たいとう地域包括支援センター、(社福)足立区社会福祉協議会、府中市地域包括支援センターあさひ苑
地域に潜在するキーパーソンのいない人たち
掲載日:2018年12月7日
2018年12月号 NOW

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あらまし

  • 地域に暮らしながら、身近に頼ることのできる家族・親族等(キーパーソン)がいない人たちがいます。そのような人たちの中には、これまで家族が支えていたものの、両親や配偶者の高齢化あるいは病気などでバランスが崩れ、深刻化して課題が顕在化することがあります。今号では、地域包括支援センター、社会福祉協議会の事例から、そのような人たちへどのように関わっているのかその現状と実践を考えます。

 

連携した支援で困りごとをサポート  ―たいとう地域包括支援センター

台東区の人口は約20万人。7か所の地域包括支援センター(以下、包括)があります。たいとう地域包括支援センターの担当エリアには、雑居ビル、タワーマンションなどが多く、転居してきた住人と昔からの住人が入り混じって生活しています。

 

たいとう地域包括支援センターには医療機関、民生児童委員、地域住民、商店などさまざまなルートで相談が寄せられます。相談には、周囲にキーパーソンがいないため本人の生活課題が深刻化し、緊急を要する状態であることが少なくありません。

 

例えば、もの忘れがあるひとり暮らしの70代のAさん。未婚で親族と疎遠なため、キーパーソンとなって動ける人がいないケースでした。公共料金等の未払いなど金銭管理ができておらず、包括職員が同行で医療機関を受診すると、認知症と診断されました。そこで、ケアマネジャー、社協、区役所と連携をとりながら、介護保険サービスと社協の地域福祉権利擁護事業を利用することになりました。その後、疎遠だった親族の連絡先が判明したものの、その親族も高齢で積極的な関わりが難しく、施設入所を検討。包括職員の同行で、Aさんは複数の施設を見学し、親族が保証人となって入所に至りました。

 

このケースでは、各機関が連携することで切れ目のない支援ができました。しかし本来包括では、身元保証や相続に関する問題は対応できません。病院や施設から保証を求められた場合には、本人の状況に応じて適切な制度につなげることになりますが、この事例では動けるキーパーソンがいないため包括職員が随時判断を求められ対応しました。

たいとう地域包括支援センターの向坂修也さんは「キーパーソンのいないケースの場合、緊急性はあっても、あわてて判断せず周りに意見を聞くようにしている。ご本人の意思を尊重し、対応することが大切」と話します。

 

たいとう地域包括支援センター

 

その人らしく地域で安心して暮らせる生活支援  ―足立区社協「権利擁護センターあだち」

キーパーソンのいない人は、入院や施設入所時の対応、死後事務のニーズが高くなります。

 

足立区の人口は約68万人。高度経済成長期には広大な土地に工場や団地が建ち、多くの人が集まりました。低所得者、生活保護世帯の比率が比較的高いのも特徴です。

 

足立区社会福祉協議会「権利擁護センターあだち」は、平成17年4月から、社協の独自事業として身寄りのいないひとり暮らしの高齢者が安心して暮らせる生活支援サービス「高齢者あんしん生活支援事業」を開始しました。以前からセンターには、入院や施設入所時の身元保証に関する相談が寄せられていました。これをきっかけに身元保証に準ずるサービス提供について検討し、高齢者自身が終末期まで安心できる人生設計が立てられるように、包括的な相談と具体的な支援サービスに対応することを目的に事業を開始しました。

 

寄せられる相談の多くは、包括やケアマネジャー経由です。区内25か所の包括に事業を周知しており、包括から社協へ相談が入ります。事業が始まってみると、親族との関係が希薄になっていて、周囲に動けるキーパーソンがいないケースが多くみられました。

 

利用対象は、区内在住で契約内容を理解できる判断能力のある65歳以上のひとり暮らしの方。「支援可能な親族がいない」「資産が3千万円以下」などの条件があります。利用にあたっては、年会費2千400円を支払い、将来判断能力の低下などにより支払いができなくなった場合の入院費3か月分と火葬代相当として52万円を契約時に預託します。

事業を担当する職員は7人。緊急時に備えて、夜間や休日も携帯電話を交替制で持ちます。利用者へは月1回の電話、半年に1回は訪問し、体調などに変化がないか確認しています。入院した場合は、保証人に準じたお手伝いに加え、希望があれば、日用品の入院セットを病院へ持っていったり、医師による説明の場に同席もします。利用者が亡くなった場合、契約時に作成した公正証書遺言に従い、遺言執行者の司法書士等と連携して葬儀などを行います。これまでに契約したのは約90人。現時点で約60人が継続して利用しています。

 

初回相談から面談、公正証書遺言を作成し契約するまでに最低約4か月。この契約準備期間は利用者にとって自分の「老いじたく」を考える時間であり、入院時の対応の他に、死後のことについても決めておきます。利用開始後、状況によっては成年後見制度や生活保護へつなげます。

 

権利擁護センターあだち課長の米村美亜さんは、「この事業ではひとりの利用者を職員2人体制で対応している。地域福祉権利擁護事業も兼務しているため、成年後見制度へ移行が必要なときの判断などノウハウが活かされ、長期利用者へ切れ目のない支援が円滑に行える」と話します。今後の契約者増に応えていく必要があり、そのための人員体制を確保することが課題です。

 

権利擁護センターあだちの相談窓口

 

足立区社協
「高齢者あんしん生活支援事業」
パンフレットと様式

 

地域に目配りその人に寄り添った支援  ―府中市地域包括支援センターあさひ苑

府中市の人口は約25万人。市内に11か所の包括があります。近年、都市部から転入してくる高齢者が増え、介護ニーズの増加が予想されます。

 

府中市地域包括支援センターあさひ苑の担当エリアには、人口約3万人、高齢者は6千人、うち介護が必要な方は800人、包括がリスト化した見守りが必要な要支援者は200人。常に困りごとが深刻化しないよう目配りしています。同センター長の清野哲男さんは「キーパーソンがいない人は、これまで人とつながらず助けてと言わずに生きてきた人が多い。そのため、支援の入口部分での信頼関係づくりが重要。支援を受けたいと思える気持ちになるよう寄り添いながら対応する必要がある」と話します。

 

療育手帳の制度は昭和48年から始まり、当時手帳を持つことは任意でした。地域と接点なく暮らす知的障害のある60代のBさんは、両親の意向により療育手帳はなく、比較的裕福な家庭であったことから福祉サービスを利用しないで暮らしていました。しかし、両親の相次ぐ病気で自立した生活が困難な状態となり、民生児童委員の訪問から包括への報告でBさんの存在がわかりました。Bさんにはサポートが必要でしたが、知的障害に加えて高齢となり判断能力が低下し、従前から地域とのつながりがなかったことで信頼関係を結ぶことが難しい状況でした。また、Bさんが自身のおかれている困難な状況がわからないなどの課題もありました。そうした中、包括では何度も訪問を重ね、寄り添いながら病院の受診や必要な支援へつなげました。清野さんは「周囲に気づく人がいて若い時期に相談があったら、Bさんにとってより安心した生活支援のサービスへとつなげられたかもしれない」と話します。

 

包括には医療機関、薬局、民生児童委員、自治会などからキーパーソンが不在で本人も周囲も困っているケースの相談が寄せられます。そんなとき、現状をきちんと把握し、支援機関につなぐためには、もう一度信頼関係を作り直していかなければなりません。

 

府中市地域包括支援センター
あさひ苑 センター長
清野 哲男さん

 

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区部と市部の事例では、共通して「キーパーソンがいない」ことで、周囲が発見したときは深刻化していることがわかります。地域とかかわらず生きてきた人が、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、包括や社協ならではのノウハウを活かし、多くの関係機関と連携しながら、今後も切れ目のない必要な支援のできる地域づくりが必要です。

 

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取材先
名称
たいとう地域包括支援センター、(社福)足立区社会福祉協議会、府中市地域包括支援センターあさひ苑
概要
たいとう地域包括支援センター
http://www.seifuukai.or.jp/taitou/index.html
(社福)足立区社会福祉協議会
http://adachi.syakyo.com/
府中市地域包括支援センターあさひ苑
https://www.tama-dhk.or.jp/asahi/jigyo_zaitaku.html
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