河野 典子さん
ある日突然起きた経験で備えることの大切さを実感
掲載日:2019年3月12日
2019年3月号 くらし・今・ひと

福祉広報目次へ

 

あらまし

  • ひとりで暮らし、5年前から府中市社協の「あんしん支援事業」を利用している河野典子さんにお話を伺いました。

 

「ある朝突然」が起きた

49歳のとき、ある朝突然起き上がれなくなりました。原因は頚椎の椎間板ヘルニアでした。当時は難しい手術でしたが成功しました。術後4か月の入院生活では、1か月目はベッドで寝たきり、1か月が過ぎてようやく医師から立つように言われました。それまでは人に取ってもらっていた病室の冷蔵庫内のゼリーを、自分の両足で歩いて取れたときは、嬉しくて涙がこぼれました。

 

この入院生活は、まさに目の前が真っ暗になるという経験で、それまで人生で歩けなくなること、誰かの手助けが必要な生活など考えたことがありませんでした。真剣に老後のことを考えた数か月でした。後遺症として、左手足に麻痺・しびれが残り、四十肩のように肩が高く上がらない症状も出ました。

 

両親は身をもって示してくれた

50代からは両親の介護がはじまりました。独身の私は仕事をしながら、父の入退院の付き添いなど度重なる欠勤に、周囲の理解を得ることが難しくなっていき、早期退職しました。両親の介護を7年間。居宅介護から施設入所、そして最期まで見送りました。

 

両親の姿は、「自分にもいつか訪れる老後の姿」を示してくれ、この介護生活も自分の老後のことを考える機会になりました。

 

突然の出来事に対しても安心感をもって暮らしたい

私は3人姉弟の真ん中で、近年は皆高齢になり、お互いを頼りにすることも難しい状況です。私自身、加齢に伴う持病を抱え、生活に不自由な部分や、ひとりではできないことも増えてきました。また、入院や介護の経験から、老後の生活にさまざまな不安を抱くようにもなりました。それでも、「できるだけ人に迷惑をかけたくない」「自分のことは自分でするしかない」という想いがあります。

 

そこで、これまでの経験から感じていた心配事を具体的にリストアップし、月1回訪問に来る府中市社協の家事サービスの支援者に相談しました。

 

老後の不安をひとつひとつ解消

私にとっての心配事は、突発的な入院やその際の保証人、施設入居時の保証人、死後の手続きなどがありました。社協の方にリストを見せると「河野さんの困りごとは、社協の権利擁護センターが実施する『あんしん支援事業』の内容に当てはまるかも」と紹介してもらいました。社協担当者から詳しい説明を受け、「それは私の心配事を解決してくれる事業内容」と納得し、平成25年3月に契約しました。あんしん支援事業を利用して感じたことは、「私ひとりでなく、手助けしてくる人がいる」という安心感でした。

 

28年3月、心臓の検査入院のため事前に医師からの説明を受けたときのこと。突然のことに「理解できるかしら?」と不安を感じていましたが、事業担当者が検査説明の場に同席してくれたため安心できました。さらに、その事業のひとつに、定期訪問で安否確認する「見守りサービス」があります。毎月の訪問では、私の身体的な変化に応じた情報提供、日常生活を送るうえでのアドバイスなど些細なことでも安心して相談できます。これらが老後に対する不安をひとつひとつ解消してくれました。

 

私の生きる糧になった「俳句」

サービスを利用してから安心して生活できるようになったことで、好きな俳句を続けられています。

 

お隣の方からの誘いがきっかけで「俳句」をはじめました。60代になって何事も億劫になっていた私が、俳句をはじめたことで外出機会も増え、興味の幅が広がりました。俳句は5・7・5の17音という短さで想いをどのように表現するか頭を使うのみで、体力はいりません。75歳の私でも俳句がつくれます。

 

今後大切にしたいことは、毎日の生活が大変になっても「俳句を作り続けたい」ということです。精神的に辛いときも、俳句があったからこそ乗り越えられました。私にとって「生きる糧」です。これからも、俳句の題材になるような日常の出来事に関心をもち、できる限り作り続けていきたいと思っています。

 

河野さんのお気に入りの俳句

(※おはぐろ:「ハグロトンボ」のこと)

 

福祉広報目次へ

取材先
名称
河野 典子さん
タグ
関連特設ページ