大田区社会福祉法人協議会(おおた福祉ネット)
「おおた福祉ネット」で地域にある福祉の“縁”をむすぶ 〜共通課題の福祉人材対策、そして、エリアごとの取組みへ〜
掲載日:2018年12月7日
2018年12月号 連載

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あらまし

  • 平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人による「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。

 

大田区では、平成27年度に区内の法人が集って「大田区社会福祉法人協議会(おおた福祉ネット)」を設立し、複数法人が連携して体験型学習支援などの地域における公益的な取組みを行う「おおたスマイルプロジェクト」の推進、福祉人材の確保・育成・定着をめざした「おおた福祉カレッジ」などに取組んできました。活動から3年を経て、さらなる連携をすすめるべく、「おおた福祉ネット」のパンフレットを一年かけて作成しました。

 

 

児童分野の事業に取組んでいる(社福)大洋社では、緊急に対応が必要な数多くの母子を長年にわたって支援してきました。しかし、ふと予防的な視点に立ってみると、『もっと地域に対する取組みが必要なのでは…?』と思い当たりました。そのことを大田区社協へ相談したところ、連携できる法人で一緒に考えていこうということになりました。

 

そこで、平成27年7月に「区内社会福祉法人による地域公益事業を考えるつどい」を開催し、参加した21法人がさらに「場」を継続していこうとしたのが「大田区社会福祉法人協議会」です。まず取組んだのは、複数の法人が連携して体験型学習支援などの地域における公益的な取組みを行う「おおたスマイルプロジェクト」の推進。この取組みを推進しつつ、ネットワークの趣旨に賛同する法人が増え、今では40法人となり、親しみやすい「おおた福祉ネット」という愛称も付きました。

 

分野を越え、お互いを知り得意分野を活かす

事務局を担うのは大田区社協。地域連携係主任の菊地隼人さんは「ネットワークなので、『長』は決めず、フラットな関係であることが特徴」と説明します。運営は5つの幹事法人を決めて行っています。その一つの(社福)有隣協会の大竹伸康さんは「この場があってこそ始まったことはいくつもある。各法人に得意分野はあるが、お互いが近いようで遠い。知ることで視野が広がり、強みを活かせる」と話します。また、(社福)池上長寿園地域包括ケア担当課長の木下篤信さんは「高齢分野ではすでに事業種別や職能団体などの連携は図られているが、地域における公益的な取組みにはやはり分野を越えた連携が必要。自分の法人運営だけで精一杯な法人も少なくない」と話します。

 

設立から3年。今、重点的に取組んでいることの一つは、福祉人材・確保・育成のプロジェクト「おおた福祉カレッジ」。もう一つは、地域共生社会の実現に向けた取組みをすすめるべく、「おおた福祉ネット」を可視化するパンフレットづくりです。

 

「おおた福祉ネット」幹事法人のみなさん
社会福祉法人 池上長寿園/社会福祉法人 大田幸陽会/社会福祉法人 大洋社
社会福祉法人 有隣協会/社会福祉法人 大田区社会福祉協議会

 

共通課題である福祉人材対策を協働する「おおた福祉カレッジ」

大田区でも〝福祉人材〟の確保や定着をめぐる厳しさは各法人の共通課題です。まずは28年度からそれぞれの法人で行っている内部研修を他の法人にも試験的に開放するなど、できることから始めました。そして、29年度には17法人が協働して相談・面接会「ふくしのしごと市」を実施し、152人が参加。30年11月18日にも19法人が参加して2回目を行いました。チラシには「大田区の福祉の仕事にまるごと出会える日」と銘打ち、未経験者や転職希望者、60歳代以上、主婦など、地域の多様な人材を対象としています。子育て世代も来やすいよう、キッズスペースを児童分野の法人が担当する工夫もしています。

 

大田区社協地域連携係長の福本昌恵さんは「多くの人に福祉への関心を持ってもらいたい。法人のみなさんに固有の人脈があり、社協では思いつかないチラシの配り方も提案された」と話します。「広報」にもこういった各法人が持つ得意分野を活かせることに気づかされます。

 

また、未経験者に具体的なイメージを持ってもらうため、「ふくしのしごと市」ではテーマを設定して現場で働く人たちのトークセッションを行います。その人選では「シニア世代で誰か話せる人はいる?」「じゃあ、うちで」。これも複数の法人が連携するメリットの一つ。さらに、来てくれた参加者にアンケートを配り、福祉の仕事への不安などを把握し、次なる展開を考える参考にします。

 

多くの人たちに福祉の仕事への関心をもってもらうことを願う
「ふくしのしごと市」

 

地域を意識するには、「エリア」が重要

一年かけてようやく完成したパンフレット。(社福)大田幸陽会の勢古勝紀さんは「ネットワークに参加していても、どんな活動ができるかイメージができない法人もある。パンフレットづくりにあたり、幹事法人で手分けして、全法人を訪問しそれぞれの実情を把握した」と話します。

 

また、おおた福祉ネットでは区内を4つのエリアに分け、各エリアで法人の種別や業種を越え、さらには民生委員やNPOとも連携して「地域共生社会の実現」に取組むことを次なる目標にしています。地域を意識するためにも「エリア」で取組むことは重要です。(社福)大洋社のひまわり苑施設長の近藤真弓さんは「身近な法人がお互いを知ることが大切。おまつりや行事を案内し合うだけでも良い。例えば、高齢者や障害者の施設で子どもとの交流が必要ならば、うちには子どもたちがいるとか」。各法人が持つ力。それは施設や職員の専門性に限りません。利用者たち自身も地域に根差した法人の持つ大きな力なのかもしれません。

 

(社福)有隣協会の大竹さんは「それぞれの地域にある課題をどう解決するかが重要。そのためには社会福祉法人以外との連携も必要で、それをすすめるうえでも社会福祉法人側のネットワークに何ができるかを明らかにする必要がある」と話します。

 

広く対外的にも「おおた福祉ネット」を知ってもらうためのパンフレットづくり。そこで、力を借りたのは「プロボノ」です。企業人等の豊富な経験と知識を活かし多様な主体による地域貢献活動を支援する「東京ホームタウンプロジェクト」に手助けしてもらい、語り合った「実現したい思い」をプロボノのコピーライターが形にしてくれました。それは「福祉の現場でいままで手を差し伸べられなかった人にもっと柔軟な支援を提供したい」「思いを法人間でつなぎ、地域の自治会、そしてみなさんへと拡げ、共に福祉に向き合いたい」といった思いです。これも法人だけでは難しいことを市民の力を得て実現できた大きな経験の一つでした。

 

プロボノの手助けも得ながら一年かけて丁寧に作成してきたパンフレット

 

「ネットワークで福祉の〝縁(えん)をむすぶ〟存在となる」。これがパンフレットに謳う「おおた福祉ネット」のミッションです。区全域では共通課題の「福祉人材対策」、そして、4つのエリアごとに「地域共生社会の実現」。〝縁〟をキーワードに、この2つのプロジェクトをすすめていく取組みが始まっています。

 

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取材先
名称
大田区社会福祉法人協議会(おおた福祉ネット)
概要
(社福)大田区社会福祉協議会
https://www.ota-shakyo.jp/
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