摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園、郡家地域包括支援センター、高槻市社会福祉協議会、(社福)幸風会、(社福)みどりの町
大阪府北部地震と平成30年7月豪雨 高齢者、障害者、子どもを支えた人たち 〜見えにくい災害、そして、被災施設が多かった豪雨災害〜
掲載日:2019年1月8日
2019年1月号 NOW

 

早めの避難で豪雨災害から施設の高齢者の命を守るークレールエステート悠楽

「平成30年7月豪雨」により、岡山県倉敷市では6千件に迫る住家被害が出たほか、52人の方が犠牲になりました。そのうち51人の方が亡くなった真備町では、南側を流れる小田川が決壊し広範囲にわたって浸水しました。

 

真備町の2か所で高齢者福祉施設を運営する(社福)幸風会では、職員150人のうち約50人が被災。30人の自宅が水没し、非番の職員1人が亡くなりました。また、法人が所有する9台の車両と地域密着型特養のクレールエステート悠楽も水没してしまいました。しかし、同施設より高台にある特養のシルバーセンター後楽へ事前に避難をしていたため、一人のけが人も出さず、入居者29人とショートステイの利用者7人全員の命を守ることができました。

 

クレールエステート悠楽施設長の岸本祥一さんは「2年前にハザードマップを見て、平屋建ての自施設の所在地が5〜6メートル浸水するリスクがあることを知った。そのことが頭の片隅にあり、7月6日は昼過ぎから雨雲の動きを確認し、避難勧告が出た時点で利用者を避難させることを決めていた」と話します。

 

午後10時に避難勧告が発令され、理事長と避難を決定して職員を緊急招集。同時45分から職員約45人、車両11台で利用者のピストン輸送を開始しました。悠楽と後楽は車で5分程度と近かったことから、雨の中でも比較的スムーズにすすみ、深夜0時には全員の避難が完了しました。避難誘導後に急激に水かさが増してきました。岸本さんを含む24人の職員は施設の屋上へ垂直避難せざるを得なくなり、翌日救助されました。

 

悠楽は壊滅的なダメージを受けましたが、同地で一日も早い再開を目指すこととなり、入居者29人全員が他施設ではなく後楽での避難生活を選択しました。施設の復旧は着実にすすめられ、12月10日にはデイサービスが再開。被災から約半年となる31年1月19日には、利用者と家族、職員で慣れ親しんだ悠楽へ戻る予定です。

 

今回の災害対応について、法人本部長・統括施設長の矢吹和弘さんは「職員は指示待ちではなく自ら考えて行動してくれた。これまでの職員育成の成果が出ていた」とふり返ります。岸本さんは「利用者を安全に導くためには、決断力と行動力が必要」とし、「災害対策の基本は自助に尽きる。当事者意識をもって取組むべき」と今後の対策について話します。

 

左から  (社福)幸風会       法人本部長・統括施設長 矢吹 和弘さん
          岡山県社会福祉協議会          地域福祉部   主査 矢尾 直子さん
       (社福)  幸風会   クレールエステート悠楽 施設長 岸本 祥一さん

 

障害のある利用者の日常を取り戻すためにーみどりの町

(社福)みどりの町は、広島県三原市を中心に複数の障害福祉施設を運営しています。「平成30年7月豪雨」では、本郷地区にある障害福祉サービス事業所とよの郷が浸水被害にあったほか、道路の寸断や公共交通機関の不通、断水などにより、事業所の利用者やグループホーム入居者の生活に多大な影響が出ました。

 

とよの郷へは浸水により近づくことができず、7月8日の午前にようやく施設内に入ることができました。現場確認後、被害のなかった同法人施設で作っているパンやラスク、飲料水を配布しながら、独居利用者の自宅を訪ねました。

 

翌日からは事業所内の清掃や消毒作業を行うとともに、利用者や職員、地域住民を対象に施設内の井戸水を活用した給水支援とシャワー支援をはじめ、10日には炊き出しも実施。みどりの町理事長の岡田雄幸さんは「ここよりひどい被害を受けている地域へ水を渡すことしかできなかったが、困っている人に喜んでもらっただけではなく、とよの郷を知ってもらう機会になった」と話します。とよの郷所長の岡田文江さんは「何かしていないと不安でじっとしていられなかった」と言います。

 

三原市と東広島市内の14か所で暮らすグループホーム利用者84人は全員無事でした。しかし、水害の影響で通所作業所や勤務先が一定の期間休止したため昼食の用意が必要となり、同法人施設の食料を調達して対応しました。

 

通いの場が復旧すると、今度は移動手段の問題が出てきました。市内の道路はいたるところで通行止めなどになっており、電車も運休していたため、別便の送迎車や乗り継ぎの調整をしたり、迂回ルートを探したりするなど対応は困難を極めました。利用者の日常生活を取り戻すため、東社協知的発達障害部会による送迎支援なども受けながら対応しました。

 

グループホーム管理者の森永高治さんは「さまざまなリスクを分散して、彼らが地域の中で生きていく雰囲気を作ることが大切。『○○がほしい、○○のようにしてほしい』と具体的に助けてほしい内容を発信する力が必要」と支援を受ける力と伝える力が大切であると強調します。

 

左から(社福)みどりの町 とよの郷   所長  岡田 文江さん
                                                   理事長   岡田 雄幸さん
              みどりの町グループホーム    管理者   森永 高治さん

 

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取材先
名称
摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園、郡家地域包括支援センター、高槻市社会福祉協議会、(社福)幸風会、(社福)みどりの町
概要
摂津峡認定こども園・浦堂認定こども園
http://settsukyo.shojifukushikai.jp/
郡家地域包括支援センター
http://www.osj.or.jp/takatsuki/zaitakus/index6.html
高槻市社会福祉協議会
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