(社福)文京区社会福祉協議会
地域のみなさんと共に、地域を良くしたい 〜本でつなぐ文京の未来『夢の本箱』〜
掲載日:2019年2月19日
2019年2月号 連載

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文京区地域公益活動ネットワークのみなさん

(前列右)文京区民生・児童委員協議会 会長 下田 和惠さん
(前列中)文京区地域公益活動ネットワーク 委員長・(社福)文京槐の会 松下 功一さん
(前列左)文京区社会福祉協議会 事務局次長 田口 弘之さん
(後列右)総務係長 清野 貢さん
(後列左)総務係 上村 紗月さん

 

 

あらまし

  • 平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。

 

文京区では、平成28年8月8日に「文京区地域公益活動ネットワーク」が設立されました。2年間にわたる議論を経て、30年6月からは区内23法人の連携による「夢の本箱」を開始。社会福祉法人だけでなく、「地域のみなさんと共に、地域を良くしていく取組みがしたい」という想いを実現させています。

 

 

設立の経緯

平成28年8月、文京区社協の呼びかけにより、区内にある社会福祉法人(以下、法人)が互いに連携・協働を図るためのネットワークとして文京区地域公益活動ネットワーク会議(以下、ネットワーク)を開催しました。区内の法人が分野の垣根を越えて一堂に集まる機会はこれがはじめてのことで、1年目は互いの事業を把握することや、地域公益活動に関する情報や認識を共有することに力を入れました。

 

29年度には、各法人から複数法人の連携による地域公益活動の取組みを望む声があがり、具体的な活動を検討するため、区内の法人に対しアンケート調査を行いました。これにより、各法人が抱える課題や資源の状況が明らかになりました。活動にあたっての人材や資金の確保は課題として共通しているものの、法人同士が連携し互いの強みを活かすことで、解決できることもわかりました。

 

その後のネットワークの議論の焦点は地域ニーズの検討でした。事務局を務める文京区社協事務局次長の田口弘之さんは「法人がどのような地域課題に取組んでいくのか、自分たちには何が求められているのか、この問いに多くの時間を費やした。法人同士が膝を突き合わせ、地域のことを考える契機になった」と話します。

 

地域ニーズの検討にあたっては、地域の課題をよく知る文京区社協の地域福祉コーディネーターに協力を求めました。また、検討をすすめ、具体的な事業の企画をつめていく段階では、事務局と地域福祉コーディネーターが全法人を訪問し、事業化にあたって疑問点の解消や課題解決に努めるとともに、法人同士の連携によって取組むことの意義をあらためて確認し合いました。そして、これらの検討が後述する法人連携によるプロジェクト「夢の本箱」として実を結びました。

 

30年度には、一部の法人が負担するのではなく、全法人が連携して地域公益活動を実施できるよう組織体制を整えました。総会、幹事会のほか、3つの部会(①企画・協働推進部会、②広報戦略部会、③財務部会)を設け、すべての法人が何かしらの役割を持って活動に取組めるようにしました。

 

ネットワークの委員長を務める(社福)文京槐の会の松下功一さんは「みなさんお忙しいので幹事を引き受けてくれる方はいないのではないかと心配した。ところが多くの方が積極的に名乗りを上げてくださり、『社会福祉法人が文京区のお役に立つには……』と熱く話し合っている」と各法人が主体的に参加している様子について話します。

 

地域に開かれた法人を目指して 〜「夢の本箱」

地域公益活動は、既存の制度では対応できない人々を支えることを本旨とする取組みですが、広く一般に知られていないという現状があります。ネットワークでは、地域公益活動を通じて、法人が地域に開かれた存在であることを地域に知ってもらいたいという想いがありました。

 

そこから始まったのが、本を通じて地域がつながる夢のプロジェクト「夢の本箱」です。地域住民から読み終えた本を寄付してもらい、それを換金して、法人が実施する子ども食堂の費用(子どもの食事代)等に充てる取組みです。30年6月の事業開始にあたっては、東京都地域公益活動推進協議会の事業費助成により、本を受け取るための箱と広報用リーフレットを作成しました。

 

現在、区内23か所の事業所に「夢の本箱」を設置しており、回収やリサイクルによる換金は区内企業の協力を得て行っています。

 

文京区では年間、千人以上の子どもが就学援助を受けています。その中には、給食のない夏休みにご飯が食べられず、体調を崩してしまう子どももいました。文京区社協総務係の上村紗月さんは「他の地域に比べて対象となる子どもの数は少ないが、少ないからこそ、課題が見えにくく、制度になりにくいという現状がある」と話します。また、ここ数年で、地域では多くの子ども食堂が開催されるようになりました。しかし、夏休み期間は長期にわたるため、通常よりも多くの開催が必要とされます。そこで、法人も地域の方々と共に汗を流す取組みとして、子どもたちへ「食事」と、学校や家以外に何かあったときに駆けこめる「居場所」を提供することにしました。

 

30年度は3法人で夏休み期間中に食事や居場所を提供する取組みが開催されました。開催にあたっては企画段階から当該地区の地域福祉コーディネーターが法人担当者に伴走し、地域住民の協力を仰ぎながら準備と当日の運営を支援しました。

 

本を通じて法人と地域がつながる

本の寄付だけでなく、食事の提供や居場所の運営にも地域の民生児童委員やボランティアなど、多くの住民が携わっています。文京区民生委員・児童委員協議会会長の下田和惠さんは「『夢の本箱』という素敵な名前は、未来ある子どもの夢を育む活動にぴったり。安心して過ごせる居場所づくりと、心も温かくする食事支援などに地域から協力していきたい」と話します。

 

さらに、取組みの趣旨に賛同した区内の企業がCSRの一環として「夢の本箱」の設置に協力を申し出てくれるケースも出てきています。30年10月には企画・協働推進部会が文京区社協の企業貢献ネットワーク会議(※)で「夢の本箱」の周知活動を行うなど、地域の課題解決に向けて新たなつながりが生まれつつあります。

 

上村さんは「地域において制度だけでは支援することが難しい課題が増加している。これらの課題に対応していくためには、その地域の実情に応じた地域づくりが求められている。文京区は多くの名作文学が誕生した街であり、本というツールは地域の人たちにとって、とても親しみやすいものであったと感じる。日々福祉に携わる法人が地域にあるニーズを把握し、地域を良くしていく取組みを積極的に地域のみなさんと共にすすめていきたい」と話します。

 

法人では、本を通じて地域住民と顔を合わせる機会が増え、地域のことを教えてもらうことも多くなったそうです。まさに本を通じて、法人と地域がつながる取組みがはじまっています。そして、こうした住民との日常的なつながりが地域の新たなニーズを捉える機会となり、それに基づいた活動を生み出すきっかけとなる|そう信じてネットワークでは取組みをすすめています。

 

※企業の社会貢献活動担当者を対象に、事例発表、情報交換などを行い、企業と地域や企業同士の新たなつながりをつくることを目的に開催

 

ネットワーク会議の様子

 

「夢の本箱」は区内23か所の法人施設に設置

 

子ども食堂に向かう参加者

 

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取材先
名称
(社福)文京区社会福祉協議会
概要
(社福)文京区社会福祉協議会
http://www.bunsyakyo.or.jp/
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