携が大切。そして『知っていたら違う方法を選択していたのに』という市民を一人でも減らしたい」と芝さんは強調します。そして「自分たちのまちのこと、介護のこと、充実した社会生活に関することを市民に気づいてもらう働きかけを通して、市民とともに医療や介護のミッションに取組んでいきたい」と今後の展望について話します。

取材先
名称
NPO法人多摩の医療健康増進フォーラム
概要
NPO法人多摩の医療健康増進フォーラム
http://ctsc.or.jp/
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