(社福)二葉保育園  二葉乳児院 保育士 青木 晴香さん
悩んだときだからこそ、次へ進むチャンスになる
掲載日:2018年9月26日
2018年9月号 福祉のお仕事通信

青木 晴香さん

学生ボランティアと一緒に作成した作品と。保育以外の施設の仕事にも携わっている。

 

あらまし

  • 保育士として仕事と真摯に向き合い、乳児院で働く青木晴香さんにおしごとの魅力を伺いました。

 

私のしたかったことはこれだ!

学生のころから子どもの心の居場所をつくりたいという思いがあり、教員養成系の大学で学びました。在学中に小学生との触れ合いを通して、もっと早い段階での子どもや家族に関わりたいと思いが変化し、保育士をめざしました。新卒では無資格だったことやその後の私生活の変化もあり、現職の乳児院で働くまでにNPO法人の幼児教室・託児所と、企業が請け負う院内保育所の二か所で働きました。

 

恥ずかしながら、その頃は乳児院の事をよく知らなかったのですが、見学のときにたくさんの赤ちゃんが家庭で暮らせない現実を見て衝撃を受け、「私がしたかったことはこれだ!」と感じました。その感覚は忘れずにいようと思っています。

 

入職後は1、2歳児の暮らすユニット制の居室、2歳児以上対象の小規模ケアの居室、0歳児室を経験し、7年目から8年目にかけて約一年間、産・育休をいただきました。復帰後も周囲の協力のもと休業前と同様に働き、昨年度は0歳〜対象となる縦割りの小規模ケアの居室のリーダーをしました。今年度は息子が小学校に上がるため、職場の理解をいただき全体フリーとして動いています。前職やそれまでの自分の育ち、わが子の育児を含め、全てに意味があっての今と感じます。「今」もきっと次の何かにつながると思うと楽しみです。

 

家庭復帰や里親委託などにより短期間で帰れるお子さんがいる一方、入所が長期化するお子さんもいます。個々のケースで最善の形を探る中、乳児院から幼稚園に通うお子さんもいます。そのうちの一人が「幼稚園のみんなには、なんでお母さんが一人しかいないのかな?(自分には)お母さんがたくさんいるのに」と院の職員に話したそうです。実母、交流中だった里母、院の担当職員たちのことを指していたのだと思います。「母」というものについての整理は必要ですが、母性的養育が伝わっていたと感じる言葉でした。

 

続けていてよかった

また最近、9年前に担当したお子さんが来院してくれる機会がありました。乳児院から児童養護施設に措置変更の後に里親委託され、里親の集いに来てくれたのです。その子の育ちを丸ごと受け止め、乳児院とのつながりを持ってくださった里親さんに感謝しています。入所中の様子を直接話すことや、院に保管していた写真を一緒に見ることが出来ました。「これ、私だ!」と自分の写っている写真を笑顔で見る様子に、心が温かくなり、続けていて良かったと感じました。

 

残念ながら中堅になる頃に辞めてしまう職員も多く見てきました。仕事に真摯に向き合ったがゆえに辞めていってしまう姿もあり、もったいなく感じます。続けるほど向き不向きの見えてくる仕事だと思うので、次の道に向かうのは悪いことではないですが、もうひと踏ん張りしたら子どもたちと伝え合えることが間違いなく増えます。仕事ですから、行き詰ったり悩んだりすることは当然あります。停滞感を抱くこともあります。しかし振り返ってみると、そういうときこそ、仕事に向き合うことで次の段階に進めるチャンスだったと実感します。そして、仕事の面白味は毎年深まっています。

 

より一層の学びと工夫が必要

思いのある職員が続けていけるためには、意見を言える、実践できる、適切に評価される場や環境が、それぞれの現場レベルで大切だと思います。また若い職員はうまくいかないことがあっても諦めず挑戦し続けて欲しいです。私自身も、うまくいかないことばかりでした。

 

今後、乳児院に求められる役割が変化していく中、職員の力を今まで以上に高めていかなければなりません。

 

本体施設も小規模化へすすんでいくでしょう。子どもにとって良い面が大きい半面、職員が大切なことを伝え合う、学んでいくには難しさもあります。長期的に見て本当に良い環境がつくれるよう、より一層、一人ひとりの学びと組織としての工夫が必要だと感じています。

 

プロフィール

  • 青木 晴香さん Haruka Aoki
    (社福)二葉保育園  二葉乳児院 保育士
取材先
名称
(社福)二葉保育園  二葉乳児院 保育士 青木 晴香さん
概要
(社福)二葉保育園  二葉乳児院
http://www.futaba-yuka.or.jp/int_nyu/
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