(社福)豊島区民社会福祉協議会
地域共生社会の実現は法人ネットワークの取組みから
掲載日:2018年11月8日
2018年11月号 連載

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             (左から)豊島区民社協 総務課 千々布 祐貴子さん
                       総務課 課長 広瀬 孝一さん
                                 地域相談支援課 課長 大竹 宏和さん
                               地域相談支援課 チーフ 田中 慎吾さん

 

あらまし

  • 平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。

 

豊島区では、平成3年から開催する「福祉施設長会議」を前身とし、23年3月に「豊島区社会福祉法人ネットワーク会議」が設立されました。29年4月からは区内26法人46施設事業所による「福祉なんでも相談窓口事業」を開始。コミュニティソーシャルワーカーと各施設・事業所が連携し、顔を合わせる機会を大切にしながら取組みをすすめています。

 

 

既存のしくみを活かしたネットワーク

平成3年から豊島区は区内27施設の施設長が集まる「福祉施設長会議」を開催し、福祉の現状と課題や地域福祉推進における施設・事業所の位置付けと役割などについて協議してきました。6年には51施設となり、その後も毎年定期的に情報共有や協議を重ねてきました。22年に「豊島区社会福祉法人ネットワーク会議」と名称を変え、27年度からは国の動きなどをふまえ、地域公益活動について協議を開始しました。

 

そして29年4月から区市町村域における連携事業として、26法人46施設・事業所による「福祉なんでも相談窓口」を開始しました。事業の立ち上げに携わった豊島区民社協総務課の千々布祐貴子さんは、「事業化にあたり、27年度に法人対象のアンケート調査を行った。事業の候補には子ども食堂、学習支援、緊急ショートステイなどの案もあがったが、26法人全体で取組めるものとして相談事業に決定した」と、包括的相談事業の実施が決まった経緯を振り返ります。また、地域相談支援課コミュニティソーシャルワーク担当の田中慎吾さんは「豊島区民社協には、以前からコミュニティソーシャルワーカー(以下、CSW)が配置されていて、施設・事業所がCSWとの連携のもと、相談事業に取組める土壌があった」と豊島区の強みを強調します。

 

分野の枠を越えて取組む相談事業

福祉なんでも相談窓口では、①相談は原則断らない、②相談されたがどう助言して良いかわからない場合は、他の機関や団体につなぐ、③気軽に立ち寄れる場所をめざす、④福祉全般の課題を共有し地域づくりに生かすという方針があります。窓口開設時間は各施設・事業所が対応できる時間とし、対応できる時間は看板を設置したり、ポスターを掲示しています。また、事業開始時から手話通訳派遣センターに依頼して手話通訳者を派遣、相談時に立ち会ってもらえるしくみもあります。

 

福祉なんでも相談窓口の29年度実績は35件。これは相談窓口の看板やポスターを見て相談に来所したケース、あるいは、普段の会話の延長線から自分の施設分野以外の相談があったケースなどを相談件数としてカウントしています。相談内容は、高齢者施設で介護の相談、保育園で子育ての相談といった各施設の本来業務の延長線上の相談が多いものの、住まいや収入など分野横断的な相談もあります。傾聴で終わることやCSWを介する場合もありますが、施設・事業所から直接福祉事務所や生活困窮者自立相談支援機関などにつなぐこともあります。

 

 30年度作成リーフレット           「福祉なんでも相談窓口」看板

 

CSW配置圏域ごとの地区連絡会で地域課題を共有

相談事業開始前は、区全域での会議のみを開催していましたが、加えてCSW配置圏域(8圏域)ごとの「地区連絡会」を開くことにしました。持ち回りで各施設・事業所を会場とし、担当地区のCSWや福祉なんでも相談窓口の担当者が出席しています。相談窓口では統一した相談票を使用し、相談内容は16項目に分けて集計しています。29年度の相談内容は介護のことや収入・生活費のこと、子育てのことが目立ちます。受けた相談は同施設・事業所内で対応しているケースが多くなっています。田中さんは「精神障害がある方が親の介護をしている、いわゆる8050問題のケースを障害と高齢の両分野の職員同士で相談する機会を設ける。また、季節のイベントを実施する際、子どもたちが高齢者施設を訪問することは多くあるので、障害者施設を訪問する機会も作ってみようかと話題になったこともある」と話します。

 

千々布さんは「29年度から地区連絡会を開催したことで、施設・事業所同士が少人数で話せる機会となり、今では相談件数を増やすための周知方法や工夫をそれぞれ考えるようになった。前年度に比べて、ネットワークに対する興味や関心度が向上した印象を受ける」と言います。

 

顔の見える関係からできた地域活動

ネットワーク、CSW、施設・事業所が、それぞれ顔の見える関係が築けたことで始まった地域活動があります。

 

きっかけは特別養護老人ホーム(以下、特養)からCSWに「地域で必要とされる活動に地域交流スペースとして、会議室を活用してほしい」と相談が入ったことでした。その後、特養やCSWのほか、隣接する別法人の保育園、地域住民による会議体を設け、地域課題について話し合いました。そして、「高齢者と子育て世帯の交流の場づくり」をテーマに取組むことになり、現在は月に1度、特養の会議室にて、子どもの体重測定の機会や子育て相談コーナー、喫茶スペースを設けて高齢者と子育ての親子が一緒にくつろげる、地域の縁側のような多世代交流の場所ができました。ここには、地域福祉サポーター(地域の中で、気づき、声をかけ、CSWとともに活動する人材)を中心に、民生児童委員、子ども家庭支援センターなど、身近な地域の関係者も関わっています。

 

区市町村ごとの社会福祉法人のネットワークで関係づくりや情報共有がなされ、全体で連携する相談事業は施設・事業所職員が地域生活課題に向き合う機会となっています。さらに、CSWが関わる中、地域の多様な関係者がつながることで、施設・事業所ができることと地域のニーズをつなげて、新たな地域活動の創出へと広がってきています。

地域相談支援課課長の大竹宏和さんは「相談事業を始めたことで、施設・事業所同士が身近に見えるようになった。社会福祉法人の使命を考えると、これからは生活困窮などさまざまなニーズに応える土壌を整えて、地域住民が住み慣れた地域で暮らし続けられるように、ネットワークを活かしてバックアップしていきたい」と抱負を話しており、今後の取組みが期待されます。

 

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取材先
名称
(社福)豊島区民社会福祉協議会
概要
(社福)豊島区民社会福祉協議会
http://toshima-shakyo.or.jp/
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